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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

カテゴリー「~story~」の記事一覧
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「逃げましょう!」
間髪入れずロゼが叫んだ。
「ふふ、逃げられると思っているのかい?」
タインと名乗った者はそう言って笑う。それを無視してロゼは気絶しているイヴスメルを抱え顎でヴィテスに移動を促した。
「悔しいが、そうせざるを得ないか…」
しぶしぶ、といった感じでヴィテスはタインに向かって矢を放ち撤収しようとした。だが。
「!?」
そこにその者はいなかった。
「!!」
ロゼが行こうとした先を見て絶句している。ヴィテスはすぐさま状況を理解し、そちらを向いた。
そう、行こうとした先にタインは立っているのだ。
「瞬間移動か?!」
ヴィテスが唇を噛む。くすくすと楽しそうに相手は笑った。
「さあ、どうかな。こちらの手の内をそう簡単に明かすわけないよね?」
「否定の可能性が高そうですね…」
言いながらロゼはイヴスメルをあらためて抱え直そうとする。が、すでにそこには……
「ロゼ、どうなっているんだ!」
ヴィテスが声を荒げる。イヴスメルの身体はタインの横に転がされているからだ。
「………」
ロゼの瞳が揺らいだ。

「…時間停止、ですね」
「えっ」
ぼそりと呟いたロゼに、タインは呆気にとられた声を出す。
「さ…さすが学園1位さんってこと? そんなあっけなくバレるなんて」
タインの触手のように蠢く黒髪の動きが鈍る。それが彼の動揺を現わしていた。
「時間停止…それでは、こちらはどうすればいいんだ」
対してヴィテスが困惑した声を出す。すると、蠢いていた黒髪の動きは先ほどと変わらなくなった。
「そうだよ。僕の能力がばれてしまったところで、君たちにはなにもできまい。時が止まっている間に死んじゃえよっ!」
「ぴかー」
そのとき、なんとも場違いなのんびりした声…正確には音が響いた。ウィスプが激しく発光したのだ。
「わっ」
タインが怯む。その隙をヴィテスが見逃すわけがなかった。
タインの胸を正確に矢が射抜く。
「く…はっ……」
ふらり、と黒髪の少年はよろめいた。そこにロゼが駆け寄り、イヴスメルを取り返そうとした次の瞬間には――なにもかもが消えていた。

「あれで死ななかった、か」
ぽつりとヴィテスは呟く。
「いったい、何故…」
ロゼも茫然と呟く。
「何故、はこの際どうでもいいだろう。イヴスメルのことは詳しくは知らない。でも、彼女に害が加えられるとしたら、気分は、悪い」
ヴィテスはそう言って、ぎり、と唇を噛んだ。
「そう、ですね…。ですが、この状況をどうしろというのです」
ロゼは害が加えられるかもしれない、ということを否定しなかった。正確には、できなかった。

重い沈黙が続く。そのとき、ふいに声がした。
「アイツがどこに逃げたか、教えてあげよっか?」
声の主を探す。すると二人の後方でぷかりと浮いていたのは、黒い尻尾と灰色の翼を生やした小さな少女だった。
「悪魔…」
そのままの感想をロゼが述べ、ヴィテスが弓に手をやる。するとその少女の姿の悪魔は露骨に慌てだした。
「うわっ、酷ッ! こっちは情報をあげようとしているだけなのに! わかったよー、言うよー」
「そういう問題ではない」
ぴしゃりとヴィテスが言う。ロゼもこくりと頷いた。
「そんなこと言わずにさ! そこの眼鏡のオニーサン、ガラン様、ガラン=グホン様のこと知ってるでしょーが」
「悪魔の言うことに耳を傾けるつもりはない」
またぴしゃりとヴィテスは言ったが、ロゼの警戒は少し揺らいだ。
「“様”? なぜ人間であるガランさんに様付けを」
ヴィテスはロゼに文句を言いたげに目をやる。ロゼは首を振って、ガラン=グホンなる人物が何者かを告げた。
ガラン=グホンはカシーア会に所属する人間で、魔属を嫌悪している少女だ、と。

「ガラン様、というかカシーア会の人がさ。魔属をコントロールするアイテムを発明したんだよねっ。で、そのアイテムでコントロールされた第一号が、このボク、ファミリアさ!」
なぜか自慢げに言う目の前の悪魔に、ロゼとヴィテスは困惑して顔を見合わせた。
「自慢げに言うことです? そういうことは」
「なにより、お前の言っていることが本当だという証拠もない」
ロゼに比べてヴィテスは警戒を緩める感じはない。それを見たファミリアは肩をすくめて、
「じゃあさ、しばらく行動を共にするよ。そうしたらボクが信用に足る者だってわかってもらえると思うね」
と、言った。
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ふと、ヴィテスがある方向を振り向いた。
「どうしました?」
「いや…なにか視線を感じてな」
その言葉にイヴスメルはびくっと反応する。
「あ、アレで」
「違う、もっと大きいものの気配だった」
厳しい顔つきで言葉を遮られたものだから、彼女の目が潤む。
「もっと大きいアレでは…」
潤んだ理由が違った。

「音が違うと思いますよ。アレだったらガサガサいいそうではないですか。…ん?」
ロゼは安心させようとして言ったのだが、ヴィテスの厳しい視線に首を傾げる。
「がさがさ………う、うーん…」
イヴスメルは倒れた。
「想像させてどうする」
そんな状況に厳しいご指摘ですね、とロゼは苦笑するしかなかった。

「気絶していたほうが、苦しまなくて済むけどね」
ふいに声がした。ヴィテスが気にしていた方向とは違うところから。
次の瞬間、ヴィテスが矢を放つ。しかしその矢は途中で消え、それを掴んだ人物が姿を現わした。
長い長い黒髪をまとった、人で無い者だとわかる、青年風の人物だった。
「やあ、僕はタイン。そこのお嬢さんをもらいに来たよ」

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20日目は風邪で落としました。
「ただの同級生ですよ。…あれ、それで合ってましたよね?」
驚きを隠してロゼが言うと、そんな彼の気持ちなど知る由もないヴィテスはこくりと頷いた。
「ああ。同じ学園の同級生だ。ロゼのことは変わった学年1位で有名だから、知っていた」
「あはは…」
変わった、とヴィテスに言われては笑うしかない。しかし、少女は首を傾げてこう言った。
「がくえん? どうきゅうせい?」
「ん?」
ヴィテスは不思議そうに彼女の反応を見たが、ロゼには心当たりがあった。
「なるほど」
うんうんと頷く。ヴィテスはそんなロゼをなんとも言えない(冷ややかとも、呆れとも言い難い)目で見る。
「一人で納得しないでくれ。説明しろ」
やや苛立ちが混ざった口調で言えば、ロゼはきっぱり言った。
「どうやら、彼女は僕たちの世界や、この世界とは別の世界の住民のようですね」
「ど、どうして?…あっ」
少女が目を丸くして問いかけてから、はっと口を押えるのを、ロゼは微笑ましく見ながら、
「僕たちが普通に知っている単語を知らないということは、その可能性が一番高いですよ。いかんせんこの世界には異世界人が山のように来ているんですから。もっとも、彼女はそれを隠したかったみたいですけどね」
ちょっと悪戯心をこめて言うのだった。


少女の名は、イヴスメル。
イヴのコピーがマスターと呼ぶ、オリジナルの少女だった。
「それでは、カシーア・ソヌスのことも知らないのでしょうか?」
イヴスメルが言ったものだから、ロゼとヴィテスは顔を見合わせる。
「いや…話すと長くなるから省略するが、カシーア・ソヌスは俺たちの世界の秩序の神だ」
「“俺たちの世界”の? じゃあ、この世界とお二人の世界は、違う…?」
後半になるにつれて、しょげていくイヴスメルの声。

さらに詳しく話を聞けば、イヴスメルはヴィテスたちの世界の異変を調べるために世界を渡ってきたらしい。それがどこでどう間違えたのか、このメルンテーゼに来てしまったというわけだ。
「異世界に何故、カシーア・ソヌスのことが伝わっているのです?」
ロゼが尋ねると、イヴスメルはおずおずと話し出した。


カシーア・ソヌスはイヴスメルの住む世界の創造神だという。
もともとは別の世界に住んでいたが、人々が自身に反する存在、パレドン・ソヌスの考えに同調したためその世界から出て、また別の世界を作ったのだと。

「俺たちの世界の人々が、パレドン・ソヌスに同調しているだと?」
訝しげにヴィテスが言うと、ロゼはこくりと頷いた。
「確かに今の世界を見ていると、そう言えると思いますよ。カシーア・ソヌスは平等の神。ですが人々は競争を選んだ。そんなところだと思います」
その言葉にイヴスメルは頷いた。
「はい。競争は憎しみしか生み出さないのに…。それを悲しんで、カシーア・ソヌスは私たちの世界を管理されています。でも、元いらした世界がおかしいのに気が付いて、放っておくことができなくて。私たちの王を通じて、元の世界の調査をしてほしいと意思を示されたのです。それで、王の側近である私が調査に来ました」
(突っ込みどころが満載ですね…)
内心ロゼは思ったが、それは声には出さず、そうですかと彼女の現状を受け入れた。
――どうした?
姉さん。僕たち以外に兄弟っているんですか?
――いや。
そう、ですよね。
――なぜそんなことを聞く?
ごめんなさい、まだ言えません。もう少し、調べてみます。
かなりの時間が経った。
一度少女は目を覚ましたのだが、ロゼが事情を説明し始めたところ、また気絶してしまったのである。
「たぶん…クモって単語がダメなんだろう」
とはヴィテスの弁。
「たまにいるんだ。自分の苦手なものを思い込んで、思い込んで、結果頭の中で苦手意識が凝り固まってしまう人。気絶するレベルは、初めて見たけど」
そんな馬鹿なと思ったロゼが横を見れば、少女とよく似たイヴのコピーが激しく頷いていたので。しぶしぶ納得したというところである。
今度彼女が目を覚ましたときには、うまく言葉を回避して説明しなくてはいけないな、と。

そして、再び少女は目を覚ました。
「……んん」
「大丈夫か?」
体を向けてヴィテスが尋ねると、少女はびくりと体を縮こまらせた。それから、きょろきょろと周りを見回す。
「君を襲っていた奴は、俺たちが撃退しておいた」
無表情のまま言うヴィテスに、ロゼは苦笑した。
「ヴィテスの顔が怖いんじゃないですか?」
「そ、そんな! とんでもないです!」
慌てて否定する少女。それから恐る恐るといった感じで言葉を続けた。
「あ、アレを倒せるなんて、すごいですね…。ありがとうございました」
それからぺこりと頭を下げた。
「どういたしまして」
横からロゼが笑って言えば、同じくヴィテスもにこりと笑って。
そう、にこりと笑って、
「どういたしまして」
と言ったのだった。そのことにロゼは驚いたし、同時に、あることにも驚いた。それは…
「あれ…。お二人、笑顔が似ていますけど、ご兄弟ですか?」
少女がぐるぐるメガネの上から思うくらい、ヴィテスと自分の笑顔が似ていることだった。
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