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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

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かりかりかり…
シャルがペンを動かしている音だ。
魔方陣の上でもぞもぞ動いている物体を描いているのである。
「ちっちゃいなぁ。オルドビスに見せてあげたいよ。全力で嫌がるだろうなー」
合同宿舎(未だ仮名)の主の名を出す。彼は子供が嫌いなのだ。
ちっちゃい、と言われた者たちはそれぞれの表情でシャルに声をかける。
「嫌がるなら、行きたくないわ」
「僕を玩具扱いするな!」
ぱたぱたぱた…黒い翼たちが音を立てる。それを満足そうにシャルは片肘をついて、
視線を彼らのもとへ下ろした。
「へーぇ。ちっちゃいときはもっと人間っぽかったんだ。成長するんだね。
 ふーんふーん」
こつん。
シャルの鼻面に小石が当たる。
小さなデスティニーが手に持った杖を突き出して、魔法を唱えたらしい。
「あっはっは。全然痛くないよー」
「くそっ」
あの、無感情だったデスティニーと本当に同じ物体なのか怪しいくらい、
感情をあらわにした小さな黒い翼を持つ者は目を閉じて、ぶつぶつと詠唱を始める。
「やめなさいな」
小さなフェイテルがいさめる。しかしデスティニーの言葉は止まらない。
「受けてみろ、黒槍!」
こつん。
小さな、つまようじくらいのサイズの黒い槍がシャルの鼻面を再び襲う。
「あっはっは。痛くない」
シャルはまたカラカラと笑う。
「………!」
ぽいっと、ちびデスティニーは杖を投げ捨てた。
「ホントに、無力になっちゃったんだね…」
それを見て、しみじみとシャルは言う。
おそらく先ほどの黒い槍は、フェイテルを倒したものだろう。
「まあいいか」
シャルはそう言って、二人を見る。
ちびフェイテルはちびデスティニーのことを心配そうに見た。
―― そう、あのわざとらしい笑顔はもうそこには無い。
シャルでさえ知らなかった、司の素顔。デスティニーが、フェイテルを、
いや、フェイテルが他の司を憎む前に戻ったのだ。
それだけなのだ。
「これが正しい姿なら…」
願わくば、他の司の復活を。
でもそれはきっと叶わぬ夢。
ならば自分のできること。それはこの子たちを導くことではなかろうか。
「これからこの子達を育てていこう。ボクが」
母性本能を爆発させて、シャルは二人を抱えると、仲間の下へ歩いていった。

カルニアとフォーゼが、まとまって彼らを食い物にしようとするものだから、
シャルは久しぶりにカリスマオーラを身にまとい、簡単に退治してのけた。
それをぽかんと見ていたエリアス。
自分の父と、それを苦しめていた女が赤子になったのを知り、恐る恐る手を伸ばす。
「簡単に…壊れてしまいそうだな」
そう言って。
「大丈夫よ。あなたは優しいから」
ちびフェイテルがそう言えば、
「ふん。僕から連なるもの。お前の頭の上を指定席にする」
ちびデスティニーはふんぞりかえった。
今までとのあまりの違いにエリアスは固まる。
「あーあ。ショートしちゃったね。いい、エリー? この子たち、0歳だから。
途方も無い時間が無くなっちゃってるから。
性格変わっていてもおかしくないんだよ」
そう言ってゆさゆさとゆする。
「………」
しばしの沈黙。
ようやく言葉を発したと思ったら、それは困惑そのものであった。
「し、しかし…デスティニーはこんなに横暴だったのか…」
「横暴とは違うでしょ。ぱたぱた化しただけじゃない?」
ぱたぱた。
デスティニーの羽根からシャルが作ったデスティニーの偽者。
それと今のデスティニーの区別は、サイズも加えてわからない。
よじよじとエリアスの頭に上ったちびデスティニーをシャルはくりくり撫でた。
「この人に俺はついていくべきなのか…?」
「そんなの自分で決めなくちゃ」
シャルはエリアスを切って捨てる。
憂いの瞳は、シャルからすーっと視線をそらせた。
「わーかったわかった。そんな困った顔しないで? ついていかなくていい。
逆にボクタチが彼らにいろいろ教えてあげないといけないよ。
探検はもうやめて、外に出よう? 
そしてオルドビスのために面白い話探しつつ、街の住人になろうではないか」
「ふむ…」
エリアスは納得したかのように言った。
が、数瞬置いて、がばっとシャルに詰め寄る。
「それでは俺のやれること、無いではないか!」
「そうかもね。でも、ボクの予定ではそうなってるの。
イヤならなんか見つけてごらんよ。戦う練習とかしたいなら、ボク、一緒に行くし」
シャルは良く言えば、臨機応変できる案を出したのである。
悪く言えば、なんも考えていないとも取れるが。
「それに、フォーゼとキミは、あっちの世界でも仕事あるでしょ?
 だからあっちにいてもいいんだよ」
ああオルドビス。ボクもキミと遊びたい。そう歌うように余計なことを付け加え、
くるりと回った。
それにぴくりと反応するちびフェイテル。
「それ。ええと、そう、歌。ねぇ。歌を教えて」
シャルのズボンのすそにつかまって、ちびフェイテルはねだった。
シャルの瞳が一瞬見開かれる。そして笑う。
「いいヨ。フェイテルちゃんには歌を教えてあげよう。
 デスティニー君はどうしたもんかねー」
ちらりとエリアスの頭の上を見る。
ぷい、とそっぽを向くちびデスティニー。
「――なんと?」
問うエリアスに、シャルはあははと声を上げて笑う。
「めんどくさいってさ。ボク、そういう子も嫌いじゃないし」
「俺はそういうのはどうも…」
俯くエリアスの肩に、シャルはぽんぽんと手を乗せた。
「じゃ、修業がんばればいいじゃない!
 この間、テニスラケットも貸してあげたし。がんばるエリーを見たら、
 デスティニー君もちょっとは真面目になるかもよ」
そういうものなのか?
不思議そうなエリアスの視線に、シャルは、周りの環境が成長には一番大切なのさと
笑い、食いしん坊二人を再びぶっ飛ばした。

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····· カオス。カオス。カオス。

エリアスが見つけた、双子星。
それがだんだん大きくなってくる。
「……?」
呆然とそれを見るエリアスだったが、どんどん顔が引きつってきた。
星が大きくなるのと同時に、音が接近してきているようなのだ。
「なにかが…接近してくる…?!」

「うわっほーい!」
突如、背後から聞こえた謎の…いや、シャルの声。
エリアスを押しのけて、双子星の落下地点に彼は立つ。

ドドーン!

「お、おい。大丈夫か…?」
予想以上の爆音に驚いてエリアスが義理の兄に問う。
もうもうと煙が立っていたが、その煙が晴れると、シャルはニッと笑って、
自分の手に収めたものをエリアスに見せた。
「ホラ! 邪神降臨」
「なっ…」
シャルが持っていたのは、小さな、小さな、フェイテルとデスティニーだった。

「そもそもなんなのだ、邪神降臨とは」
他の者たちがいる、キャンプへと向かいながら、シャルにエリアスは尋ねる。
「この島にはいろいろな力があるでしょ? 成長するはずも無いフェイテルサマも
 いろいろ身に付けていたのを知っているよね?」
兄の問いに弟は頷く。
「その中のひとつさ。デスティニーさんがフェイテルサマを倒しちゃってから、
 ボクはずっと考えていた。このままでいいのかってね。デスティニーさんも
 フェイテルサマも納得していたみたいだけど
 置いていかれたこっちは納得してないんだ。
 だから、なんとか話だけでもいいから聞き返す方法はないかと、
 いろいろ探していたんだよ」
「ふむ」
シャルはエリアスから視線を外すと、歌うように言い始めた。
「この島の、遺跡の外には変な機械があってね。
 そこにはいろいろな情報が書いてあった。ボクらと連絡を取りたい人が
 お手紙送ってきたりするのもそこで受け取れるようになっていたんだけど…
 そこには技の情報のやりとりとかもあるわけよ。その中で見つけたんだよね、
 邪神降臨」
くるりと一回転する。
「この島に始めてきたとき、カルニアに説明してもらっていたんだけど、
 ボク達が邪心だからかなぁ? そのときは気にも止めてなかったんだよね。
 でも、最後の司が消えちゃってから、もう一度、何気なく調べたら、あったんだ。
 邪神って人々に呼ばれていた黒い翼のデスティニーさんのことが
 すぐに頭に浮かんだよ。そして本当は黒い翼のフェイテルサマのこともね。
 だから実験したんだ。二人が復活したらラッキー☆ぐらいの勢いで」
「それで急に毒の再勉強を始めたんですか」
後ろから声がした。
「わっ! カル! なんでボクタチに追いつけるの?! 足遅いのに」
シャルの弟であり、エリアスの兄であるカルニアは、バイクに乗っていた。
「普通に歩いては追いつけないので、乗り物を使ってみました」
そしてにこにこと笑う。
「フェイテル様とデスティニー様が復活したって本当ですか?」
意味ありげな笑いは止まらない。あふれんばかりだ。
「んー。本人かどうかはまだわからないよ。寝てるし」
シャルの手の中で小さな二人は、くぅくぅと寝息を立てている。
「ではぱぱっと確認しましょう。データ採取☆」
カルニアが手を伸ばす。その手をエリアスが掴んで止める。
「なんで邪魔するんですかぁ?」
「気に入らん」
「それだけの理由で邪魔するんですかっ!」
カルニアは情けない声を出した。それでもエリアスは手を緩めない。
「カル、うるさい。起きちゃったらどうするの」
シャルも諫める。
すると、ぱたぱた、と音がして、それからのんびりとした声も聞こえた。
「あら…シャル、カルニア、エリアス。
 いつの間にそんなに大きくなったのかしら?」
シャルの手のひらの上の、小さな司がこちらを見て、にこり、と笑った。


····· んーと…

「ベータ。お前に聞きたいことがある」
ぽつりと、エリアスが呟いた。
「何故、そこまでカルニア…いや、ヴァイザに尽くしていられるのだ? おそらく
お前は、奴の非道な行いをずっと見てきていると思うのだが。それなのに何故」
そう問いかけると、浅黒い肌の長身の男は、エリアスのほうを振り向いた。
「騎士とはそういうものだからだ」
迷いのない瞳が、まっすぐにエリアスを貫く。
「…」
エリアスは言葉が返せない。
「貴方はもともと冒険者か傭兵だったか…でも今の貴方は騎士。なにがあっても、
 今、仕えている王に従わなくてはならないのだ」
そう。
エリアスは、合同宿舎のある世界では、ゲイルナーディアという国の女王に仕える
8番隊隊長なのだ。
「騎士とはそういうもの…」
口の中でベータの言葉を反芻するエリアス。しかしふと自分の考えを発見して、
視線を上げた。
「だが、王が明らかに間違っているとしたら、それを指摘するのも部下の役目では
 ないのか?」
「明らかに間違っていると判断しなかった。私は」
ベータの言葉には迷いがない。
「なぜそこまでヴァイザを信用する…人を追い込んでは復旧させ、再び追い込むと
 いうことに、少しでも義があったとでも、本当に思っているのか?」
迷いが多いエリアス。そこまで自らの道を確信している相手にどう対応していいのか
わからない。
「……義は無いだろうな。ただの復讐だ」
沈黙の後、ベータは苦々しく言った。
「復讐…全く関係ない人々を苦しめるのが復讐か? あいつが邪霊になった経緯は
一応知っている。だが、それはあいつを罠にかけた人々だけが滅びを経験するだけで
充分だろう!」
「貴方は純粋な邪心だからわからないのだろう。罠にはめられて、人類の全てを
 憎しみの対象にしてしまう、人の弱さが」
人の弱さ?
エリアスは口だけを動かしてそう問い返した。
「私も主から貴方の邪心としての覚醒の話を聞いている。とても不思議だった。
 なぜ、貴方が守ろうとした故にとった行動を責めた相手を憎まなかったのかと。
 そればかりか、わざわざ邪心となって、人に倒され、消えてしまおうと
 思ったのか、そのために配下や弟とも呼べる存在を殺せたのか」
エリアスの生い立ちは特殊だ。
邪霊シェイドとして生まれ、体と心を分離され、体はシェイドの配下たちがなんとか
取り返したものの、心は人に転生されていた。
その心がエリアス。
邪霊の復活を聞いて、それを止めるために冒険者になり、それから心の転生を
行なった一族と出会い、傭兵になって――だが、ベータの言うとおり、
雇い主を守るため、敵からのスパイを殺し、絶縁された。
その後、シェイドの部下から真実を知らされ――とった行動は
とても怪奇なものであった。
「…わからない…… 思ったとおりに行動した、それだけだ…」
エリアスは視線を落とし、力なく言う。
「おそらく部下がおとなしく貴方に殺されたのは、忠義ゆえ。一騎士としては、
 その部下の思いを無駄にはしないでもらいたい」
「無駄にはしない…?」
エリアスは顔を上げた。
「部下は、邪霊シェイドの復活を望んでいた。しかしわざと殺されることを貴方は
 選択した。それを部下はおとなしく飲んだのだろう? あくまで、主である貴方の
 ために」
「……」
「今、貴方が生きているのは、フェイテル様かデスティニー様、いずれかの意思
 だろう。結果的に貴方の意思は通らなかった。だからこそ、貴方に生きてほしいと
 願っていたはずの部下のことを考えてほしい…
 少し話しすぎてしまった。無礼を詫びる」
エリアスはぼう、とベータの話を聞いていた。
頭の回転が悪い彼には、少々難しい話だったのだ。
「俺を信用…。ずっと敵同士だったから、そんなことを彼らが考えていたなんて
 思いもしなかった。確かに俺は今、生きている。それに応える…
 俺はどうしたらいいのだろう?」
ベータは首をかしげた。無表情のまま。
「それでは困る。主がしっかりした道を持っているからこそ、部下は主に忠義を
 尽くせる。今、貴方に邪霊の部下はいないが、人間の部下はいるだろう。
 その者たちのためにも、自分がどうあるべきか、自身の力で決めてほしい」
エリアスはじっとベータを見ると、そうか、わかった。と答え、自分の話に
つきあってくれたことに礼を言い、立ち去った。

「もし…俺にあのときの部下たちが帰ってきたら…なにをしてやれるだろうか」
「今は女王に仕えていることだけを考えていた…8番隊の皆が俺を信用して
 ついてきてくれるなら、その気持ちは裏切ってはいけない」
ひとり、夜の丘の上でぽつりぽつりと呟くエリアス。
ふと上を見上げると、小さな双子星が見えた。


····· ついに来たー!

年があけたよ。

今 トパーズは 新しい合流メンバーの レベルあげに
つきあってるの。

…なんだかんだで つきあい、いいよね。

今年は 今日から なの。
よろしく ね。

でもあった
一行は黙々と歩く。
完全な狼の姿となったフォーゼがくんくんと地面の匂いを嗅ぎながら、先頭を行く。
その後ろはカルニア。そして、それを守るようにベータが隣に歩いている。
エリアスはその後姿を凝視。
なにかカルニアが不審な動きをしたら即止められるようにだ。
そしてしんがりを務めるのはシャル。というか、とろとろ彷徨う魂を
捕まえまくっている。エリアスはこっちも見張るべきだと思われるのだが。

「むさい」
不意に、シャルがぽつりと呟いた。
「え? 私は子供だからむさくないですよー」
カルニアが言うが、シャルはぶんぶんと首を振り、むさいむさいと
こちらこそ子供のように駄々をこねる。
「だったら、お前が女っぽくすればいいだろう」
エリアスが無理を承知で言い出す。
「そりゃ、ボクが女装したら、この集団はちょっとは華々しくなるかもしれない。
でもボクがその華やかさを楽しめないんだよ!」
…シャルにとっては無理な話ではなかったようだ。
「やっぱりフェイテルサマは必要だったんだよ!」
「そんなくだらない理由で邪司を肯定するな!」
エリアスはそう言って怒ったが、ふいにフォーゼが言う。
「気がついていないのかい、エリアス君。シャル君がフェイテル様を復活させようと
 していることに」
「な、なんだと…?!」
エリアスは顔を青くして、シャルのいる後ろを振り向いた。
「本当なのか?」
「違う違うー。ちょっとした実験だよ。キニシナイキニシナイ」
むう。
エリアスは呟いて、シャルをじっと見つめる。
真実の瞳。
エリアスには偽りを破壊して、真実を見極めることができる…筈なのだ。
ちなみに、今まで成功したことはほとんどない。まだまだ未熟なのだ。
シャルはにこにこしている。
(この笑顔…怪しいな)
そう思ったが、確信が持てないので、口にすることはできなかったエリアス。
その脳裏にデスティニーの姿が浮かぶ。
(お前にならできる。偽りを破壊するのだ。
 それが真実の邪心と呼ばれる所以なのだから)
(できているか自信がないぞデスティニー…)
見つめながら、ため息が漏れる。
「じゃあさ! みんなで女装しようか!」
シャルは突拍子の無いことを言いながら、どん!と携帯型クローゼットを召喚した。
「大きいサイズから小さいサイズまであるよ!」
ばっとクローゼットを開けると、中には煌びやかなドレスが並んでいた。
絶句する一同。
「冗談は寝てから言おうか」
フォーゼが冷たく言った。
「おい、言うのか…」
「不正義様に下手なこというと、大変ですよ!」
「なんということだ…」
言葉は違うが、同じニュアンスの言葉が発せられる。
それを聞いたシャルはぷう、と頬を膨らませる。
「じゃあ…サンタクロース!」
しかし、シャルにしては、かなり真っ当な案が出てきた。
「ボクがサンタさんになって、プレゼントと雪を配るから、みんなはトナカイね!」
一同は顔を見合わせる。というのも、皆はクリスマスのことを
知らないからであった。
「え? クリスマスとかサンタクロースとか知らないの?」
きょとん、としたシャルは、その楽しさを語り始めた。


····· また12日にお会いしましょう!

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