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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

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「ただの同級生ですよ。…あれ、それで合ってましたよね?」
驚きを隠してロゼが言うと、そんな彼の気持ちなど知る由もないヴィテスはこくりと頷いた。
「ああ。同じ学園の同級生だ。ロゼのことは変わった学年1位で有名だから、知っていた」
「あはは…」
変わった、とヴィテスに言われては笑うしかない。しかし、少女は首を傾げてこう言った。
「がくえん? どうきゅうせい?」
「ん?」
ヴィテスは不思議そうに彼女の反応を見たが、ロゼには心当たりがあった。
「なるほど」
うんうんと頷く。ヴィテスはそんなロゼをなんとも言えない(冷ややかとも、呆れとも言い難い)目で見る。
「一人で納得しないでくれ。説明しろ」
やや苛立ちが混ざった口調で言えば、ロゼはきっぱり言った。
「どうやら、彼女は僕たちの世界や、この世界とは別の世界の住民のようですね」
「ど、どうして?…あっ」
少女が目を丸くして問いかけてから、はっと口を押えるのを、ロゼは微笑ましく見ながら、
「僕たちが普通に知っている単語を知らないということは、その可能性が一番高いですよ。いかんせんこの世界には異世界人が山のように来ているんですから。もっとも、彼女はそれを隠したかったみたいですけどね」
ちょっと悪戯心をこめて言うのだった。


少女の名は、イヴスメル。
イヴのコピーがマスターと呼ぶ、オリジナルの少女だった。
「それでは、カシーア・ソヌスのことも知らないのでしょうか?」
イヴスメルが言ったものだから、ロゼとヴィテスは顔を見合わせる。
「いや…話すと長くなるから省略するが、カシーア・ソヌスは俺たちの世界の秩序の神だ」
「“俺たちの世界”の? じゃあ、この世界とお二人の世界は、違う…?」
後半になるにつれて、しょげていくイヴスメルの声。

さらに詳しく話を聞けば、イヴスメルはヴィテスたちの世界の異変を調べるために世界を渡ってきたらしい。それがどこでどう間違えたのか、このメルンテーゼに来てしまったというわけだ。
「異世界に何故、カシーア・ソヌスのことが伝わっているのです?」
ロゼが尋ねると、イヴスメルはおずおずと話し出した。


カシーア・ソヌスはイヴスメルの住む世界の創造神だという。
もともとは別の世界に住んでいたが、人々が自身に反する存在、パレドン・ソヌスの考えに同調したためその世界から出て、また別の世界を作ったのだと。

「俺たちの世界の人々が、パレドン・ソヌスに同調しているだと?」
訝しげにヴィテスが言うと、ロゼはこくりと頷いた。
「確かに今の世界を見ていると、そう言えると思いますよ。カシーア・ソヌスは平等の神。ですが人々は競争を選んだ。そんなところだと思います」
その言葉にイヴスメルは頷いた。
「はい。競争は憎しみしか生み出さないのに…。それを悲しんで、カシーア・ソヌスは私たちの世界を管理されています。でも、元いらした世界がおかしいのに気が付いて、放っておくことができなくて。私たちの王を通じて、元の世界の調査をしてほしいと意思を示されたのです。それで、王の側近である私が調査に来ました」
(突っ込みどころが満載ですね…)
内心ロゼは思ったが、それは声には出さず、そうですかと彼女の現状を受け入れた。
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――どうした?
姉さん。僕たち以外に兄弟っているんですか?
――いや。
そう、ですよね。
――なぜそんなことを聞く?
ごめんなさい、まだ言えません。もう少し、調べてみます。
かなりの時間が経った。
一度少女は目を覚ましたのだが、ロゼが事情を説明し始めたところ、また気絶してしまったのである。
「たぶん…クモって単語がダメなんだろう」
とはヴィテスの弁。
「たまにいるんだ。自分の苦手なものを思い込んで、思い込んで、結果頭の中で苦手意識が凝り固まってしまう人。気絶するレベルは、初めて見たけど」
そんな馬鹿なと思ったロゼが横を見れば、少女とよく似たイヴのコピーが激しく頷いていたので。しぶしぶ納得したというところである。
今度彼女が目を覚ましたときには、うまく言葉を回避して説明しなくてはいけないな、と。

そして、再び少女は目を覚ました。
「……んん」
「大丈夫か?」
体を向けてヴィテスが尋ねると、少女はびくりと体を縮こまらせた。それから、きょろきょろと周りを見回す。
「君を襲っていた奴は、俺たちが撃退しておいた」
無表情のまま言うヴィテスに、ロゼは苦笑した。
「ヴィテスの顔が怖いんじゃないですか?」
「そ、そんな! とんでもないです!」
慌てて否定する少女。それから恐る恐るといった感じで言葉を続けた。
「あ、アレを倒せるなんて、すごいですね…。ありがとうございました」
それからぺこりと頭を下げた。
「どういたしまして」
横からロゼが笑って言えば、同じくヴィテスもにこりと笑って。
そう、にこりと笑って、
「どういたしまして」
と言ったのだった。そのことにロゼは驚いたし、同時に、あることにも驚いた。それは…
「あれ…。お二人、笑顔が似ていますけど、ご兄弟ですか?」
少女がぐるぐるメガネの上から思うくらい、ヴィテスと自分の笑顔が似ていることだった。
水辺の侵攻に失敗して、一行はゆっくりと休んでいた。

弓の手入れをするヴィテス。
セイレーンの髪を梳くロゼの横でウィスプがふわふわと漂う。
残るイヴのコピーは水辺で遊んでいて、なにかに気が付いた。

『マ、マスターです!』

やがて、小さな体を動かして、駆けつけてきた彼女にロゼはほう、といった感じで顔を向けた。対するヴィテスはただ事ではないのでは? とロゼに問いかけた。

イヴのコピーに連れられて川のほとりに来てみれば、巨大なクモに乗られて気絶している少女がいた。
髪の分け方や服装がドールに似ている印象があり、ロゼは彼女こそがイヴスメルなのだとわかった。
「助けよう」
その間にヴィテスは弓を番え、クモを追い払っている。が、少女はすぐに目を覚まさなかった。

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なお、15日目は締切落としたため、おやすみです。
ロゼが3番目に契約したエンブリオ、セイレーン。
ちょっと歌に自信があったロゼがさらに歌を上達させるために、参考にしようと思っていたところ、まったく参考にならなかったので、無理やり引っ張ってきたという経緯で一緒にいるのだ。

「さあ、セイレーン。練習ですよ」
ロゼが声をかけると、嫌そうに飛んでくる。
「では、宿題のフレーズをお願いします」
言うとセイレーンは歌いだす。しかしやはり微妙に外れているのだった。
(いっそのこと、音痴だったほうがいいのかもしれないですね…)
などと酷いことを考えていると、ヴィテスがやってきた。
「歌か?」
「ほら、歌とも認識されていませんよ」
「なっ、そ、そういうつもりは…!」
普通に声をかけたら、ロゼが毒らしき言葉を吐いたのでヴィテスはとても驚いた。手をばたばた振って、セイレーンに気を遣う。対してセイレーンは気にしていないのか、ふわりと浮かんでいる。
「今、特訓中なのですよ。伝説のセイレーンがこの歌唱力ではあまりにがっかりなので」
「そうなのか」
ロゼの言葉に、ただ相打ちを打つヴィテス。
「ヴィテスは歌、好きですか?」
話を広げるために次の質問を投げかけたが、ヴィテスがこくりと頷くまでは計算外だったようで。
「そうですか…、え、そうなんですか? では特訓の手伝いお願いしてもいいでしょうか」
変な返しをした。しかし立ち直りも早く、突然の振りまでする。するとヴィテスの眉が下がった。困っているらしい。
だが、やがて、こくり、と頷いた。
「よかったら、さっそく一フレーズ」
ロゼに言われるがままに、ヴィテスが歌いだす。

ロゼの歌色より、やや低く、芯の通った声が辺りに響き渡った。

あまりのことにロゼは目を点にして、それを聞くことしかできないのであった。――セイレーンの教育係が変わった瞬間だった。
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