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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

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○引き続きDarkPinkHorse!!でサマーバケーション中○
 1日ずれているのはキニシナイ!

「すてきだわ」
フェイテルがぽつりと呟く。
「とことん、フェイテル様は歌がお好きですね」
カルニアは言う。

飛び交う世界――まるで原子のコア・電子のように位置する
フェイテルたちの世界にはコアに相当するものも存在していた。
そこでただ立っているだけだったフェイテルに、そんな機能がついていることが
カルニアには驚きだった。
「歌というより音楽だわ。音楽が好き。聞いているとね、私に足りないたくさんの
ものたちと出会っている錯覚に陥るの。そこが素晴らしいと思っているわ」
「そんなものですか…」
フェイテルには、元の世界では強力すぎる力がある。というのに、必要ないからと
いう理由で欠けているものもたくさんあった。
あまりにも不自然な存在。
それを体験していないカルニアには、彼女の気持ちを想像しろというほうが
無理難題である。
「でもでも。フェイテルサマにそんな面があったって知ったとき、
ボクは嬉しかったよ! ボクとわかりあえるところがあるってことだもん」
シャルはそう言って、手持ちのコーヒーを全て飲み干した。
「嬉しかった? 何故?」
フェイテルがぽつりと呟く。
「もう! 理由はちゃんと言ったでしょー」
聞いてなかったの? ぷんすかぷん! と、シャルは頬を膨らませた。
それに対してフェイテルは首を振り、そうじゃなくてね、と続ける。
「私とわかりあえて、なにが嬉しいの?」
「………」
その疑問にシャルの目は点になった。
「フェ、フェイテルサマ…」
相手の名を呼んだものの、次の言葉が出てこない。
固まっていると、ひょいとフォーゼが食べ物をテーブルの上にドンと置いた。
「悲しい話は後回し。今はせっかくお邪魔しているのだから、
お食事会を楽しまなくちゃ」
その顔は満面の笑み。
「お前が食べたいだけじゃないのか?」
エリアスが淡々と突っ込んだ。
「いいじゃないか。サマーバケーションとして海辺で大々的にやっていると
いうのに、そこで関係ない湿っぽい話をしているのは、
ライブを準備した人に失礼だと思わないかい?」
否定はせず、フォーゼは笑いながら、食べ物を適当に分配し始めた。
「あ、すみません! 私がやりますよ~」
カルニアが慌てて小皿を取り、取り分けはじめる。
シャルは勝手に小皿を取り、トリのから揚げを独占した。
エリアスはそこからひとつ、トリのから揚げを取った。

ライブが終わり、歓声が上がる。
そして食事会にと変わった会場はとても賑やかなものだった。
「歩き回って、いいかしら?」
フェイテルは邪心たちに問う。
「ほえ!?」
またシャルの目が点になった。
「フェイテルサマが会場に興味を持っている! オドロキ!」
ははは。フォーゼが笑った。しかしエリアスは眉をひそめる。
「お前がひとりで歩くと何をしだすかわからない。俺も一緒に行く」
ははは。フォーゼがまた笑った。
「常識知らずさんがセットになったらカオスになるだけだよ。
そうだね、カルニア君が良かったら、案内してあげたらどう?」
「そこは立候補するところでしょうが! どうして私に振るんです!?」
カルニアは抗議の声。
「嫌なの?」
シャルのなんの他意も無さそうな問いに、カルニアはため息をついた。
「いいえ。私もフェイテル様の行動には興味がありますから――行きますよ」
「じゃあ決まり! 解散ッ!」
シャルが嬉しそうに言うと、食事の元へダッシュで走っていった。
それを呆れた視線で見送った一同も、やがて解散していった。

「ロランさーん!」
シャルは古い記憶の中に鮮明に残っていた時代の知り合いの姿を見つけると、
突撃をかました。
彼は人間のはずなので、自分がいかに時代を遡ってきてしまったのかを
実感する相手である。
しかしシャルが喚こうと叫ぼうと絡もうと冷静に対処する人でもある。
そういうところがシャルには無いので、実は憧れていたりなんかするのだった。
「こういうところにも来るんだね! 意外~。相変わらずカッコイイなぁ…って、
暑くないの?」
褒めてから黒コートの彼にぽつんと疑問を投げかける。
すると彼はちらりとシャルを見て、視線をすいと横にそらし、そして…

「あ、あそこにルチルさんがいらっしゃるじゃないですか!」
フェイテルと共に歩いているカルニアが彼女に手を振る。
料理を広げて友人であろう人々と、すでに食事会を楽しんでいるようである彼女は
カルニアに気がつくとおそらくいつものように笑顔を向けるであろう。
しかし失礼なフェイテルはライブの主役を目で追っているのである。

エリアスはぷらぷらと食事を探していた。
人見知りが激しい彼からは話しかけることは無いだろう。
黒尽くめで、近寄りがたい「固さ」のオーラを纏っている彼に、
話しかける猛者はいるのだろうか。

フォーゼは酒場のマスターと軽く話をしている。初対面なので失礼の無いように
話すのだろうが、酒が入ると話は別だ。きっと素の少々生意気な食いしん坊が
顔を出すに違いない。

---------------
その様子を、ベージュのマントで全身を隠した不審な影が見ていることなど、
誰も気がつかなかった。
マントの下に見えるのは、色白の肌と、死んだような青い瞳。

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····· 水着ネタはチキレ負け

○DarkPinkHorse!!でサマーバケーション中○

「さまーばけーしょん、って知ってる?」
シャルが言い出した。
「さあ?」
「知らん」
「知らないなぁ」
他使い魔3名は口々に答えた。フェイテルはその横で、すっかり居ついている
ライブ会場の歌声に耳を傾けている。
「夏だ! 海だ! ダンスだ! というお祭りだよ」
「あ、嘘邪霊発見。(ぱくっ)」
シャルの解説の後半、ダンスのところで嘘の小さな邪霊が飛び出した。
すかさずいただくカルニア。
「嘘じゃないもん! ボクは踊るんだい!」
嘘…というより思い込みで発言をしたらしい。そして本当にくるくると踊りだした。
「元気だな、お前は」
エリアスが呆れて言う。するとシャルは回転をやめ、つかつかとエリアスの元へ
やってくると、手を引いて無理やり立たせた。
「エリーも一緒に踊ろー」
くるくる。
シャルはエリアスを回し始めた。
「やめろ。無駄な行為だ」
しかし、シャルはどこ吹く風だ。
「ムダ? ムダじゃないよ。現に、舞術だって存在してるんだぞ!」
「それはそうだけどねえ」
フォーゼは諦めたかのように、首を左右に振りながら、
そう、首の体操のようにしながら言った。
「しかし賑やかですねぇ…」
ライブ会場は熱気に包まれている。カルニアはもらったジュースを飲みながら、
ライブの中心地の那智さんを見た。
フェイテルもライブ前にいただいたノンアルコールカクテルをいただいている。
(味覚もほとんどないのに…もったいない)
カルニアは思った。
すると、フェイテルがカルニアのほうを振り向き、にっこりと笑った。
「あー! ライブ聴いているふりして監視ですか! ずるいですよぅ!」
フェイテルは微笑んだままなので、カルニアは言葉を続ける。
「音楽がお好きなんですよね? でしたらちゃんと聴かないと失礼ですよ! 
あと、せっかくいただいたものなんですから、それもちゃんと味わってください!」
「好きで味覚音痴なわけではないのだけれど」
フェイテルは静かに言った。その声は沈んだものだったが、
あたりの賑やかな世界もあって、カルニアが言葉の裏を読むことは難しかった。
「精一杯、おいしくいただいているわ」
「おいしくいただいているよー!」
エリアスを回すのに飽きたのか、シャルがテーブルに乗せていた自分のグラスを
持ってやってきた。
「このコーヒー、おいしい! 名前は難しくてよくわかんないけど!」
「…苦そうですね」
シャルの笑顔からカルニアはそう判断した。
「飲み物がもらえるところがあるのかい? だったら僕も行きたいね。
エリアスの分も取ってこよう。なにか希望は?」
「ラーメン」
フォーゼが気を利かせて言ったのに、エリアスの答えはボケていた。
すぐさまカルニアが指摘する。
「ラーメンは飲み物ではありません!」
「…他に好き嫌いは無い。任せる」
エリアスはそう言うと、ぷいとカルニアから視線を外した。

「しかし…」
カルニアは呟く。その心の中には、先日消えてしまった騒がしい自分の配下のことが
浮かんでいた。
フェイテルはなにも言わない。カルニアの言うとおり、音楽に集中しているのか、
あえてなにも言わないのかは誰にもわからない。
(あの子がここに来ていたら大喜びだったんでしょうね。
一緒に歌ったかもしれない。…ああ、歌う才能はついてませんでしたね)
胸が痛む。一度滅びた者を蘇らせただけあって、配下たちにはそれなりに
愛情が湧いていたのだ。それに気付いて、彼はため息をつく。
「無くなってから…わかるものですね…」
「んー、なーにがー?」
独り言に対して、シャルが反応した。
「シャル。貴方は今まで普通にあったものが無くなって、それからその普通だった
ものがとても大切だったんだ、って思ったことはありますか?」
問いかけられた者はちびりちびりとコーヒーを飲みながら、うーんと声を上げた。
「ボクは基本的になんでも大切だと思ってるから、なかなかないなぁ」
「そうですか」
カルニアは下を向く。が、まだ考えていたシャルはグラスを持ったまま
動きを静止させて、ぽつんと呟いた。
「あ。――姉さん」
「え?」
初めて聞くその存在に、カルニアは唖然とした声しか出すことができなかった。
「シャル、お姉さんがいたんですか? いじめっ子の兄と弟しかいないんじゃ
なかったんですか?」
カルニアの言葉にシャルはくねくねと動く。
「ホラ。だって考えてもみなよ。兄は火。弟は土。じゃあ水は?」
「別の世界から勧誘してきたと聞きましたけど」
カルニアが生まれるより昔。一番古い世界にいた、力を持ちながら復讐のためだけに
育っていたという水の竜。なにもかもが終わったとき、
他の事はなにも知らないにも関わらず、人手不足だからと、
シャルが無理やり自分たちの仲間に加えた竜がいたのだった。
「最初っから欠けてるわけないじゃない? ボクたちはいつ生まれたのか
全然記憶にないけれど、属性と方角と季節を守護するために存在していたんだ。
そんな大事なものが、欠けているわけ無いじゃない?」
「それもそうですね…」
カルニアは頷く。手に持っていたトマトジュースはすでに無くなっており、
カランカランと氷が音を立てていた。

「ボクたちの世界は第4の世界と言われるけれど、世界の構成とか整備したのは
ボクたちなんだよ。つまり、世界があって、それを守護するために
やってきたわけじゃなくて、あの世界を作ったのがボクたちって言っても
過言じゃないんだー。それに関わっている水の竜は、ボクが勧誘したあの子だった
わけ。もっと昔はボクたち、違うところにいたんだ。それが――どこだったか
思い出せない。正直、姉さんがどういう人だったのかも思い出せない。
なんでなんだろう」
「ふむ…」
カルニアは呟く。
「そういう記憶の欠落は、人間でもよくあることですね。性質の悪いことに
人間の場合、欠落したところを適当に埋めて、それが真実なんだと
思ってしまうところがあったりするんですよ」
豆知識の披露。
「むー。全然答えになってないよー」
シャルはむくれる。
「では単刀直入に申し上げます。司がなんかしたんですよ。
どの司が、なぜそんなことをしたか、まではさすがにわかりませんが」
「え」
言葉通り、シャルの目が点になる。
「ですが、8割の確率でフェイテル様ですね。司戦争より前に貴方が生きていたと
いう可能性もあるので、断言はできませんけれど」
「司戦争?」
シャルが首を傾げた。
(しまった!)
カルニアは思う。知らないなら知らないほうがいい事実だからだ。
「忘れてください!」
「やだ」
あまり期待せず頼んでみたがやはりダメだった。
「どうしても?」
「ウン」
「フェイテル様にお仕置きされるかもしれませんよ」
「いい。興味シンシン!」
「私も巻き込まれるんですが」
「いいじゃない!」
「………」
カルニアがどうなろうと、シャルには全く関係がない。抑止力にならないことを
言わざるをえないくらい、カルニアは困っていた。
やっと諦めがついたか。カルニアが重い口を開く。
「簡単に言えば、フェイテル様が他の司をほぼ全滅させた、事件ですよ…」
「フェイテルサマが?!」
シャルは一歩後ずさって言った。大げさなポーズまでして。
「だから今は司が3人しかいないんです。どうしてそんなことになったのかまでは、
私も知りません。ただ、『世界に存在するものは決してフェイテル様には
勝てないという宿命』を使って、あの方が司を滅ぼしたというのを、
司戦争と私が勝手に名付けて呼んでいるんです」
「………」
シャルは沈黙するしかなかった。
その間、エリアスは大量に出てきた飲み物に集中しており、話を全く
聞いていなかった。フォーゼは耳がいいので聞こえていたが、
自分の身が危ないと思い、知らん振りをしていたのだった。

ライブは、賑やかに、激しく、美しく、続く――


····· いつの間にか

「それで、猫と合体☆しちゃった子はどうなったの? 
どうせフェイテルサマのことだから、知ってるんでしょ?」
シャルが言うと、フェイテルは立ち止まって、ちらとカルニアのほうを見た。
「……?」
カルニアには思い当たる事柄がない。不思議そうな視線を投げ返す。
「その世界から消えたわけでは無かったわ。ただ、生まれた地からは遠いところへ
飛んでいったの。融合のショックでね。そこから彼女は旅をして、
ある街にたどり着いたわ」
「遠いところとか、ある街とか…。名前はないの、名前」
ぷうと口を尖らせてシャルが言う。フェイテルはくすくすと笑った。
「大人の事情よ」
一言で片付ける。
「その街には、彼女と同じように、魔物と融合している人たちが多かったの。
その中でも自分は強く、仲良くやっているのだと知って、彼女は自信を持ったわ。
もちろん、魔物と融合しているだなんて危ないと考える人もいる。
それすら彼女は楽しんで、必ず名乗るときは融合体だと名乗ったわ」
「ふーん…」
納得したようなしていないような返答のシャル。
「そしてその街で、ある少年と出会うの。黒髪で青の瞳の子。
その子は自分の体験ではないことを、自分の体験だと思い込んでしまっていたの」
「まためんどくさいのが出てきたね」
シャルが言う。
「あら? その子の正体わかった?」
フェイテルは嬉しそうな声で言う。
「え? そ、そういうわけじゃないケド…」
気おされて、シャルは口ごもる。するとフェイテルは声のトーンを下げて、
あらそう。とだけ言った。
「住んでいる地区も違う。特に共通点もなし。だけど、なぜか戦いになると
顔を合わせる、そんな関係だったわ。少女は、これが腐れ縁と言うものですわねと
考えたみたい。少年は、ただの知り合いだと考えていたようだけれど」
「そして?」
カルニアが言う。
「フェイテル様はなにをおっしゃろうとしているのですか?」
「そんなに急かさないで頂戴。深い意味は無いわ。
ただ――宿命を縛られた者同士は引かれあう、というだけのこと。さあ」
フェイテルが立ち止まった。
そこには目立つ髪色の青年と少女。
「行く手を阻まれてしまったようね」
のほほん。
そうフェイテルは言うと近場の石に腰掛け、水晶を上に揚げた。
「みんな、お願いね?」
すると、光と共に、エリアスとフォーゼが現れた。
「…戦か」
「これまた強そうな。大丈夫なのかい?」
「大丈夫よ」
フェイテルはにっこり笑う。
「負けても困ることはないわ。急ぎの旅ではないのですもの。
それに頑張るのはみんなよ。みんな次第」
攻撃を受けるのは自分なのに、なんともひとごとである。
「それでいいのー?」
ジト目のシャル。
「痛くないんですか?」
痛くないんです。知らないカルニアは問う。
「また兵士か…数も多いし、これは…」
エリアスは嫌そうに眉をしかめた。
「今回は僕たちだけだしね。召喚しても厳しいんじゃないかな?」
フォーゼは前線に出ないので、少々ひとごとである。
「ほら。向こうが動いてくるわよ」
フェイテルに言われ、4人の邪心は構えた。

---------------
「いいのかよ、動いてさ」
茶色の髪の、悪人面の青年がにやりと笑う。
「………」
青い髪の、無表情の少年が彼のほうを振り返る。
「心配ってのをしてるんだよ。オレサマ、まさかアンタ様に助けられるとは
思ってなかったからよ」
「シンは、よかった…フォセイクも、問題なかった…」
ぼそり、と少年が呟く。
「だが、今は…」
「思いっきりあんにゃろの手の中だもんなァ?」
青年はニヤニヤしている。その姿は、透けて彼の背後が見えるほどである。
「だから、僕が動くしかない」
そう言うと、少年はベージュのマントをどこからか取り出すと羽織った。
「ほいほい。じゃ、オレサマも手伝いますよっと」
彼と同じように透き通ったナイフをぽいぽいっと放り投げると、
青年は少年の隣に並んだ。
「フェイテルを止める。今度こそ」
少年の声に力が入っているように聞こえ、青年は、お? と顔を覗き込んだ。
しかし少年の瞳に光は無かった。

····· 今日のランキング☆

遺跡外。
カルニアはいつもどおり、作成をすると言って、バザーのほうへ出かけていった。
シャルは溢れかえった荷物をなんとかしようと、やはりバザーへ出かけていった。
エリアスとフォーゼは、合同宿舎のある世界でお勤め中だ。
フェイテルは遺跡外ではいつもひとり。
辺りを歩いている人や、水晶玉を見て楽しんでいる。

しばらくしてからのことだ。
フェイテルの前を誰かがふわりと通り過ぎた。
「――!?」
そのとき水晶玉を見ていたフェイテルはばっと顔を上げる。
そして通った人物が去っていったであろう方向がどこか、懸命に探した。

遺跡外は忙しい。
多くの人々が行きかうため、自分が見た人物を探すのも一苦労だった。見つけられぬ
まま、フェイテルはその人物を追いかけるためにとうとう立ち上がった。
そして、頼りない足取りで遺跡外の集団の中に入っていく。
見えたのは、ベージュのマントを羽織った、青い髪の、青年というにはまだ若い子。
「デスティ――!」
愛称を呼んでしまってから気がつく。
いるはずがないのだ。彼は暗闇の中、一人で『環』を見ているのだ。
人形のように動かぬ瞳で、ただ腰掛けて環を見ているのだ。
だからこんなところにいるはずが無い。
フェイテルが二言目を発することは無かった。
そしてフェイテルの最初の声も、遺跡外のどよめきの中に消えた。

ひとつ、ため息をついて、水晶玉を見る。
するとシャルが映っていた。たくさんあると言っていた荷物が全部無くなっている。
声は聞こえないが、嬉しそうに手を振っている。
買い取った人に礼を言っているのかもしれない。
フェイテルは1度水晶玉を撫でた。
すると今度はカルニアが映る。
彼は遺跡外ではいつも、自分のできる作成活動を書き出し、
看板にして持っているのだが、とても暇そうである。
なにか呟いて、彼は立ち上がった。
フェイテルにはわかる。そろそろ二人とも集合場所に戻ってくるのだ、と。

「たっだいまー!」
「ただいま帰りました」
全く反対のテンション。シャルはニコニコだ。
「あのねフェイテルサマ。売るもの、全部売れたよー」
「そうなの。いい子」
にこり、とフェイテルはいつもの言葉をかける。
「いくらで売れたんですか?」
カルニアが疲れた表情のまま、シャルに問う。するとシャルはにこぱと笑って、
「50PS!」
と答えた。
瞬間、カルニアは先程まで持っていた看板を取り出してシャルをぶん殴った。
「痛い! なにすんだよ、もー!」
「出血サービスですか!」
カルニアは守銭奴。シャルは全くキニシナイ生き物。
「みんなが喜んでくれたからイイジャナイ!」
「危なっかしいったら…エプロンなんて、下手したら赤字ですよ」
そう言って、シャルから取引伝票を取りあげ、カルニアはチェックしながら
軽くお説教をする。
「それに、荷物が多くて動けないんだもん、確実に売らなくちゃ!」
「それもそうですけど…」
昔、カルニアが商売人をしていたときも、よく安値で販売していたのを思い出す。
「ですがね、安ければいいってものじゃないんですよ。市場が混乱するだけです。
受け売りですけどね」
しかし、商売上手の存在を思い出し、ぽつりと呟く。
「誰の?」
「オルドビスさんですよ」
刹那、オルドビス大好きっ子(オモチャ的な意味で)のシャルはひゃっほー! 
と叫んで回りはじめた。
「名前を出すだけで喜ばないでください。
貴方と違って、呼ばれたから出てくる人じゃないんですから」
「わかったよー」
くるくる回りながら、シャルは言う。
「今度からは周りに迷惑をかけないお値段で売るー」
「はい、お願いしますね。あと回るのもやめてくださいね」
すると、ぴたっとシャルは回るのをやめた。
「しかし、だいぶ時間が余ってしまいましたね。これからどうしましょう?」
「合同宿舎に戻ろうよー。ここ暑いから苦手だぁ」
先程まで元気に回っていたくせに、シャルは急にぐったりしてみせた。
「合同宿舎も暑いですよ。四季がある地域なんですから。
むしろこっちのほうが過ごしやすいんじゃないですか?」
「じゃあ、合同宿舎のある世界の雪の国に行くー」
そしてフェイテルのほうを見ながら、飛ばして! 飛ばして! とアピールした。
しかしフェイテルは笑顔のまま動かない。

「フェイテルサマぁ~」
シャルが情けない声を出すと、ようやく彼女は口を開いた。
「退屈なら、ひとつお話をしてあげるわ」
「フェイテルサマぁ~」
どうやら、フェイテルはシャルを別世界に帰したくないらしい。
こう言うと、彼女は勝手に話を始めた。

------------------
フェイテルたちと違う世界。
この島にも多くの異世界人がいるように、
フェイテルとつながりのない世界は多くある。
そんな世界での、お話。

それは、見た目だけならば小さな黒猫にしか見えなかった。
しかしその世界には数多くいる、ある種の魔物であった。
街中でゴロゴロ喉を鳴らし、寄ってきた者(主に子供)を一瞬で食い荒らす。
世間では、謎の行方不明事件とされていた。

ある日、ひとりでその猫に近づいていった少女がいた。
魔物は撫でられて、ゴロゴロ喉を鳴らした。
ひと気が無くなった。その次の瞬間。
魔物は少女を喰らい尽くした。

少女は突然のことでなにが起きたかわからなかった。
突然暗闇の中に放り込まれた、といった感じだったのだ。しかし、
時間が経つにつれて目が慣れてくると、たくさんの人が倒れているのがわかった。
起きている数少ない者達も、泣き叫びながら、あるいは怒りながら
脱出を試みているようだった。
しかしその少女はなにも感じなかった。
ただ、どうしてあの猫がこんなことをしたのだろうと、疑問に思うだけだった。
そして歩き始める。
彼女に気付いた者達が、どうして冷静でいられるのかと問う。
それは少女にもわからなかった。
ただ、あの猫を撫でたときの表情が偽物だと思えなかったのは確かだった。

歩いても、歩いても、周りに倒れている人の数は減らない。
今までの行方不明の人々はすべて猫の仕業だったのだと、少女は悟る。
しかし不思議なことがある。この倒れている人々は普通なのだ。
行方不明事件はかなり昔からぽつぽつと起きていると聞いていた。
だから生きているとしたら、どうやって命を繋いでいるのか。
死んでいるとしたら、なぜ土に還らないのか。
さすがに生死確認はしたくない、と少女は思った。

空間は無限に広がっているのではないかと思うほど、広かった。
しかし、だいぶ遠くまで歩いてきたのであろう、
倒れている人々はいなくなっていた。
それでも少女は歩き続ける。そして。

ふいに、行き止まりが現れた。目が暗闇に慣れていなければ、衝突するくらい、
ふいに行き止まりがあった。
そして、その手前には小さな台。その上には、あの猫。
「なーん」
猫が鳴いた。
少女はその猫を、抱きあげた。
すると猫は驚いた風に首を傾げ、もう一度、なあん、と鳴いた。
「わかりましたわ」
少女は言う。
「寂しかったのですね。だからたくさん人を集めていたのですね。
でもそれは間違った方法ですわ。皆は怖がってばかり」
「なーん…」
少女には、猫がしょんぼりしているように聞こえた。
「私がずっと一緒にいてあげますわ。
だから、ここに捕らえた人を解放してくれませんこと?」
『我と一緒にいるということは、普通の人間でなくなるということだ。
それでも構わぬのか』
思念が送られてきたのが少女にはわかった。
少女はにっこりと笑うと、その猫を撫でた。
「あなたは、大人の言う『魔物』のひとりなのでしょう? 大丈夫。
その魔物と共生している人もいますし――」
今度は猫を抱きしめる。
「私は、あなたが大好きですわ」

それから、行方不明になっていた人々が帰ってきた。
大騒ぎになり、再会を喜んで涙する人々もいた。
しかし、その集団の中に、あの少女は、いなかった。

------------------
「にゅー?」
シャルが鳴き声を発して首をかしげる。
「どうして少女は魔物が好きだったんだろう?」
「最もな疑問ね。でもその答えは簡単」
フェイテルは人差し指を立てて、にっこり笑った。
「魔物とその子は融合するのが宿命だったからよ」
「あなたの仕業ですかっ!」
カルニアが声を上げる。カルニアも猫の姿をした邪霊と融合した存在だったので、
他人事ではないと思っていたのだ。
「でも、貴方より、とても平和な融合でしょう?」
フェイテルの笑顔は崩れない。
カルニアは目を伏せた。
「その魔物を封印するために生まれた、なんて…
やっぱり、宿命を定めるって間違っていますよフェイテル様」
「仕方がないでしょう? 私はそれだけのために生まれてきたのだから」
彼女の声には迷いも怒りも無かった。
「でも、宿命を変えてしまいたい人はいるわ。それは」
「それは?」
きょとん、とシャルが尋ねる。
フェイテルはにっこりと笑って、人差し指を口元にあてた。
「秘密よ」
「にゅー!」
シャルはまた謎の鳴き声をあげて、じたばたした。
それを笑顔で見て、フェイテルはさっさとシャルを希望通りの場所へ飛ばした。


もちろん、宿命を変えてしまいたい対象者は、フェイテル。彼女自身。


····· 強化…なんだけど

「みなさん!」
息も絶え絶えに、ようやく当初の目的地――新しい魔法陣にたどり着いた
一行のなかで、一人元気なのはカルニアだ。
「フェイテル様はこの世界のルールにあわせて、
いろいろな技術の封印を解いていかれていますが!」
声が大きい。
シャルはそんなカルニアを見て、ぐたーっとしている。
彼は暑いのがあまりお好きではないのだ。
「ついに! ついに! 封印が私の制作能力に追いつきました!」
フェイテルはにこにこしている。いつもどおりだ。
「製作能力ね…どうして君は料理の封印を解いてもらわなかったんだい? 
僕はね、お腹がすいてもう動けないよ」
フォーゼもぐったりしている。彼の場合は、お腹がすいて動けないだけのようだが。
「昔、この島に来たときに、武器強化というものを見たのです。
ですが実際にその枠を取るのが大変でしてね…またそんな機会があったら、
私がそれを手に入れよう、そう思っていました」
そして遠い目をする。
「付加36…長かった…付加はかなりの方々が枠を使ってくださいましたが、
それでも長かったです」
「じゃあ、防具は?」
ころん、と寝返りをうつシャル。
「防具は、魔衣が目標でした。魔法を撃つ私にぴったりだと思いません?」
目がキラキラと輝くカルニア。
「そっち、先にあげちゃえばよかったのに。一斉に手に入っても訓練枠が
足りないだけじゃないかー」
「それにね。フェイテル様は器用の封印をせっせと解いていらしたけれど、
付加には全く関係ないし」
シャルとフォーゼが責め立てる。
カルニアはそうですねぇ、と首をかしげて、
「意見はどこかに隠れているハムスターに言ってください」
と言った。
フォーゼの目が光る。
「OK、食料、理解した」
するとぴゅーんと音がして、小さなハムスターが、魔法陣を使って逃げていった。
「追いかけるぞ!」
「らじゃ☆」

そんなわけで、次回から遺跡外。
荷物が少々減るまで、動けそうにありませんね。


····· メタメタ…orz

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