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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

カテゴリー「定期日誌」の記事一覧
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フェイテルがじきにわかると言っていた出来事。
それはなんと、同行者の登場であった。

俺たちは、フェイテルの気まぐれな散歩に付き合っていた。
彼女はこの島の遺跡に調査に行ったカルニアの性格変更が起きたのに
興味を持っただけなので、適当に歩いているだけで満足だと言っていた。
だが、この島では、歩いている限り戦闘は避けられぬ。
いや、歩いていなくても避けられぬ。
遺跡に滞在すれば戦わねばならぬ、そういう仕組みのようだ。
そこで、ほぼ攻撃手段を持たぬフェイテルは、棒立ちをしたまま
俺たち邪心を召喚して戦うのであった。
棒立ちだから、相手の攻撃を避けることもほとんど無い。
仕方がないので俺が担いで逃げることにしている。
自分が倒れたら終わりだと、こいつに自覚はないみたいだからだ。
遺跡の外に出れば、カルニアが自分の才能を生かして、作成を受けていた。
奴が無料で受けているというのが大変胡散臭いのだが、今のところトラブルは無い。
ただコイツに料理をさせてはいかんのは確かだ。
そんな感じで今までやってきていたのだが、遺跡の奥に行くには、
待ち受けている者たちを倒さねばいけないらしい。
そんなこと、俺たちにはできない。
なぜならば、この遺跡は集団行動を勧められている(とカルニアが言っていた)。
しかしフェイテルは誰かと組む気は全く無いようだった。
そのため、同じところをトコトコと歩いている今日この頃だった。

そこに、同行者が加わったのだ。どういう状況の変化か。
「その人は、ひとりでも進めるのに、私に声をかけてくれたわ。感謝しないとね」
フェイテルはそう言って、にっこり、と微笑むのだった。
俺は冷や汗をかく。
こんな女を人様に会わせていいものだろうか。
昔、俺も「人様とお話しはさせられないね」と言われたことがあるが、それ以上に
問題があるような気がするのだ。

「わあ、以前作成を承った人ですね。今回も依頼をくださってー。フェイテル様に
お話しがあるとおっしゃっていたのは、そういうことでしたかー」
にこにことカルニアは言う。
なぜそんなに悠長にしていられるのだ。
こいつは…こいつは…
「国が滅びるのを幻視して、喜んじゃうような人だよ?」
シャルがけろりと続ける。まるで俺の心を読んだかのように。
「門外不出のほうがいいと思うんだけどなー」
「でもその人へ害があるわけではないでしょう?」
表情変わらずのフェイテル。そういうところも…嫌いだ。
「まぁまぁ、シャルもエリアスも。同行者さんにはフェイテル様が
なにもしないことをお伝えしておけばそれで大丈夫じゃないですか?」
「むぅ…」
俺はうなる。
シャルは…回転を始めた。
「るるるー♪ るるるるー♪」
ついていけない。
俺は頭を振ると、本来住んでいる世界の扉をくぐった。
「あ、思考停止ですかー? お馬鹿になっちゃいますよー」
後ろからカルニアの声が聞こえたが、無視する。

「ふう…」
俺は息をゆっくりとはき出した。
一人はやはり落ち着く。
「あ…これを持ってきてしまったか」
先日作ってもらった剣を腰から抜く。
冒険をはじめて間もないころ、手に入れたしっぽ。
それを元に作ってもらった、とても強い剣。
しっぽから武器ができるなど、この島の戒律は謎だ。
しかし俺にとってそこまで考えることでもないだろう。
重要なことは、いかに強力な武器を振るうことができるか、だ。
「…しばらくの間、おまえには世話になる…」
剣に語りかける。
おかしいですよ! とカルニアには言われたことがあるが、俺にとっては
剣に語りかけることは自然なことなのだ。
もしかすると、俺が剣に宿る亡霊だからなのかもしれないが。
しかしこの剣はいい。
持っていると、いつも以上に体が軽くなる気がするのだ。
まだ実戦では使っていないが。
そこで俺はその剣を手に、素振りを始める。
「やはりいい…」
ぽつりと感想をもらした。

「む」
ふと、俺は自分が呼ばれていることに気がついた。フェイテルにではなく、
自分の世界の人々に。
剣を鞘に収めるころには、姿がぼやけていた。
そう、俺はこの世界では精霊のようなもの。だから、世界の人々に行使されるときは
実体が無くなる。最初は驚いたが、今では日常茶飯事となっていた。

「トルネード!」
呼び出された場所では、二人の人間が狂った機械と対峙していた。
昔の戦のときに、作り出された大量の狂った機械。何千、何万と
時は過ぎているのだが、未だにその影響は残っているようなのだ。
そこでは、まだ少女と呼べる幼さの残る女性が風の魔法を唱えていた。
なかなかの強さだ。俺は感心する。
その傍らで必死に詠唱する男性。
彼の言葉に自分は引かれてきたのだと、霊体状態で俺は確認した。
そっと彼の組み合わされた手に俺は手を重ねる。
すると破壊の力が凝縮されていくのだ。
汗だくの彼が安堵の表情に変わるのがわかった。
(まだ技は発動していない。安心するのは早い。
むしろ力が高まっている今が一番危険だ。気を抜くな)
聞こえないだろうが、俺はそう声をかけた。
やはり聞こえないようで、彼には特別変化は見られなかったが、目標に向かい、
闇の魔法を解き放つ。
「ブレックネスボム!!」
目標の、狂った機械は崩れ落ちた。
役目が終わった俺は、そのままもとの位置に転送されていく…
ああ、この二人は『あいつら』の子孫だろうな、などと感傷に浸る間も
与えてはくれなかった。

俺の世界は破壊の世界とも呼ばれている。
一般的な人間に一番近いが、心の力を破壊の力に変えることができるのが、
思人(サラピア)族。
精霊のようにマナを原動力とし、マナをとてつもない破壊の力に変えることが
できるのが魔法(マジリア)族。
古代より作成されることにより子孫を増やし、物理的に破壊の力を振るうのが
機械(オウルア)族。
モンスターと契約し、彼らの力を借り、そして増幅させて戦うのが
獣使(ロステア)族。
戦うことが、存在意義の種族ばかりなのだ。
その原因は、世界の守護者たる破壊王シェイド――つまり俺らしいのだが、
未だにピンとこない。
世界の守護者によって、世界の人々は変わる。そう『あの方』に教わったのだが、
自分がそんなに重要な存在だという実感が湧かないのだ。
だから、例えばカルニアが守護をしている世界では、皆日常的に嘘をつき、
調和を図っているそうだ。想像しただけで頭が痛くなる話である。

さて、そのシェイドは人間に転生させられ、俺になった。
普通の家庭の息子として育った俺は、世界を崩壊させると噂されていた
シェイドを倒すべく、冒険者になる。
滑稽なものだ。
そして、冒険を続けていく中で、あるパーティと出会う。
シェイドを転生させた一族の二人組だった。
彼らは攻撃力不足に悩んでいたようだったので、手伝うことにした。
だが、シェイドを復活させようとしているやつらは、スパイを送り込んできた。
子供の姿の。
俺は直感で、その子供が疑わしいと思った。それもシェイドの力によるものだとは
後で知った話だが。
しかし、パーティの二人、いや、特にミクリーは、その子供を
すごく可愛がっていた。現段階ではなにも問題はないだろう。
そう思った俺も黙っていた。
しかし、いざ、その子供が正体を現し、攻撃を仕掛けてきてもミクリーは
その子供は操られているだけだ! と言い、かばい続けた。
俺はミクリーの身を案じ、その子供をたお…殺した。
そこでミクリーに言われる。
「破壊でしか解決できないなら、あなたもシェイドたちと変わらない!」
そうして、俺はパーティを抜けた。
だが、そんな俺を待っていたのは、ラフティというシェイドの部下だった。
そして、俺こそがシェイドの魂だと告げた。

俺は…
世界が平和になるためなら、死んでも構わないと思った。
そこでシェイドに戻り、あえて、倒された。だが。
世界は平和になりました、めでたしめでたし、では全く無かったのだ。
シェイドの姿で倒された存在は、剣に亡霊として宿る。
その姿は俺、エリアスだったのだ。それからずっとこのままの姿だ。
そして大戦(おおいくさ)に俺は亡霊のまま巻き込まれる。
世界の平和など、この世界には訪れぬ。
なぜならこの世界は「破壊の世界」なのだから、と『あの方』は言った。
「おまえにできることは、破壊の精霊としてこの世界を見守ること」
その言葉に従って、俺はまだ、生きている。

「エリアス、こちらへいらっしゃい。同行者さんに挨拶をするのよ」
フェイテルの声が聞こえた。
俺はなにも答えない。別に答えなくとも、勝手に呼び出されるのだから。
そっと目を閉じる。
そして俺はまた、偽と呼ばれる島へ降り立った。


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····· 今日のランキング☆

「あれ。フェイテルサマがなんかご機嫌だよ?」
シャルが言い出した。
いつも笑顔の彼女のどこをどう見れば、そう見えるのか、俺にはわからない。
「え、そうですか? いつもとお変わりなく見えるのですが…」
俺の天敵が言う。
しかし、今回に限っては同意見だ。
「うーうん。あのね、今にも歌いだしそう」
シャルはそう言って首をかしげる。
言われたカルニアのほうこそ、首をかしげるほうだと思うのだが。
「歌う…ですか。フェイテル様が歌う? そんな機能、お付きでしたっけ?」
また同意見だ。
俺は黙って、義兄二人の会話を見ていることにする。
「ふっふっふーん。フェイテルサマってばね、最近、
こっそり歌う練習してるんだよ! ボク見ちゃった!」
「えええええっ!」
カルニアが大きな声をあげる。しー、とシャルは言って、カルニアの目線まで
腰を下ろすと、指を口の前で1本立てた。
「一体何故? 得になることなどないだろうに。フェイテルは余計なことをする
存在だとは思わないのだが」
俺は言った。
すると、ぷう、とシャルは頬を膨らませて言う。
「また呼び捨てにするー。ダメだよー。フェイテルサマは偉いんだから」
「知るか」
「うわぁぁぁん! エリーがオルドビスみたいに反抗的だよー! 
反抗的でいいのはオルドビスだけなんだぞぅ!」
オルドビス、か。
俺は時々家を借りる主のことを考える。邪心とは対極の存在なのに邪心に懐かれて
さぞ大変だろう。
しかもどんなに邪険にしても、そこがいいと言われてしまうのだから、
ストレスも溜まるだろう。気の毒である。
泣き叫んでいたシャルだが、誰も相手にしないのに気がついたか、
急にけろりとしてしゃべりだした。
「フェイテルサマはね、変わりつつあるよ。で、こっそり聞いちゃったんだけど、
鼻歌を歌ってた。なんだろうねー!」
「そうなんですかー」
天敵はまだ信じられないといった風に言う。
「嘘言ったってしょうがないじゃない。それに――」
シャルの言葉はそこでさえぎられた。フェイテルがやってきたのだ。
「それに、なにかしら? 続けて頂戴」
平然と言うフェイテル。シャルはオーバーアクションで
手をぶんぶん自分の顔の前で振りながら、
「いや、いやいやいや! なんでもないです!」
と否定した。
「私が歌っているの、聞いていたのね。まだ、歌にすらなっていないものなのに。
困った子ね」
笑顔で言う。だが、普通の人ならば、怒っていてもおかしくないところだ。
その辺りを俺が見抜けるようになると、あの人が言っていたのだが、
俺にはそれができるようになる自信が全くない。
「た、たまたま耳に入っちゃったんだよう!」
シャルが弁明する。すると、彼の頭の上あたりに、赤い、丸い物体が生まれた。
ウィシーと呼ばれるもの。簡単に言えば邪霊である。
赤い邪霊は嘘の邪霊。
嘘をつくと、勝手に生まれてくるものだ。
ちなみにカルニアはこれを食べることができる。嘘の邪心だからだ。
ついでに言うと、あの天敵が嘘をついた場合は邪霊は生まれない。正確に言うと
生まれているのだが、高速でカルニアが食べてしまうからわからないのだ。
「たまたまではないのね。本当に困った子」
フェイテルが笑顔を深くする。軽く閉じられているだけの瞳がぎゅっと閉じられ、
口元の笑みも深くなるのだ。
「はうはうー。ボク、フェイテルサマのストーカーじゃないよ! 
ただ、フェイテルサマが楽器を教えてって言った後、
踊りじゃ満足していないみたいだったから、どうするのかなーって思っただけ!」
「そう」
フェイテルの笑顔はそのままだ。
ここで俺は論点がずれまくっているのに気がつく。そこで口を出した。
「フェイテル。機嫌が良いというのは本当か?」
フェイテルがこちらを向いた。笑顔は、いつもの軽い笑顔に戻っている。
「機嫌が良い? ――ああ、そうね。嬉しいことがあったの」
「嬉しいこと、ですって!?」
カルニアが素っ頓狂な声をあげる。
「そんなに驚くことかしら?」
「はい。フェイテル様が感情的になるなんて、珍しいと思いまして」
そうすると、フェイテルの顔から笑顔が消えた。目を閉じたままだが、
やや、顔を下に傾けて、小さな声で言う。
「私には感情があるわよ。あの子とは違うの」
天敵は大慌てだ。
「すみません! あの事はタブーですものね、忘れてください!」
そうすると、フェイテルは、ふふっと声を出して笑った。
「カルニアはいつも感情的ね。そんなことでよく今まで偽りの邪心が
務まってきたと思うわ」
「そ、そんな~」
カルニアは頬を染めてもじもじしだした。
「褒めていないわよ?」
「え。そ、そんなぁー…」
フェイテルの指摘を受けると、今度は眉をしょんぼりさせて、涙目だ。
嘘か本当かどうかは別として、本当にカルニアは感情を表に出す態度を取る。
「エリアスも、ここまでいきなさいとは言わないけれど、少しは感情を出して
接してごらんなさい。あなたの反応が淡白で、私、少し寂しいわ」
急に俺に振られた。
「そんなことを言われても…。どう表現すればいいかわからぬのだから、
仕方がないだろう」
「こら、エリー!」
シャルがまた、けたたましい声をあげる。おそらく、言葉遣いの注意だろう。
だが、これが俺の口調なのだ。丁寧語など、知らん。

---------結果ではここまで------------

「いいのよ、シャル。私に気を使ってくれているのね。いい子」
フェイテルはそう言って俺のほうを見たまま、にこり、と微笑んだ。
「それで、また脱線しているのだが。嬉しいこととはなんなのだ?」
俺は問う。するとフェイテルは目を開けた。爛々と輝く青の瞳。
それがいたずらっぽく光っていた。
「ふふっ、じきにわかるわ」


····· 作成予定訂正分

プラストスの相手が終わったら、夕飯の時間になってる。
というか、夕飯の時間まで解放してもらえねぇ。

それから風呂に入って、さっさと寝る。
気が向けば、夜間訓練っていうのもあるが、今日は眠いからパス。
オレサマの夢が、繋がっているのが気になるんだ。
つまり、今度寝たら、なにを見るのかも予想がつく。
これって、オレサマ、寝てるまんまってことかね?

--------------
「ろ」
そう鳴く、目の前の生き物。
オレは、この小動物と一緒に行動していたことがあった。
それは、オレサマがガンマになる前の話。
そう、オレサマもベータたちと同じように、元になった人間の魂があったんだ。
そいつの名は、トパーズ=ラシダス、という。

トパーズは、ある世界の風の一族に生まれた。
だけど、持っているのは地の力だった。
そのために忌み子と言われ、一族には迫害されていた。
でも、家族はそんな彼を守ってくれていた。
だけど妹が生まれてしばらくしてから、父親は一族の厳しい仕事に駆り出され、
母親は心労で倒れた。
オレは母親の面倒を見ながら、近くの森で狩りをしながら生きた。
しかし、森にバケモノが出て、それがオレのせいということになるのには
時間がかからなかった。その結果、オレは処刑されることになる。
体がボロボロの母親と、まだ幼い妹が、声を枯らしてオレのことを呼んでいたのが
今ではありありと思い出せる。

それからどれくらい経ったかは知らねぇ。
けど、さほど時間は経っていないはずだ。
ある女が、オレを蘇らせた。
目的は、その女が完全に力を取り戻すために必要な、
オーブの力をオレに解放させること。
ヒトを憎んでいるはずだということで選ばれたらしい。
しかし、オレサマからすれば、利用するためにオレサマを蘇らせた
その女のほうが気に入らなかった。
なんとかそいつの邪魔をしてやろう。そう、思った。

しばらくその方法はわからなかった。
だけどしばらくして知る。
オーブの力を解放させる者は、9人必要なのだと。
ならそれを揃わなくさせればいい。
でもどうやって?
考え付いた恐ろしい考えは――その候補者を殺すこと。
けれどひとつ、心配なことがあった。
たとえ殺したとしても、オレのように蘇らされる可能性もある。
困っていると、オレに渡されたオーブが言った。
「我の力で復活の阻止をする」と。つまり、オレが手にかければオーブの呪いで
あの女の復活が無効になるということらしい。

それからオレの戦いが始まった。
ナイフを仕込み、候補者や、目的を隠すために無関係な者も手にかけた。
殺戮狂だと思わせれば成功だった。
そしてそれはうまくいく。
――だから、オレはヒトを殺すことにあまり抵抗が無かったのか。
今、そう思う。

それから50年ほど経ったころだろうか。
タウチ、という動物が生息しているところをたまたま通りがかった。
タウチは地属性の生き物なんだが、その中に風属性の力を持つヤツが1匹いた。
そしてそれが他のタウチの頭の角で攻撃されていた。
オレは気が付いたらその1匹を助けていた。
自分と姿が重なったからだと思う。甘いなぁ。
それが「ろ」と鳴く、後にロイと名付けられる生き物だった。
こいつはオレにすっかり懐き、オレの左肩の上に座っている。
戦闘の邪魔だ、と言えば離れるのだが、しばらくすると戻ってくる。
困ったものだった。

そして80年ほど経ってから、9人のオーブ解放者が揃わぬまま、
女の復活作戦が遂行された。
それは完全に予想外。
オレは焦って、まだ解放を行っていない顔見知り共に見境なく
襲い掛かるようになる。
だが、あちらも考えていたようで、オレの手では倒せないものたちが
候補者になっていた。
竜だったり、妖精だったり、呪歌使いだったり、な。

そして女は復活してしまい、人の世は本格的に荒れ始めた。
オレは、世界の平和とやらのためにがんばっていた、
脳内お花畑の連中と協力することになった。
あいつの目的をぶっつぶすだけの力をそいつらがいつの間にか備えていたからだ。
オレの目的もあちらにはバレ、そいつらと組むしか道が無かったとも言える。

そしてついに、あの女を倒した。
あの女は、生き物の負の感情を食って、力を発揮する存在だった。
そのため、人々に恐怖を与えるのが生きる手段だった。
生きるためならば、怪物を生み出し、人々を追い込む組織を作り上げたのは
仕方が無かったのかもしれない。
恨むべくは、そのような存在を造った者。
それが――フェイテルだったんだ。

--------------
「フェイテル様」
「フェイテルサマー」
邪心たちは奴に様付けをして呼ぶ。
それが気に入らない。シャルは半分おちょくっている気もするが。
だからオレはフェイテル、と呼び捨てにしていた。
それも昔の経験のせい。今になってわかった。

目を覚ましたオレは、ゆっくり夢の続きを考える。

戦いが終わり、トパーズは蘇らせた女を殺したことで仮初めの命を失った。
だがそれで終わりではなかったんだ。
たくさんの命を奪った罪は許されず、トパーズの魂は彷徨うことになる。
そして彷徨っている先で、偶然ヴァイザの部下生成の儀式に巻き込まれ、
オレサマになったようだ。

リアルに、トパーズの経験はオレサマの経験として「思い出した」。
これもきっとフェイテルには筒抜けなのだろう。
それが非常に、悔しい。


····· 付加・作成メモ

朝飯を食って、軽く運動がてら、街に出る。
そこの闘技場で金を稼ぐのがオレの日課だ。
はっきり言って、そこらへんのモンスターじゃ相手にならねぇ。
そんなわけで、主催者涙目だな、と思っていたがそうでもないらしい。
なんでも、オレサマが暴れているのを見に来る客が多いんだと。
変わり者だなァ。

昼に帰って、遅い昼飯を食う。
それから、またベッドにもぐりこんで、昼寝の時間だ。

-------------
亡国の王女サマご一行に倒されて、きっとオレサマ、無様な姿で消えたんだ。
そのはずなのに意識が続いているとはどういうことだ?

目を開けると、デジャヴを感じた。
視界に入るのは、ヴァイザと冷たい色の天井。
ただ、ヴァイザは以前のような冷たい笑みではなくて、
なにか吹きだしそうな笑いを浮かべていた。
「……ンだよ」
一瞬で意識と記憶が集約して、ソイツに悪態をつく。
いえいえ、とヴァイザは手をひらひらさせてオレを覗き込むのをやめた。
すぐにオレは上体を起こし、状況を確認する。
ベータがいた。
ストレッチ運動なんかしていやがる。
オメガもいた。
弓を磨いていやがる。
デルタは…
オレの隣のベッドで寝息をたてていた。
なんだこれ。

「おい。これはどういうことだよ」
オレは思ったままを不満の声色で言ってみた。
「不思議なものですね…」
ヴァイザがつぶやく。
「私がやったのは、簡単なこと。一度滅びた部下をまた1から作り直したのですよ。
なのに、同じ魂を宿すとは…」
そう言って、目を閉じやがった。
人間くせぇ…
そこが思いっきり不満だったが、コイツ、元は人間だったんだもんな。
王女サマとどうなったとか、今のオマエはなんなんだとか突っ込みどころは
満載だったが、その反面、どうでもいいや、そんなのオレサマには関係ねぇ、
という気持ちもあった。
だから黙っておく。

寝かされていたベッドと呼ぶにもお粗末な石の台から飛び降りると、
オレはストレッチをしているベータの背後に回りこんだ。
そして、黙って薙刀を召喚すると、そこに突き立てようとした。
するとベータはくるりと上半身をねじって、左腕でそれを受け止めた。
「随分な挨拶だな」
「よお。オレサマらしいだろ?」
ひゃはは。そう笑う。
…ん?
またなにかデジャヴを感じた。しかもこれは、やった相手が
ベータじゃないような気がしてならない。
この笑い方。誰だ。
まあ…いいか。

デルタが目覚めてから、ヴァイザは説明を始めた。
自分が王女サマ一行に負けたこと。王女サマの術で思い出した、
もともと自分は人間だったのだと。その意識が強くなったことで、
邪心というものになったということ。
(これは後に間違いだということがわかるんだが)
邪心になり、世界を見守る立場に立たされたこと。
「で? オレサマたちを復活させた理由にはこれっぽっちもなっていないんだが」
「一人は寂しいではないですか」
「は?」
かつてのヴァイザからは全く予想できない、感情丸出しの答えに、
オレは変な声をあげることしかできなかった。
「それに、やはり自分で動くより、あなた方に命を下しているほうが
性にあっているのですよ。
今、私たちは自分たちの世界ではない世界に飛ばされてきています。
原因はわかりません。
しかし安心なさい。疲れますが、あなた方にも時空を飛ぶことができる能力を
付与しておきました。
ついでに、もう不要な魔法が弱点というものも消してあります。
もう、好き勝手に生きていいんですよ」
「へーぇ」
勝手に自己満足に浸っているようにしか見えないヴァイザに、
オレの心はグッと冷たくなった。
「じゃあ、まずはお前を消し去ってやるよ!」
「なんでそうなりますかねぇ…?」
ヴァイザはにこりと微笑んだ。
すでに飛び掛っていたオレは、その笑みに冷や汗をかく。
やべぇ。

気がつくとオレは、見慣れぬ森の中に落ちていた。
「なんだ…? 転移魔法でぶっとばされたか?」
辺りを見回す。するとなにかの気配を感じた。
「そこのヤツ、出て来い!」
気配に対し、怒鳴りつける。すると草むらががさがさと動いて、
小動物がちまりと顔を出した。
茶色で、2足歩行をしている。頭には小さな角。それがギュルル、と動いた。
そしてぽつり、とそいつはつぶやいた。
「ろ」

その瞬間、オレは、全てを思い出した。

-------------
「がんまー、がんまー」
ぽわん、ぽわん。
オレの腹の上でなにかが跳ねている。
いや、なにが跳ねているのかはわかっているんだが。
プラストス。
この合同宿舎の主、オルドビスの実の妹だ。
ファランディになる可能性を持ち、その結界の力は、ヴァイザ…つーか
カルニアの脅威になるため、ファランディにならないように
オレが徹底的に甘やかし、子供のままにしている存在だ。
そのおかげでオレサマも徹底的に懐かれている。
「がんまー、がんまー」
ぽわん、ぽわん。
「寝ているヤツの上で跳ねるな!」
オレが言うと、プラストスのジャンプは止まった。
しかし嬉しそうにひょこひょことオレの顔のほうに寄ってきて、
「がんま、起きたー! ねえ、遊んでー」
と、来たもんだ。
「しょうがねぇなぁ…」
これは演技。演技なんだと自分に言い聞かせながら、甘やかしにかかる。
「なにをしたいんだ?」

こういうときのオレサマは、すっげぇ優しい顔をしていると
以前、ベータに言われた。
冗談じゃねぇ。

····· 暴走。

それは、暗い嵐の夜だった。

長い長い夢を見ていたような気がする。
しかしその夢の内容は全く覚えていない。
意識がふつりと生まれ、ゆっくりと大きくなってくる。
「……オレは、なんだ?」
目が覚めて、初めて口にした言葉はこれだった。
どうしてそのようなことを口にしたのかもわからない。
でも確かに、自分はなんなのかわからなかった。

「おはようございます」
冷たい声がした。
声のほうを向く。体は自然と身構えていた。
そこには赤い髪の男がいて、笑っているようだった。
「貴方は私に作り出された存在ですよ。名前はそうですねぇ…
3番目に作られたから、ガンマ、としましょうか」

ツクラレシモノ?

自分は普通の存在ではなく、作られたものなのか。
…普通の存在って、なんだ?
…なぜそんな考えに至った?
これだけではない、さまざまな違和感が、頭の中でぐるりぐるりと回る。
「それで…」
オレは混乱する頭を押さえて、尋ねる。
「お前はなんだ? どうしてオレサマを作った?」
クスリ、と笑いの息が聞こえたような気がした。
「私の名はヴァイザ。この世界の人間に罰を与えるもの。
あなたは、人間と接触するためのツール(道具)です」
赤い髪の男はそう言う。
赤と黒の服に金のラインが入った動きづらそうな服が気になった。
ふと自分を見ると、小さな胸当てはしていたが、
自分を作り出したという男のような重苦しい服ではなかった。
それに安堵する。
安堵。なぜ?
その答えを探してみるも、頭の中はほとんど真っ白で、
なにも見つかりそうに無かった。
「――で? 具体的にオレサマに、なにをしろと?」
クスクス、とまた笑い声が聞こえた。
「そうですね。まずは、」
地図らしきものを取り出し、そこに指を当てる。
「ここを滅ぼしてきなさい」

言われたときに、反抗心がむくりと起きた。
やなこった、と言いたくなったのだ。
だけど、それを実行には移さなかった。なぜだろう。
自分は作られた存在。その作り出した存在に、
逆らえないようにされているのかもなと、薙刀を手にひた走りながらオレは考える。
そう、薙刀。
それがオレの武器だ。
それと隕石を呼ぶ魔法も頭の中に入っていた。
ヴァイザ、が言うには、戦いに体がなじんでくれば、鉱石を使い、
創造する力も手に入るという。
イマイチ、実感がわかないのだが。
そして薙刀。言われたときは違和感を感じたものの、手にしてみれば、
軽々と扱うことができた。
なんなのだろう。
真っ白のはずのオレの頭の中。
ヴァイザが入れた情報しか、入っていないはずの頭の中。
それなのに、それ以外の何かがあるような気がして、ざわざわと落ち着かずにいる。

ヴァイザに指示されたのは、小さな訓練所だった。
現在人間は、ヴァイザに対抗すべく、各地で人材を育てているのだという。
魔法には気をつけろ、と言われた。
それがオレの弱点なのだと。
そんなモン、つけるな。と言ったのだが、
自分の弱点なのだから仕方がないでしょうと言われ、黙るしかなかった。
軽く建物の上に飛び乗り、下を見下ろす。
人々が剣を振るい、槍を振り回し、弓で的を射る。
魔法使いはいないようだった。
「さてと。お仕事始めましょうかね」
なぜか、人を殺めるということは仕事なのだと、
自分のなかにすっきりと収まっていた。

あっさりと終わってしまった。
たくさんの横たわる人々。
ああ、ますます自分は赤く染まっていく――
そんな感傷が心を埋め尽くす。

そのあとも言われるまま、たくさんの人々を殺めていった。
そう、辺境の地の、王女サマに出会うまでは。

ヴァイザがひとつ、国を滅ぼした。
正確には、ヴァイザの影武者であるオメガが、なんだが。
その頃から、オレ達、ヴァイザの側近は、オメガをヴァイザとして扱うようにと
命令されていた。
ちなみにヴァイザの側近は、オレと、そのオメガと、ベータとデルタと言った。
別に他の側近には興味は無い。けれど、隙あらば攻撃して、相手の力量を見るのが
オレは好きらしかった。
興味が無いということと、相手に攻撃をすること。
思いっきり矛盾しているのに、それがオレの中では当たり前のことだった。

話を戻す。
オメガが滅ぼした国。辺境にあるとはいえ、魔法国家。
よくそんなところを滅ぼせたなと感心して言えば、王女に乗り移り王をはじめとした
国の者たちにヴァイザの血を盛ったと言う。
それを聞いてオレは吐いた。汚い話だが、戻した。
ヴァイザの血。
それは、ヴァイザの一部として、自律的に活動するもの。それを使えば操り人形を
作ることも動作もない。
ヴァイザが使っている様子を見たことは無いが、その力を与えられたデルタが散々
えげつないことをしているのをオレは見ていた。

そんなわけで、えげつない方法で国が1つ滅びたのだが、利用された王女と、
生き残った一人の従者がヴァイザから城を取り戻そうとしていると聞いた。
そのあまりの無謀さにオレは笑うしかなかった。
そして、生き残りの殲滅役を求められたとき、オレは真っ先に手を上げた。

本当に小さな存在に見えた。
魔法の力は感じるが、自分なら耐える、避ける、そんな自信が持てるほど
小さな存在だった。
薙刀を振り回し、接近すれば、魔法の詠唱も止めて、王女をかばって
従者が前に出る。
その従者を軽くいなして、王女へと薙刀を突き立てる。
それで終わったはずだった。
だが、その一瞬手前で、オレの背中に巨大な魔法力がぶち当たった。
後で知ったことだが、それは魔法の力を込めたアイテムだったらしい。
人間たちも、オレ達の弱点を魔法と知って、研究を重ねているのだった。
任務に失敗したのは、これが初めてだった。
めんどくせぇ。

次に王女達と出会ったのは、ヴァイザ研究所と呼ばれるところだった。
名前の通り、ヴァイザを研究しているところだ。
研究員を刺し殺し、飛び出してきた王女達のほうを振り向いたとき、
光がオレの視野を奪った。
そして、謎の武器が現れ、そこに王女達が生命力と魔法力を込めると、
強大な光となってオレの身を焦がした。
転移魔法が使えなかったら、死んでいたと思う。
いよいよ、人間どものほうでオレら対策が進んでいるぞとオメガに言ったとき、
普段は無表情の奴が、冷たい笑みを浮かべたことだけが
しっかりと脳裏に焼きついている。

それからオレとベータはできる限りの破壊を尽くした。
最初、複雑な感情――あえて言うなら悲しい、か。と思っていた殺戮も
なにも思わなくなっていた。
オメガはヴァイザの影武者として最後の段階に入っていると言うし、
デルタは勝手に行動していて、なにを考えているのかよくわからなくなっていた。
体を血に染めて、本拠地に帰ってきたとき、偶然ベータとオレは顔を合わせた。
そしてその口から、どうしてオレが作られたのか、本当の理由を聞かされた。

「自分達は、ヴァイザの完全復活のために作り出された」
からくりはこうだ。
オレ達についている、魔法が弱点という特性は、ヴァイザが復活するために
必要なものだったのだ。
ヴァイザの復活に必要なものは、強大な、大量の魔法力。
ヴァイザの部下であるオレ達が魔法を弱点としているのならば、
魔法を強くする研究を人間達は上げてくるだろう。そしてそれをヴァイザに当てて
復活させようというものだった。
つまり、オレ達のしてきたことは、ヴァイザ復活のための駒。
気に入らなかった。
しかしそれを知りながら、ヴァイザへ仕えてきたベータのことは
もっと気に入らなかった。
「こっちは、魔法に何度も殺されかかってる! 
それが奴の復活のために必要だったから?
それは奴に生み出されたから文句は言えねえ。
けどよ、何故それを知りながらお前はあんな奴に仕えてきた?! 
いいことなんか1個もありゃしねぇよ!」
頭が熱くなっていた。後で考えてみれば、一番倒しやすい状態で
オレはベータに飛び掛っていったのだと思う。
だがベータは反撃ばかりか、回避すらしなかった。
「自分達は、昔からあの方にお仕えしているのです。
そう、あの方がヴァイザとなるより昔から」
昔から? 仕えている期間なんか関係ねぇ! そう言おうと思ったオレが
それをやめたのは、興味深い言葉が続いてきたからだった。
「ヴァイザとなる、前?」
そこでオレは知る。ベータとオメガの強い意志と覚悟を。
彼らはただ、ヴァイザに作られたものではなかった。
それからしばらくしてベータは王女達の前に行き、散った。
オレは考えた。
ヴァイザは気に入らないが、ベータのためになにかしてやれることは無いのか、と。
なにも無い自分。それができるのは、共に戦ってきた奴の意思を継ぐことぐらいしか
ないじゃないか。
そう思ってオレは。あれほど忌み嫌っていた、ヴァイザに
言われるがままに奴の血を飲んで意識が消えそうになりながらも、王女達と戦った。
それでも、結局奴らには、勝てなかった。
そこでオレの記憶は、一度途切れている。

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「ガンマー! 朝ごはんですよー」
「オメーの言うことなんか聞きたくねぇ!」
反射的にそう言って、オレは我に返る。
ああ、また昔の夢か。
ヴァイザ、つまり今のカルニアがへそを曲げる前に、食事にありつこうとオレは
感傷を振り切って、1階ダイニングへ向かったのだった。

····· フェイテル空気です

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