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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

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探索13日目
フェイテルは頭を振った。
他人と話をすることなどほとんど無かった自分が可笑しくて仕方がないのだ。
今近くには邪心たちはいない。
ひとり、魔方陣の近くの岩場に腰掛けている。

人と話している間に、
彼らのことは自分の使い魔だと言えばわかりやすいことを学んだ。
(学ぶなんてことが私にもあるなんてね)
さらに、自分は占い師に見えるらしい。
なるほど、確かに占い師は水晶を持っている者も多い。
否、水晶を持っていて、占いをやらない者が少ない。
間違われても仕方がないだろう。
(ヒトと話すことは、発見の連続ね。知ろうとすれば全て知ることができると
思っていた。でも宿命が全てではないのね。運命は、どうなのかしら)
ちらと弟のことを思い出す。
(あの子は旅していたらしいけれど、誰かと交流を持ったのかしら。
雄弁に話すあの子、見てみたいわ。――まあ無いわね。
すぐに自分の言葉が出なくなって黙り込むに違いないわ。エリアスみたいに)
ふふっと、笑い声がもれてしまう。
「さて。カルニアはうまくやっているかしら」
そっと水晶を覗きこむ。


「こんにちはー! 王様に謁見を申し込みに来ました!」
カルニアは、手回しをしないで、そのまま森の国の城に突撃していた。
森の国は開放的だという情報を事前入手して、
そのままニヴァルト(カルニアの愛バイク)に乗ってやってきたのだ。
そして城の受付で、いきなりこう挨拶したのだ。
しかし受付のほうも慣れているようで、
「ご用件は?」
と聞き返してきた。
「はい、フェイテルの使いの者と、王様に伝えていただけますか?」
フェイテルの名前が王に通じるか。
それはわからなかったが、邪心で知らないということはないだろう。
万が一謁見許可が出なかったら、この城の者たち全員を洗脳してまで乗り込もう、と
自然に考えていた。
「しばらくお待ちください」
そして手続きに向かう。
(ふーむ、子供だから門前払い喰らうかもしれないと思ったんですけど、
そんなことは無いんですねぇ)
どこからか取り出したジュースをストローでじゅーっと吸いながらカルニアは
ちょこんと座って待っていた。

(結構時間が経ちましたけど、遅いですねぇ。受付係さん、2人しかいないのに、
1人になってしまって大丈夫なんでしょうか)
なんだかんだで人の心配をしている。
そんなカルニアの横には袋が置いてあり、
そのなかには空になったジュースの容器が入っている。
(もう6本目ですよ…)
飲みすぎである。飲むのをやめればいいのに、そこらへんは頭に無いらしい。
すると、受付の人が戻ってきた。
「大変お待たせしました。王の許可が出ましたので、どうぞ」
「ありがとうございます」
カルニアは深々と丁寧にお辞儀をした。
「お手数おかけして申し訳ありません」
カルニアなりのねぎらいの態度である。彼も前世は王だった。だから城内の人間が
どんな風に働いているか。大変だろう、ということは把握しているつもりだ。
受付係に案内され、謁見の間に通される。
カルニアは慣れた風に王の前まで通されると、膝をついて敬意を現した。
しかししっかり見ていた。王の耳を。その耳は獣の耳のようで、
黒くてふさふさしていた。亜人でも王をやっている。
この国の解放的な風潮がわかった気がした。
「下がっていい」
王が言う。
受付係が出て行ったのを確認すると、王は口を開いた。
「君も邪心かい?」
単刀直入にもほどがある。カルニアは苦笑した。
「誰かに聞かれていたらどうするんですか。君“も”なんておっしゃってー」
カルニアは許可も出ていないのに顔を上げた。するとさっと王とカルニアの間に
少年が割り込んだ。
言葉には出していないが、効果音をつけるなら「シャーッ!」だ。
「あわわ。すみません、許可をいただいていないのに顔を上げてしまって」
カルニアは即座に謝り、頭を下げた。
少年は先ほどよりはマシだが、警戒の色を湛えた目でカルニアを見ている。
「よい。普通に接してくれ」
「立ち上がっても、いいですか?」
「構わん」
カルニアは許可をもらい、立ち上がって王に一礼すると、先ほどの質問に答えた。
「私は偽りと創造の邪心と呼ばれるヴァイザです。第6の世界が元々の出身地です。
普段はカルニアと名乗っております」
側近の少年の視線がさらに痛くなった気がする。
「そうか…私はビスマス・フォーゼ。第9の世界からここに飛ばされた。
この国は元々ただの集落だったのだが、国としてまとめ、
いまや4大国のひとつになるまで育ててきた」
その言葉でカルニアは察する。彼はかなりの昔に合同宿舎がある世界、
第1の世界に飛ばされてきたのだと。
「知っていると思うが、この世界には邪霊が発生し、人々が知らずに近寄ると
邪霊に取り付かれてしまう場が多くある。よく国内の場を潰すのだが、
先日、力の強いものと当たってな。人の形をとり、多くのゴーレムを生成し、
大地の呪文を唱えながら俊敏な動きで私を翻弄した。なんとか撃退できたのだが、
そのときから私の体の様子がおかしい」
カルニアは冷や汗を流した。
王が先日戦った相手に、心当たりが思いっきりあったからである。
「わ、私の部下が大変ご迷惑をおかけしたようで…」
「やはり貴殿の部下だったか。偽りの気配を漂わせていたからな」
「申し訳ありません。言うことをなかなか聞かないもので」
言いながらカルニアはその部下、ガンマのことを思い出していた。
(全く、なにやってるんでしょうあの子は! 
ここに来る前に随分ボロボロになって寝込んでいるのを見ましたけど、
人様にご迷惑をおかけしているとは…
邪心に昇格するきっかけを与えてしまうなんて)
そこまで考えると、質問を投げかける。
「それで…その様子がおかしいことについては、どの程度お解かりですか? 
私への質問からして、ご自分が邪心になってしまったのはご存知のようですけれど」
王は頷いた。
「自分が邪霊と呼ばれる存在だったことは知っていた。そして邪心になったとき、
声が聞こえたのだ。声の主は、貴殿が言った、フェイテルと名乗る者だった。
彼女の話を聞くと背中が寒くなった。威圧感だろうか。そんなものを感じたのだ。
そして、我々の世界にいる限り、全てのものは彼女の定める宿命に
逆らえないと知った」
カルニアは黙り込んで聞いていた。普段は喜んでフェイテルの使い魔のごとく
振舞っているが、本心では自分も自由になりたいと思っているのだから。
「そして、ある地方の邪心は、暴走を防ぐために彼女に管理されるような
仕組みになっているとまで、聞いた。だが」
王は言葉を切った。
下を向いていたカルニアがはっとなって王の表情を伺う。
彼はどこかしら寂しげに見えた。
「管理される理由はわかった。だが、彼女の気まぐれに従いたくはないのだ。
私はここの王。ここを守りたい。ここを頼ってきた民を裏切るようなことは
したくない。この地を離れたくはない。
たとえ、代理人を立てることができたとしても、だ」
それを聞いたカルニアの瞳から涙が零れ落ちた。
(…え?)
カルニアは普通の表情でその言葉を聴いていたが、
その状態から涙が勝手に流れ出たのだ。
「な、泣き落としでもビスマス様は動かぬぞ!」
側近の少年が叫ぶのが聞こえた。
そう、自分は偽りの邪心。自分の目的を果たすためなら手段は選ばない存在。
だから、そう思われても当然だ。だが違う!
カルニアは呆然と涙を流しながら、どうして自分が泣いているのか理解した。
「も、申し訳っ、ありません…一度、しゃがませて、ください」
そう言って返答も待たず、カルニアは座り込んだ。そして自分の周りに偽りの結界を
張り巡らせる。
「ビスマス様! こいつ、なにかやるつもりです! お気をつけて!」
「…わかった」
カルニアは結界で自分がしゃがみこんでいるだけだと見せかけていた。
そして、中で、泣きじゃくった。
むかし、むかし、大昔。自分が純粋に抱いていた思い。
“民を守りたい”
それを実践しているビスマスの姿、考えを聞いて、心の奥から後悔と少しの嫉妬が
押し寄せてきた。
「うあ、うう、うわあああああー!」
誰にも聞かれない叫び。
止まらぬ涙。

しばらくして。
「先程は失礼しました。急におなかが痛くなったもので」
言い訳にもならないことを口走りながらカルニアはけろっとしていた。
目が赤く腫れることも、泣き声にもならない便利な生命体である。
「さっきはなぜ術を使った!」
側近の少年が刺々しく言う。彼のほうを見て、カルニアは相手が子供なので
お子様モードでしゃべる。
「うわ、見えていたんですか? すごいですねぇ~。
そのあたりは誤魔化したつもりだったんですけど。
だって恥ずかしいじゃないですかぁ~。
痛がっている姿、見られたくなかったんですもん」
半分は嘘ではない。
こほん。カルニアは咳をした。
「失礼いたしました。先程のお話しですが、よくわかりました。
フェイテル様には、ここは離れたくない、ということを伝えておきます」
王が眉をしかめる。
「それでいいのか」
カルニアはにっこり笑う。
「難しいってことはわかっていましたから。おそらくですけど、これを伝えると、
このお城から強制的に呼ばれるときは呼ばれるようになると思います。
謁見中とか多忙なときはフェイテル様にも見えるので
気は使ってくださる…と…思うんですが」
語尾が濁った。
「なんだ、その歯切れの悪さは!」
少年がまた喰いかかる。それを王は彼の前に手を出して制止しつつ
カルニアに声をかけた。
「妥協せざるを得んな。貴殿もそれ以上の手はないのだろう?」
「はい」
こくりと頷く。
「では、あまり戦場で会わないよう、願っている。もう行くか?」
「そうですね。これ以上私もお話しすることはありません」
そう言って一礼すると…カルニアの姿は消えた。

「うわーん、酷いです! あれでは謁見が無事に終わったか
わからないじゃないですかぁ~! あのままでは私は不審人物ですよ!
ニヴァルトもまだ森の国だというのにー」
もちろん、文句の先はフェイテルである。
「仕方ないわね。ならば戻してあげるわ」
「え、ちょっとま…」
再びカルニアの姿は消えた。

「うわーん、酷いです! 私をなんだと思っているんですか!」
驚いていた王と少年に事情を軽く説明し、挨拶を終え、
城を出てニヴァルトに飛び乗り、合同宿舎に戻ってきたあとのことである。
「いい子」
フェイテルはにっこり笑う。
「う…」
カルニアは言葉を詰まらせる。
(それって、褒め言葉じゃないですよね。使いやすいって意味ですよねきっと)
ちょっと卑屈だが、間違いではなさそうなのがフェイテルの困ったところである。
「お使いお疲れさま、カルニア。貴方の言ったとおり、
彼の召喚はエリアス以上に気を遣うけれど、彼に合わせるわ」
「それはよかった」
カルニアはほっとする。

しかしカルニアは気がついていない。
つまり、それは自分やシャルには遠慮しないという意味だということに。
カルニアはキレ者と見せかけて実は、抜けているのかもしれない。

--------------
ランキングは第36位(1516)でした。
今回、初めて文字数オーバーを体験しました。
それでもなかなか上がらないってことは――みなさんすげぇ。

次回はどうしたものでしょう。
遺跡外に出たので、忙しくなりそうです。
と言っても、売るのは防具だけですが。

最近、フェイテルの口調が一定していないことに気が付きました。
一人称は私(わたくし)、二人称は貴方。
三人称は使い魔(仮)たちは呼び捨て。それ以外は…あれー?
お嬢さま言葉にしようかと思ったときには、もう2、3話進んでいて、
進路変更はできませんでした。惜しかったな。
製作の相棒が、フェイテルにはカリスマが無いと言っていたので、
どうすればカリスマになるのか考え中です。ムズカシイ。
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