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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

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「やらせないよ!」
そのとき、ファミリアの声がした。
ぴゅん、と彼(彼女?)がヴィテスとロゼの前に飛び出すと、辺りに結界が張られる。

「この力は…!?」
ロゼが驚きの声を出す。
「そ。我がマスター、ガラン様の超能力だよ。どうやってボクが使っているかは内緒だけどね」
それからファミリアは面白そうな声色でボンバーに語りかける。
「この結界は簡単には破れないよ。カシーア会の精鋭の超能力なんだから。さあさあ、どうする?!」
ボンバーの眉がぴんと上がる。
「カシーア会の連中の力なんて恐れるに足らずだぜ。力技でぶち破ってやるよ」
さらに炎が強くなり、大爆発が起きた。衝撃が結界の中にまで伝わってくる。
「くっ…」
ファミリアが苦虫をかみつぶしたような声を出す。
「大丈夫?!」
「だ、大丈夫だ…」
ヴィテスは答えるが、ロゼの返事はない。
「フン! 大ミエ切った割には大したことないぜ。さすがに死んじゃいねーだろうが、気絶するくらいの衝撃は通ったってことだろ」
嘲笑うボンバーと、焦るファミリアの姿は対照的だ。
ヴィテスは状況を打破するために、攻撃することを決める。矢を構えた。
「おいおい、矢が俺に届くと思っているのか? 溶けちまうぜ」
「ハイザー学園で学んだことだが…力には2種類あるそうだな」
言いながらヴィテスは、相変わらず自分にまとわりついているナイトスピリットを掴んだ。
「自然界に存在するものを使役する『自然の力』と、自然界には存在しない『異質な力』」
「だからなんだ?」
ナイトスピリットを矢の先にくくりつけるヴィテスの行動が不審なのか、それとも言葉が不審なのか。ボンバーは露骨に顔をしかめ問い返した。
「同じ系列の力は影響を与えやすい。つまり、結界という異質な力は、異質な力にさほど強くない。炎も自然界では珍しい現象、異質な力なんだろう」
「だからなんだ?!」
苛立ちを見せるボンバーにヴィテスはナイトスピリットを向けながら。
「つまり、お前も異質な力に弱いということになるよな」
そして、弓の弦を引き。
「これは闇の精霊ではなく、魂という俺の常識ではありえない存在だ」
放つ。
「つまり! この矢が当たれば! 俺様は! 大ダメージだと言いたいわけだ! だがな! そう簡単に痛ェ!!!」
ボンバーが律儀に反応しているうちに、矢は当たる。
ヴィテスは呆気にとられた。相手の言うとおり、当たらなければダメージは通らない。が、反論しているうちに当たるとはなんとも間抜けな。
「……」
「クソが! 覚えてやがれ!」

ボンバーは撤退した。だが、微妙な空気がそこには残った。
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焔の髪の持ち主…ボンバーはゆっくりこちらを向いた。その表情には以前のようないい加減さはなかった。
「お前ら…タインを殺そうとしたんだってな」
低い声。
それに対し、矢を放った張本人であるヴィテスはこくりと頷いた。自分の判断が間違いだとは思わなかったからだ。ただ、ロゼまで恨むのは筋違いだと考える。
それを告げると、ロゼは静かに首を振った。
何故だろう。
疑問が浮かぶが、敵を前にして考え事は危険である。そのためすぐに考えをやめたが、その理由がわかるのはそんなに近い未来のことではないのだった。

「あのとき、体勢が不利だったから逃げていたが、ちょい無理してでも殺しておくべきだったのかもな」
一歩一歩、近づいてくる者からは、殺気が放たれている。しかしヴィテスは不思議と冷静だった。弓をすっと構える。
「怖く、ないのですか?」
ロゼが尋ねる。
「……人の心が、読める恐怖よりは、怖く、ない」
そう答えてみたものの、それだけなのか、正直わからなかった。
この言葉は相手にも届いていたのだろう。
「俺の殺気より怖いものがあるだと?! なめやがって!」
激しい炎が二人を襲う……!!
ナイトスピリットがヴィテスの周りを飛び回る。
「……エンブリオの世話は、ロゼがやる。俺のところにいても、ネクターはもらえんぞ」
こう、ヴィテスが不機嫌そうに言っても闇の魂という名のエンブリオは飛び回る。
「………」
苦虫をかみつぶした顔でそれを見つめている。

ファミリアを先頭に一行は荒野を進んでいた。
暑さと乾燥でロゼはぐったりである。
「脱水症状になってしまいそうです。水…」
「いくらなんでも、熱すぎる気がするんだが」
ヴィテスも、「暑い」ではなく「熱い」というあたり、だいぶ参っているようだ。
(ころころころ…)
ウィスプはマイペースに転がっているが、その先を見て、イヴのコピーが声をあげた。
「あれは…?!」
その視線の先には、見覚えのある赤い焔のような髪の後姿があった。
「逃げましょう!」
間髪入れずロゼが叫んだ。
「ふふ、逃げられると思っているのかい?」
タインと名乗った者はそう言って笑う。それを無視してロゼは気絶しているイヴスメルを抱え顎でヴィテスに移動を促した。
「悔しいが、そうせざるを得ないか…」
しぶしぶ、といった感じでヴィテスはタインに向かって矢を放ち撤収しようとした。だが。
「!?」
そこにその者はいなかった。
「!!」
ロゼが行こうとした先を見て絶句している。ヴィテスはすぐさま状況を理解し、そちらを向いた。
そう、行こうとした先にタインは立っているのだ。
「瞬間移動か?!」
ヴィテスが唇を噛む。くすくすと楽しそうに相手は笑った。
「さあ、どうかな。こちらの手の内をそう簡単に明かすわけないよね?」
「否定の可能性が高そうですね…」
言いながらロゼはイヴスメルをあらためて抱え直そうとする。が、すでにそこには……
「ロゼ、どうなっているんだ!」
ヴィテスが声を荒げる。イヴスメルの身体はタインの横に転がされているからだ。
「………」
ロゼの瞳が揺らいだ。

「…時間停止、ですね」
「えっ」
ぼそりと呟いたロゼに、タインは呆気にとられた声を出す。
「さ…さすが学園1位さんってこと? そんなあっけなくバレるなんて」
タインの触手のように蠢く黒髪の動きが鈍る。それが彼の動揺を現わしていた。
「時間停止…それでは、こちらはどうすればいいんだ」
対してヴィテスが困惑した声を出す。すると、蠢いていた黒髪の動きは先ほどと変わらなくなった。
「そうだよ。僕の能力がばれてしまったところで、君たちにはなにもできまい。時が止まっている間に死んじゃえよっ!」
「ぴかー」
そのとき、なんとも場違いなのんびりした声…正確には音が響いた。ウィスプが激しく発光したのだ。
「わっ」
タインが怯む。その隙をヴィテスが見逃すわけがなかった。
タインの胸を正確に矢が射抜く。
「く…はっ……」
ふらり、と黒髪の少年はよろめいた。そこにロゼが駆け寄り、イヴスメルを取り返そうとした次の瞬間には――なにもかもが消えていた。

「あれで死ななかった、か」
ぽつりとヴィテスは呟く。
「いったい、何故…」
ロゼも茫然と呟く。
「何故、はこの際どうでもいいだろう。イヴスメルのことは詳しくは知らない。でも、彼女に害が加えられるとしたら、気分は、悪い」
ヴィテスはそう言って、ぎり、と唇を噛んだ。
「そう、ですね…。ですが、この状況をどうしろというのです」
ロゼは害が加えられるかもしれない、ということを否定しなかった。正確には、できなかった。

重い沈黙が続く。そのとき、ふいに声がした。
「アイツがどこに逃げたか、教えてあげよっか?」
声の主を探す。すると二人の後方でぷかりと浮いていたのは、黒い尻尾と灰色の翼を生やした小さな少女だった。
「悪魔…」
そのままの感想をロゼが述べ、ヴィテスが弓に手をやる。するとその少女の姿の悪魔は露骨に慌てだした。
「うわっ、酷ッ! こっちは情報をあげようとしているだけなのに! わかったよー、言うよー」
「そういう問題ではない」
ぴしゃりとヴィテスが言う。ロゼもこくりと頷いた。
「そんなこと言わずにさ! そこの眼鏡のオニーサン、ガラン様、ガラン=グホン様のこと知ってるでしょーが」
「悪魔の言うことに耳を傾けるつもりはない」
またぴしゃりとヴィテスは言ったが、ロゼの警戒は少し揺らいだ。
「“様”? なぜ人間であるガランさんに様付けを」
ヴィテスはロゼに文句を言いたげに目をやる。ロゼは首を振って、ガラン=グホンなる人物が何者かを告げた。
ガラン=グホンはカシーア会に所属する人間で、魔属を嫌悪している少女だ、と。

「ガラン様、というかカシーア会の人がさ。魔属をコントロールするアイテムを発明したんだよねっ。で、そのアイテムでコントロールされた第一号が、このボク、ファミリアさ!」
なぜか自慢げに言う目の前の悪魔に、ロゼとヴィテスは困惑して顔を見合わせた。
「自慢げに言うことです? そういうことは」
「なにより、お前の言っていることが本当だという証拠もない」
ロゼに比べてヴィテスは警戒を緩める感じはない。それを見たファミリアは肩をすくめて、
「じゃあさ、しばらく行動を共にするよ。そうしたらボクが信用に足る者だってわかってもらえると思うね」
と、言った。
ふと、ヴィテスがある方向を振り向いた。
「どうしました?」
「いや…なにか視線を感じてな」
その言葉にイヴスメルはびくっと反応する。
「あ、アレで」
「違う、もっと大きいものの気配だった」
厳しい顔つきで言葉を遮られたものだから、彼女の目が潤む。
「もっと大きいアレでは…」
潤んだ理由が違った。

「音が違うと思いますよ。アレだったらガサガサいいそうではないですか。…ん?」
ロゼは安心させようとして言ったのだが、ヴィテスの厳しい視線に首を傾げる。
「がさがさ………う、うーん…」
イヴスメルは倒れた。
「想像させてどうする」
そんな状況に厳しいご指摘ですね、とロゼは苦笑するしかなかった。

「気絶していたほうが、苦しまなくて済むけどね」
ふいに声がした。ヴィテスが気にしていた方向とは違うところから。
次の瞬間、ヴィテスが矢を放つ。しかしその矢は途中で消え、それを掴んだ人物が姿を現わした。
長い長い黒髪をまとった、人で無い者だとわかる、青年風の人物だった。
「やあ、僕はタイン。そこのお嬢さんをもらいに来たよ」

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20日目は風邪で落としました。
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