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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

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A:7日目
水あります、の幌馬車の話はまたおいおい語るとして、
そもそも、冥使とはなにか、について定義を記す。

冥王に作られた、冥界に住む、10人の精鋭。
それが冥使である。
普段の仕事は人の魂を冥界に導くこと。
だが、ミニットには隠された使命があった。

それは、死をもたらすこと。
分割世界エンティの、20の世界のいずれかが終わりを告げるとき、
愛馬を駆り、すべての命を終わらせるのだ。
その時には、死の司すらミニットに従うと言われていた。


「でも、世界が終わるなんて寂しいよね」
ある日の仕事帰り、ぽつりと呟くと、声が聞こえた。
「もう第3世界は滅びているよ」
と。

驚いて辺りを見回すと、そこにはマンドレイク、もしくはマンドラゴラと
呼ばれるものが立っていた。
しかし、ただのマンドレイクが叫ぶ以外の行動をするはずはない。
ミニットは、それが自分の主の使いだと判断する。
「ふうん。でもその時は僕、呼ばれなかったけど?」
不満そうに言ってみる。
すると、そのマンドラゴラはむけけけ、と変な笑い声をあげて笑った。
「キミはいくつだい?」
ミニットが答える前に、マンドレイクはこう言った。
「第3世界が滅びたのは、司が滅びた時よりももっと前さ」
と。

「司が滅びている?」
司とは、それぞれの事象を司るものである。
だから司という。
それが滅びているのならば、自分が見ている20個の世界はいったい
どうやってなりたっているというのだろうか。
第3世界が滅びたということよりも、ミニットはそちらが気になった。
「むけけけけけ。こんなマンドレイクの言葉を真に受けるなんて純真だねえ」
いらっ。
次の瞬間、ミニットはマンドレイクを鎌で真っ二つにした――はずだった。
それはすでにそこに無かった。
「失礼。これは重要な通信手段なんでね。守らせてもらったよ」
まったく予想だにしない方向から、声がする。
自分は精鋭の冥使。そのプライドに、ずんと重いものを突き付けられた気がして、
ミニットは苦々しく声の方を向いた。
そして、納得した。
そこにいたのは、黒いローブを身にまとった、黒翼の司だったのだ。

「…なんだ。滅びていないじゃないか」
明らかに格上の相手にも、口調を変えなかったが、
正直ミニットの声は震えていたかもしれない。
「いいや。俺含めて3人しかもういないよ」
似た口調と、先ほどのマンドレイクの声で“彼”は答える。
「はじめまして、ミニットくん。キミの裏仕事ではパートナーを務めさせてもらう、
死の司だよ」
言われて、ミニットはぱちくりと相手を見た。
「ここではなんだし――噂の第3世界でも行ってみる?」
裏の使命のことに触れるのだろうか。
死の司はそう言って、ミニットの肩をぽんぽんと叩いた。


第3世界は悲惨な状態であった。
そもそも冥使は、仕事がある場所以外には向かわない。
だからミニットは第3世界がリストから抜け落ちていることにも気がつかなかった。

そこには、救われていない魂がたくさんあったのだ。

「な、なに…これ…」
ミニットは思わず耳を塞ぐ。
だが、目を逸らすことはせず、しっかりそこにある“モノ”を見据えていた。
「見てわかるんじゃないのかい?」
死の司は無情に言い放つ。
「これを僕の頭の中で情報に変換しろと?」
憎らしい、とミニットは思う。

そこにあるのは変わり果てた人々の石像。
助けてくれ、と語りかけてくる。
許されるならば、この石像を破壊して中の魂を取り出したいところだが、
そんな権限は無かった。冥使は基本的に魂を運ぶだけの存在。
「そもそもこの石像は壊せないよ。生きてるんだから」
死の司が言う。生者を殺すことは、冥使のタブーであった。
「生きているだって?」
「そう。この世界の人々は願ったんだ。永遠に生きたいと。
それを宿命の司が叶えたんだ」
それに対し、ミニットの視界が揺らいだ。
「これが叶えたって言うのか…いつからこの人たちはこうしているんだ…」
むけけけけ。
死の司はこんなときなのに、そう笑った。
「怒らないね、キミは。……そういう風に作られちゃったのかな?
「ん?」
小声で呟かれた言葉に、ミニットは首をかしげる。
「だから、昔むかしさ。それで、他の司たちが怒って、
宿命の司に攻撃を加えたんだ。そこで宿命の司は――」
きょろきょろと、死の司は辺りを見回し、ミニットの耳元でささやいた。
「誰も自分に勝つことができない、という誰もが持つ宿命を発動させて、
司を滅ぼしたのさ」
ミニットの心の臓がきゅうっと冷えた。
「なんて身勝手な…」
覚えたのは、恐怖。
「怒らないんだね」
不思議そうに死の司は言う。
「僕は司じゃない。力の差がありすぎる。怒りも覚えたと思うよ?
でも、例えばそれを表に出したら殺される。それを無意識に感じたんだと思う」
そう答えると、死の司は満足そうに微笑んで、ミニットを抱き寄せこう言った。
「さすがだね、俺の息子」
「え?」

冥王に作られた、冥界に住む、10人の精鋭。
それが冥使である。
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