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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

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探索70日目
「終末のときも近いわね」
フェイテルがシャルの肩の上で、
自分と同じくらいの大きさの水晶を浮かべながら言った。
「ああ、私のお店ー…」
カルニアは涙目だ。
いきなり遺跡の最下層に連れてこられ、商売はできているものの、
店が無いので買い物ができないのだ。
「いつお前の店になったのだ…」
エリアスは呆れ顔だ。
「しかし、食べ物が買えないのは確かに困るよ? おなかがすくじゃないか」
フォーゼはそう言いながら、今回の強制召喚に部下が巻き込まれなくて
よかったと思っている。自分の国的な意味で。
シャルはその間、黙っていた。

そしてふいに。フェイテルをフォーゼの頭に乗せて、こう言った。
「ねぇみんな。ボク、遺跡外に戻るよ」
「え、それってありですか?」
「敵から逃げるのか…!?」
「いいよ。その代わりお土産よろしくね?」
即座に反応が返ってきたことに、シャルはくしゃっと顔をゆがめる。
――申し訳ないと、思ったからだろうか。
「ボク、このままじゃ、使い物にならないから、さ…」
それだけ言って、すぐに消える。
他の者たちが反応する隙すら、与えなかった。

---------------
遺跡外に出るのはあっけなかった。
しかしそれに対する感想が浮かぶわけではなかった。
ただシャルの頭の中は、あることでいっぱいなのだ。

---------------
「どうしたんでしょうね、シャル。壁がいなくなって、普通に困るのですが…」
カルニアは誰に問うわけでもなく、呟いた。
「敵前逃亡…とは違う雰囲気だった」
「もう。あなたの真実の瞳で見抜いてしまえばよかったのに」
「ふむ…」
エリアスは悪くないなと思う。
足りない頭で考えた結果だ。シャルに聞いても答えは返ってこないだろうと
思ったのだ。
それは嘘をつくつもりがある、とかではなくて、
シャル自身もわからないことではなかろうかと。
シャルに限ってそんなことが存在するとは思っていなかったのだが、
彼が目を泳がせたことで察した。
いかんせん、エリアスは自分の考えがよくわからなくなって、
視線を泳がせることが多いから。
「…やめておいて正解だったと思うの」
フェイテルがぽつりと呟いた。
「そうだよね。人の心を覗くのは良くないよ」
フォーゼが続ける。
「あ、そういう、わけでは…ない」
エリアスは慌てて否定した。ただ、シャルが困っているようだったから、
答えを導きたかっただけ。
そう言おうと思ったのだが。
「あー…そうですね。私も勝手に心を覗かれるのはイヤですよ? というわけで、
エリアス、今後、私に真実の瞳を使うのも禁止です」
にこにことカルニアが妨害する。
それに対して、エリアスはすぐさま鞘でカルニアをポカン、とやった。
「痛ーっ! 口で答えられないからって、ひどいじゃないですかぁ!」
「そうではないの」
フェイテルは騒ぎを気にしていないかのように言った。
デスティニーに至っては最初から全面無視である。というか、デスティニーの場合、
なにもかも無視するのがデフォルトだ。
「もし、今のシャルにちょっかいを出したら…殺されるわ」
『え? そんな馬鹿な』
3人の声がハーモニーする。
それに対して、フェイテルは下を向き、反論ではない言葉を紡いだ。
「…そんな気が、しただけ…」

-----------------
シャルは人間が大好きだ。
人外も、まあまあ好きだ。
よって、相手を困らせるために呪いをかけることは始終しょっちゅう平常運転
なのだが、命を奪うことは極力避ける。
しかし、そんなシャルも触れられたくないことは、ある。
そして触れた相手には激怒、するのだ。

実は過去のフェイテルがそれに触れてしまったことがある。
そのとき、シャルはなにもかも放り捨てて、フェイテルを殺そうとした。
たとえ殺せなくても。
その結果自分が死ぬことになっても。
その結果自分に与えられた「守護」ができなくなるとわかっていても。
わかっていても、シャルはフェイテルに襲い掛かった。

このときのフェイテルは、彼女にしては珍しく悪意は無かったのだ。
ただ、シャルが想ってやまない主の名が、偽名だと教えようとしただけなのである。
あまりにもシャルがその名前に執着しているため、かわいそうだと思って。

--------------
「懐かしい気配がしたんだ」
シャルはぽつりと呟く。
「でも…ちょっと違うんだ…」
ただひたすらに、歩く。
「気になるんだ…」
でも歩く速度は、非常に遅くて。
「怖いんだ…」
同じところを知らず知らず回っていたり。
「なんだか、知ってはいけないことを知ってしまいそうな気がするんだ…」
けれど、ある方向へ確実に進んでいく。
「だけど、会いたい…」
シャルの声と内なる声が重なる。
「ボクを変えたあの人に――」
『我を変えたJ・フェブラリーに――』
                      あいたい!

----------------
そして、ほどなくして、シャルは捜し求めていた人を見つける。
変わっていなかった。
なんといえばいいのだろう。
外面も、内面も、美しいひと。
シャルは黒鳥のような人だと思っていた。
そんな人が、いた。

だが、先客がいたので、思わず身を隠す。
心臓の音が、シャルの頭の中でドクドクと音を立てる。
そして、言葉は聞こえなかったが、二人の様子に――
やきもちを焼く。
(あの人、な、泣いてる! Jさん、手、触ったーッ!)
しかし、ほどなくして自虐に入る。
(…そうだよね。Jさんほどの人に、そんな人がいないわけないよね。
だいいち、ボク人間じゃなかったんだし)
風波飛翔。
当時はそう名乗っていた。
(「飛翔」には、そんなつもりはまったくなかったけど…結果的にボクはJさんを
騙していたわけだし…)
――不正義さまのご加護がありますよーに!
飛翔は彼女に会った世界で、常にそう言っていた。
だが、飛翔自体が不正義(アンジャスティス)そのものだったのだ。
(人間になりたくてなりたくてなりたくて、人間に転生してみて、
恨まれて殺されて…
いやあれは自害だったっけ、まあどっちでもいいんだけどね…
それで人間になるという望みは絶たれたと思っていたけれど、
あの世界に飛ばされて、Jさんに会って、みんなに会って…)
とても大事な、思い出。
事実上無敵な自分の、唯一の弱点になっているけれど、それも構わないくらいの、
大切な思い出。
ヒトからすれば、途方も無い時間が経っている今も、当時その場にいた人たちの声が
聞こえてくるかのようだ。

(……行こう)
その姿を見れただけでいい。
不安とかさっきまであったけれど、いざその姿を見たら、
そんなものは吹っ飛んでいた。
最後に、と思ってもう一度覗き込む。
すると――彼女の連れている犬に気付いてしまった。
(い、犬ぅぅぅぅ!)

…シャルの名誉のための補足だが。
シャルは犬が怖いわけではない、むしろ好きだ。というか同類だ。
だが、同類だからこそわかることもある。それは、犬は主人に忠実だということ。
つまり、
犬に気付かれていたらJさんに覗いてあのシーンを見ていたとバレてしまう
不振人物だと思われるそれだけはイヤだどうしよううわあああああ!
状態に陥ったのである。

---------------
シャルが混乱し、他邪心たちがユグドラシルと対峙しているなか、
ネコたちは相変わらずであった。
オレンジ毛のネコはのんびり伸びをし、チモンに語りかける。
灰縞毛のネコは喉を鳴らしているだけだ。

---------------
生まれ変わった王女は人間と戦うのが普通だった。
自分の一族を守るためにね。
…どんな一族か知りたい?
そうね。
それなら、あなたがこれから向かおうとしている人のところで話そうかしら。
ぴったりなんだもの。

そうよ。雪女。
雪女を守る存在に王女はなっていた。
だからこれからは、雪女の子、と呼ぶわね。

雪女の子は、特に人間が憎かったわけじゃない。
単に自分の使命だったから守っていただけ。
つまり、自分の一族も、人間も、そりゃあもう、
動植物でさえ同じ扱いだったようよ。
それでも、使命のために、人間を殺め続けていた。

その代償は、もちろんあったの。
正義の味方が彼女を殺しに来た。
あ、笑ったでしょ?
本当にいたのよ、正義の味方。

(そこまで言って、オレンジ毛のネコは灰縞毛のネコの様子を伺った。
 灰縞毛のネコは眠っている。
 それを見て、オレンジ毛のネコが安心したのを、チモンは感じ取った)

正義の味方ってね、表世界の王家が生まれ変わった連中だったの。
そんなこと、雪女の子は知らない。
自分の前世も知らない。

そんな状態で、正義の味方と、雪女の子は戦った。
途中で兄が、雪女の一族を守るために、人を殺めるのは間違いと言い出して、
正義の味方側に回っても、戦った。

そのあと?
――どうだったかしら。

-----------------
オレンジ毛のネコはそう言うと、灰縞毛のネコの横に並んで、寝息を立て始めた。
「早ッ!」
チモンは思ったが、どうすることもできず、その様子を見守ることにした。
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