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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

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謁見の間にはあっさりと到着した。
事あるたびにそこへ向かう者が一緒なのだから当然なのだが。
しかし、そこには先客がいた。
緑のドレスを身にまとった、茶髪の女性。
「あ、リンがいる」
ロンドが言った。
エリアスは目を丸くして、先客を見ている。
そして、ぼそりと呟いた。
「女型邪心3人勢ぞろい、か…」
誰かに聞かせる気があるのかないのかわからない、相変わらず暗い一言である。
来客に気がついて、女王が視線をこちらに飛ばしてくる。
リン、と呼ばれた女性もこちらを振り向いた。
「こちらは待っているべきか?」
エリアスは女王に尋ねた。
ふるふるとリンが首を振る。
女王は静かに言った。
「来るといい。運命様に集まるよう指示があった」
「俺は下がったほうがいいな」
エリアスはロンドの肩をぽむと叩くと、行くようにジェスチャーをした。
「いても構わぬが」
女王…メリアルトが眉をひそめて言う。しかしエリアスは首を振った。
「俺はフェイテルに監視されている。あの方の考えていることについて、
これから話すのだろう? だからいないほうがいい」
そう言って一礼した。
「そうか。ロンドの案内、ご苦労であった」
メリアルトはそう言って、エリアスをねぎらった。
エリアスは軽くコクンと頷くと、きびすを返して謁見の間を出た。

「あ、お兄ちゃんー」
城前広場に戻ってくると、オーザインがぱあっと顔を明るくして寄ってきた。
エリアスはぽむとその頭に手を乗せる。
「お勤めご苦労様です、エリアス殿。謁見がはじまったのですね」
その言葉にエリアスはコクンと頷く。
「今は時間があることだし…荷物保管場にいても構わないか?」
「構いませんが…隊長殿とあろう方がいるにはふさわしくない、質素なものですよ」
その言葉にエリアスは、ふるふると首を振った。
「そんなことはない。お前が勤めているところをそんな風に言うものでもない」
え? という顔になった門番を尻目に、エリアスはオーザインの手を引き
荷物保管所に入っていった。

荷物保管所に、オーザインの本体の大剣が置かれていた。
その横に、弓が置かれていた。
「それは?」
オーザインに尋ねる。
「わかんないー。置いてあったよ?」
「ああ、そういうことか」
エリアスは納得したかのように頷く。
? となったちびっ子はエリアスの周りをくるくる回った。
「先客がいたんだ。その者の物だろう」
エリアスの言葉は難しい。ちびっ子は今度は目をくるくるさせた。
「せんきゃく?」
無垢な声。
エリアスは顔をしかめた。どう説明すればいいか、すぐに思いつかなかったからだ。
「ええと」
「そのだな」
「ええと」
ぼそり。ぼそり。
エリアスは間をあけまくりながら呟くのみ。
オーザインはエリアスのことを大人しく待っている。ただし、エリアスを見つめて、
目をきらきらさせながらだが。それがエリアスへのプレッシャーになり、
さらに言葉を遅くさせていることになど、ちびっ子にわかるはずがない。
「……謁見の間に、ロンド、お前の主人が行きたがっていた。それはわかるか?」
こくん。
小さな頭が頷く。
「えっけんのま、がなんだかはわからないけど、ますたーがそこに行きたいって
言っていたのはわかるよー」
そうか、エリアスは口の中で呟く。
「そこに、先に、人が来ていたんだ」
こくこく。頭が再び頷いた。
「それが、先客がいた、と言う」
「そうなんだー」
オーザインはニコニコ笑って、そう言った。
無事通じたことに、エリアスはほっとする。
「ねえ、ねえ、これってなんなの?」
今度は弓を触りながら、ちびっ子は尋ねる。
エリアスは弓の近くまで行くと、辺りにあった椅子をふたつ、手に持った。
そしてひょいとオーザインの元にひとつ置き、もうひとつも置くとそれに腰掛けた。
この行動の真意に気がついたちびっ子は、椅子に座る。
「それは、弓と言う。剣は手に持ってふるえばいいだろう? 剣だけでなく、
槌、槍、鞭…たいていはそういうものだ。だがこれは特殊なものでな…」
エリアスは腕を組む。どう説明したものかと悩んでいるのだ。オーザインはそれを
見て、真似をして腕を組んだ。
「この太いほう…ここを持つ。この細いほう…それを引く」
「?」
ちびっ子には全く理解できなかった。
そもそも、エリアス自身が理解しているかも怪しい。
「…忘れてくれ。言い直す」
エリアスはそう言って、一度立ち上がり、深く椅子に座りなおした。
「これを触っていいのなら、説明もしやすいのだがな。だが他人の物だし
 そうもいかんだろう…」
独り言。
しかしオーザインはそうは受け取らなかったので、
ちょこんと椅子から立ち上がると、弓をひょいと手に取った。
「触れたよー」
その行動にエリアスはびっくりだ。
感情表現が豊かな者なら、目が飛び出していただろう、というくらい驚いた。
「なんてことを! 人の物を勝手に触ってはいかん!」
怒った。するとちびっ子は明らかにしょんぼりして、
弓を元の場所にコトンと置くと、椅子に座って下を向いた。
ぐすっ…
音が聞こえる。
オーザインが泣いているのだ。
エリアスは自分の意思で泣いたことがない。
だが、ひとつの世界を任された存在。世界の者が泣いているところを見たことは
ある。だから泣く、ということがどういうことかは、不幸中の幸い、知っていた。
「……」
自分の言葉のせいで泣かせてしまった。
それは理解した。だがどうすればいいかわからない。
しばらく時間が流れた。

「ぐすっ…お兄ちゃん、怖いよう…」
オーザインがぽつりと呟いた。
「……す、すまん」
他にもなにか言うべきだろう。しかし言葉が出てこない。
そのときだ。
時空が歪んで、赤髪の少年がまた現れた。
「ホントですかぁ? 本当に自分が悪いと思っているのですかぁ?」
条件反射でエリアスは本体の剣を取り出すと、カルニアの分身を叩き斬った。
が、叩き斬ってから、今回は自分に非があることに気がついた。
聞こえるかはわからない。だが、エリアスはいつもとは違う、
はっきりとした声で言った。
「お前の言うとおりだった。カルニア、すまない」
すると声だけが返ってくる。
「わかればいいのですー」
また条件反射で斬られたらかなわない、そう思って姿を現さなかったなどと、
エリアスが気がつくはずは無かった。
ともあれ、オーザインのほうに向き直ると、またはっきりとした言葉で
エリアスは謝る。
「すまん、オーザイン。怒鳴ってしまった。言いすぎだった」
しかしだ。
すでにちびっ子の機嫌は直っていた。
原因は、エリアスがオーザインに謝るのを優先したため、
片付けていない魔剣である。
「きれいー」
目がきらきら。
エリアスはまた真っ赤になったが、自分が悪いことをしたという罪悪感も手伝って、
隠すことはせず、しっかりとそれを見せることにしたのだった。

刀身は黒。まるで宝石でできているかのように純粋な黒。
オーザインが手を伸ばすと、エリアスはその手を掴んだ。
「危険だ」
攻撃力は無限大の剣なのだ。いつも無限大なわけでは無いのだが。
もしそうだとしたら、カルニアを叩き斬る度に城が壊れている。
柄も黒。だが握る部分から上にかけて、古代文字が掘り込まれている。
自分のことなのに、エリアスはこの文字が読めない。
柄の中央には螺旋の模様が入っている。この意味も、エリアスは知らない。
「お兄ちゃんって、剣のこと、どう思っているの? 
なんでわからないのに放っているの?」
小首をかしげるオーザイン。
「お前も不思議な形の柄だが、どうしてそんな形か気にしたことはあるか?」
質問で返すエリアス。するとちびっ子はにこーっと笑った。
「お兄ちゃんの気持ち、わかった!」

そんなことを話していると、ぱたぱたぱた…と足音が聞こえてきた。
ロンドが戻ってきたのだ。
「ますたー!」
オーザインが嬉しそうに声をあげて、彼女の元に駆け寄っていく。
その様子を見ながら、エリアスは、自分の元になったとも言える者が動き出した
という事実に、複雑な思いを抱えていた。


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····· 暑いですね

「知ってたの?! この国の女王が邪心だって」
ロンドは大きな声を上げた。
「…声が大きい」
それに対して、ぼそりとつぶやくエリアス。
するとロンドははっとしたかのような目つきになり、口を塞いで辺りを見回した。
誰もいる様子は無い。
ほっとして、今度は胸を両手で押さえ、ロンドは大きく息を吐き出した。
「もともと…俺は仕事を求めて…この世界の4つの国を回った。温暖な気候と、
魔法の力に守られている南の国には、傭兵の需要は無かった。複雑な森林に守られ、
格闘を国技としている西の国では、剣士の俺の出番は無かった。
ここも…王が邪霊だったというのもある」
エリアスは一度言葉を切った。
「どうしたの?」
「いや…ただ、一度に話すことに慣れていなく…疲れた」
ロンドはそんなエリアスの返答を聞いて、クスクスと笑いを漏らした。
「なんだか、あなた、見た目で損しているわよ。
とても近寄りがたい雰囲気をかもし出しているのに。話してみると面白いのね」
そう言われ、エリアスは悲しそうな目をして、ロンドのほうを振り向いた。
「え?」
「まるで… フェイテルみたいなことを、言うんだな…」
突如、彼の上司の名が飛び出したので、ロンドは焦る。
「どういうこと? どうしてそんな悲しそうに…」
途中まで口に出したが、ずっとエリアスがフェイテルの名を呼び捨てで
呼んでいることと、フェイテルのしたこと、それに傷ついたデスティニーの意識が
彼なのだということを思い出し、言葉を中断した。
「フェ、フェイテル様ってそんなこと言うんだ~」
明らかに不自然な声色になってしまうロンド。だが、エリアスはそれを
指摘することもせず、気を悪くした様子も無く、またすたすたと歩き出す。
ロンドは立ち止まったままになってしまった。次になんと声をかければいいか
わからなかったからだ。
すると、トコトコとオーザインがロンドの手を離れ、エリアスの元へ向かう。
ゴリゴリゴリと、剣の鞘が廊下を削る。
「元気出して、ね?」
「…元気だぞ?」
エリアスはそう答え、再びオーザインの頭を撫でた。
それを見て、ロンドはほっとした。なぜかはわからないが、ほっとした。
「変なこと言ってごめんなさい。えっと、あと、東の国にも行ったの?」
そして話を元の路線に戻す。離れてしまった距離を縮めるため、小走りをしながら。
「ああ。だが、あそこは…極寒の地。たくさんの傭兵がいた。
そこに勤めることも考えたが…あそこには憎しみの邪霊がたくさん漂っていた…
憎しみが破壊の力を手に入れたら恐ろしいことになる。
そう思って、その地も去った。そして、最後に着いたのが、ここ、
砂漠に囲まれた北の国、ゲイル・ナーディアだったのだ」
ロンドはこの世界に転送されて、まっすぐに突入したゲイル・ナーディアの姿を
思い出す。
先が見えない砂漠、突如現れる巨大な森。それがゲイル・ナーディア。
「ここも、兵士がたくさんいるわよね」
「そうだ」
こくりとエリアスは頷く。
「この国には、7本の聖剣の伝説が――いや、実在しているから伝説とは言わんか。
7本の聖剣を守っている部隊が存在している。それが、1番隊から7番隊。
各、部隊長はその聖剣を預かり、守っているのだ」
そう言われて、ロンドは首をかしげた。
「あら?でもあなたは8番隊隊長だって言われていたような記憶があるんだけど…」
「そうだ」
再び、淡々とエリアスは頷く。
「この国について、部隊に志願した際、女王も俺の正体を見抜き、
この国の各地を偵察して回る8番隊を新設したのだ。
聖剣が無い部隊だ、一部の者は8番隊を末端と考え、
俺や、俺についてきてくれている傭兵たちを侮蔑の意味で8番隊と呼ぶ」
「ひどいのー」
エリアスと今度は手を繋いでいるオーザインが言う。
「あら、オーザイン。話についてきてるの?」
「うん。わかるよ」
「すごいじゃない」
ロンドが褒めると、にこーっと笑い、トトトとロンドの元へ戻ってきた。
「そんなことは、関係ないと俺は思っている。皆にも言っている。俺たちはただ、
国のために働く。それを誇りに思うようにと」
「真面目なのね…あたしだったら、怒って斬りかかってるわよ」
エリアスは首を振った。
「さすが憤怒の邪心…俺がそんなことをしたら…大変なことになるから、
自制、しているんだ」
「自制は自分に嘘をつくことですよー」
急に聞こえた声。
それに即座に反応して、背中の魔剣を引き抜くとエリアスは宙を斬った。
「痛い! 本当のことを言って差し上げただけなのに~」
赤毛の少年が現れ、倒れこむ。そして黒い煙を立てて消えた。
唖然とするロンド。
エリアスはパンパンと手を叩き、剣を鞘に収めようとして、眉をひそめた。
オーザインが目をきらっきらと輝かせ、剣を見ていたからだ。
「きれーい」
するとエリアスは真っ赤になって、鞘に早く収めようとし、失敗を繰り返した。
なんとか剣を収めた彼に、ロンドは問いかける。
「今の、なに?」
「偽りの邪心の分身だ。俺の天敵。消し飛ばしてもなんの問題も無い。
俺は、嘘が大嫌いだ。だから天敵。しかし嘘をつかねばならぬときがある。
そのときに俺をからかいに現れるのだ」
さらっと恐ろしいことを言ったエリアス。
ロンドはやっぱり破壊の邪心なのねと思うのだった。
「そろそろ…城に入るぞ。正体のこと、ばれぬよう、こんな感じの話はこれまでだ」
「正体を隠すって、みなさんに嘘をつくことですよ~」
以下省略。

城は純白の壁を使って造られた、木々よりやや低いしかし巨大なものだった。
エリアスは門番と話している。
ロンドは入れてもらえるか緊張して横で棒立ち。
オーザインは城が珍しいのか、きょろきょろと辺りを見回している。
(難航しているようね…。なにが原因かしら)
ロンドは会話に耳をすましてみる。
「だから、この剣は彼女たちにとってとても大切なものなんだ。
どうしても置いていかなくては駄目か?」
「はい、申し訳ありませんが。女王陛下の身の安全のためには」
「むう…」
オーザインの持つ剣、正確に言えばオーザインそのものの持ちこみについて
もめているようだった。
(エリアス…自分と同じだから、
オーザインと剣を引き離すことが辛いってわかるんだわ。……優しいんだ)
ロンドとしても、剣を手放すことは不安である。
口下手だというエリアスにとってこの交渉は大変だろうが、
自分が口を出すのもおかしな話なので黙っているしかなかった。
すると、オーザインがトコトコとエリアスのところへ向かう。
「いいよ。僕、ここで待ってる」
くいくい、とエリアスの服のすそをひっぱり、そう言った。
「お前…」
「お兄さん。剣と僕とここで待っているのはだめ?」
門番にそう言って小首をかしげる。
「む…それは問題ありません」
子供にも敬語の門番。するとオーザインはロンドのほうを振り返り、
にこーっと笑った。
「僕、待ってる。待ってるからますたー、行ってきて」
ロンドは驚く。ちびっ子が状況を理解し、どうすればいいかを思いついたことにだ。
「…すまないな」
エリアスは門番に言ったのか、オーザインに言ったのか不明だが、ぼそりと呟いた。
「ではその子をよろしく頼む」
そして会釈する。門番も会釈し返した。
「さあ、行こう、ロンド」
淡々とした口調。
「ちょ、ちょっと待って」
ロンドは自分だけ黙っていたことに気がついて、慌ててオーザインの元に向かう。
そして、彼の両手をつかむと、腰を下ろし、視線を合わせる。
「ありがとね。できるだけ早く帰ってくるわ」
「お仕事がんばってね、ますたー」
そしてまたちびっ子は、にこにこと笑うのだった。
いざ、目指すは謁見の間。

---------------
その頃。合同宿舎は大変なことになっていた。
「やー! やー! やー! やー!」
以下省略。
合同宿舎の主、オルドビスの妹、プラストス。
彼女がずっと泣き声を上げているのだ。カルニアがなんとかなだめようと、
永遠のお別れと決まったわけではないんですよ、などと言っているが、
聞こえていないのか、彼女は泣き叫び続ける。
「やだよう…ガンマ…」
ガンマに異常に懐いていた彼女にとって、彼の消滅は耐え切れないものだった。
「いいですか、プラストスさん。ガンマは言っていました。
私が彼を再生成したときに、同じ魂は宿る可能性は高いと」
そう言ったとき、テレビから非情な言葉が聞こえてきた。
「それは無いわ」
フェイテルだ。
「私の攻撃で、彼は魂ごと粉々になったでしょうね」
「やー!」
どんよりと絶望を抱え、プラストスは泣き叫ぶ。
それを背後からシャルが抱きしめた。
すると、彼女の絶望はあっという間に彼に吸収され、
プラストスは泣き疲れていたのか、眠ってしまった。
「応急処置完了。それにしてもフェイテルサマ、やってることが鬼畜。
こんな小さな子に意地悪して楽しいの?」
「意地悪ではないわ。ただ、事実を言っただけ」
それに対してシャルはため息をつく。
「もう… フェイテルサマの価値観、わかんない」
「私の感想を言わせて頂くと、ただ、彼女を刺激したかっただけに
見えるのですけれどね。フェイテル様にはそういうところが見受けられます」
カルニアが淡々と言う。いつもの笑顔もエセ敬語も無い。
「貴方達は邪心でしょう? そうとは思えない優しさね。
人々の負の感情を刺激し、それを吸収しないと生きていけない存在から
非難の言葉をもらうなんて、私、驚いたわ」
「確かにそういう面もあります。ですが、同時に正の感情も持っている。
だから邪霊ではなく邪心なんですよ。それを知らぬフェイテル様でもあるまいに」
カルニアは即座に反論した。
いつもは「まったくもう~」と笑って済ませるところを、である。
「あら。カルニア。もしかして怒っているのかしら。そうね。
自分の子供が消されたも同然だもの。不思議なことではないわ」
シャルはカルニアを見た。ちらほらと怒りの邪霊が漂っている。
「いっただき♪」
そしてそれを食べる。
「ちょっと、人が真剣になっているときに!」
カルニアは不満をあらわにするが、シャルはどこ吹く風。さらにカルニアが
言葉をかけようと彼に近づいたとき、すれ違い様にそっとシャルは言った。
(気持ちはわかる気がするよ。でも落ち着いて)
沈黙がその場を支配した。
「そうですね。そうでした。私はフェイテル様の配下。貴方に呼ばれたら戦い、
製作を行う。それを変えることはできません」
「あら。それでいいの?」
フェイテルは満面の笑みで尋ねてきた。
腹の底にあるドロドロしたものをカルニアは隠し、にっこりと笑って返した。
「はい。魔力がいただけるのなら♪」
「まあ。いい子」
「そろそろ行く時間かな? ちょっとこの子、部屋に置いてくる」
落ち着いたのを確認したシャルはプラストスを担いで、合同宿舎の3階にふらりと
飛んでいった。
ガンマと生活した思い出がたくさんある部屋に、
彼女を置いていくのに不安が無いわけではなかったが。


····· もぐもぐ。

トパーズ 分身 覚えた
でも すぐに やられてしまう
どっちがどっちか わからない ?
だいじょうぶ
僕が 乗っているほうが トパーズ だよ
ある世界の合同宿舎。そこからずっと北上すると、大きな砂漠地帯が広がっている。
その中に悠々とそびえ立つ城があった。
不思議なことに、その周りは豊かな緑と泉があるのだ。
それが、ゲイル・ナーディアである。

「ちょっと! ちょっと放してよ!」
城の門のところで、兵士達に捕らえられている少女がいる。
「…なんの、騒ぎだ?」
「あ、8番隊隊長」
真っ黒の青年――エリアスが騒ぎに気付いて、城から出てきた。
彼は、フェイテルに召喚されるだけでなく、自分の世界を守るだけでなく、
この城に勤めているのである。
シャルは邪心教を立ち上げ、その寄付金+教団関係品代で金を作っている。
カルニアはまさに様々なものを製作し、生活している
(主にエレアのグッツだったりする)。
フォーゼは王様なので全く困らない。
そんなことができないエリアスは、傭兵をやろうとしたのだが、
ゲイル・ナーディアの女王に気に入られ、部隊の隊長に抜擢されたのだ。
その話は、また別の機会に語るとする。

「8番隊隊長。侵入者です」
端的に告げられる言葉。エリアスは眉をひそめた。
「ここは入り口ではないか。普通の謁見者ではないのか?」
そう言いながらエリアスは何気なく少女を見て、ぎょっとした。
(この娘は…!?)
「いいえ。壁をよじ登っているところを発見。捕獲しました」
「そ、そうか…」
明らかに動揺するエリアス。
「どうされました? 8番隊隊長」
「…彼女は……俺の父親の知り合いだ。不法侵入未遂もあわせて注意しておくので、
身柄を渡してもらっても構わないか?」
エリアスはそう言うと、頭を下げた。頼む、と。
「……8番隊隊長がおっしゃるなら、わかりました」
「ありがとう」
そして、少女の手を取り、城壁の中にある8番隊の兵舎に向かう。

赤茶色の髪の少女は冒険者のような格好をしていた。髪をまとめる帽子、
革製の鎧とブーツ、そして背中には巨大な漆黒の剣。
ちりちりと、エリアスの背中の剣が騒ぎ出す。
それに少女も気がついたのだろう。
「あの…さっきはありがとう。でも貴方、いったい何者? 
あたしの剣が反応しているわ。この剣はね――」
「その話はここではできない。俺たちの使っている部屋で説明をするから
少し黙っていてくれ」
少女からすれば、ぶっきらぼうに聞こえたかもしれない。しかしそれ以上の言葉を
紡げないエリアスは特になにも思わず、
ただ、城壁内の通路を歩いているだけだった。

「さて」
8番隊の兵舎にたどり着き、部屋のドアを開ける。
中には誰もいなかった。
「案の定…皆出ているな」
エリアスは呟きながら少女を部屋に招きいれ、さらに奥のドアをあけた。
「ここは会議室だ。ここでゆっくり話そう。歓迎する、ロンド=ファイナルロード」
「へ?」
少女――ロンドは驚きで妙な声を出した。
「どうして、あたしの名を? …しかもよりによって、そっちを」
しばしエリアスは沈黙した。その間に身振り手振りでロンドを会議室へ案内し、
席につくように指示した。
そうされている間も、ロンドは不思議に思い、彼の顔を覗き込む。
やや長い沈黙の後、彼は口を開いた。
「あの方に聞いたんだ」
するとロンドの目が大きく見開かれる。
「あの方って、もしかして、デスティニー様?」
こくり。エリアスが頷いた。
「どうして? あの方はほとんど言葉を語らないと言うのに」
「城の前で言っただろう。お前は父親の知り合いだ、と」
「う…そ…」
エリアスの言葉の意味を汲み取ったロンドは絶句した。
つまりその『デスティニー様』がエリアスの父親だということだ。
「嘘は好かん」
ぷい、とそっぽを向くエリアス。
するとロンドは目をきらきらとさせて
「教えて! どういうこと!? 司に子供がいるなんて、そんなこと考えづらいわ」
興味しんしんでテーブルに身を乗り出した。
「その前に…お前のことを教えてくれ。あの方に繋がる邪心のひとり、
憤怒と誠意の邪心、最終帝。それしか俺は知らないのだ」
それからバツの悪そうに頭をかきながら、
「それから、城に用があるのなら、正面から城に入ってくれ。城壁を登っていたら
不法侵入者と思われても仕方がないだろう」
と付け足した。
ロンドは固まる。
「あは、ははっ、そうよね。でもたかが冒険者が女王に謁見を求めても
受け入れられないと思ったのよ」
エリアスは沈黙した。
なんの用事があったのかはだいたい想像がつく。
「だからといって不法侵入すればすぐに捕まる。ここは兵がとても多い城だ。
8部隊も囲っている」
まあ最も、第8部隊はおまけのようなものだが、と付け足した。
「8部隊? 普通の城はもっともっといるわよ?」
「いや、この世界ではとても珍しいことだ。仮初めの平和がこの世界を包んでいる
からな。だが…」
エリアスは遠い目をして言った。
「あの方がフェイテルと決着をつける気でいるのがわかった。そのときは、
この世界は混乱に陥るのだろうな…」
思いがけない言葉にロンドの声が大きくなる。
「デスティニー様とフェイテル様が? あのお二人、そんなに仲が悪いの?」
エリアスは頷いた。
「もともと司という存在はたくさんいた。しかしフェイテルがそれを全て滅ぼした。
あの方はそれは自分の責任だと思い込んでいる。だから、いつかフェイテルを倒し、
自分も消えようと考えているんだ」
ロンドは立ち上がっていたのだが、急に力が抜けるように座り込んだ。
ぼうっとした顔をしている。
「そんなことが…。デスティニー様はそんなこと、全くあたし達に話したことが
無かったわ。貴方、相当信頼されているのね」
エリアスはふるふると首を振る。
「違う。あの方は、フェイテルに司を全て消されたのは、
自分が感情的になってしまったからと考えた。だから感情を捨てた。
その感情は他の人間と同じように、何度も何度も人生を繰り返し――
そして、今は俺になっただけなんだ」
「だから…デスティニー様の、子供…」
「つまり、デスティニー様の記憶をちょっと知ってるんだね」
子供の声がした。
エリアスは驚いて視線を上に上げる。
いつの間にか、ロンドの横に小さな少年が現れていた。
「こら、オーザイン!」
ロンドが叱り付ける。エリアスはロンドの周りをくるりと見回して、言った。
「お前の剣はその少年になるのか。俺は、剣そのものだからな。
他人のような気がしない」
ロンドの背負っていた大剣が無くなって少年の背中に移動していたため、
そう判断したのだ。ただ、少年の背には大きすぎて、柄が地面についている。
すると、オーザインと呼ばれた少年は顔をぱあっと明るくして、
トコトコとエリアスのところへやってきた。
「僕と一緒なの? ねぇ。剣見せてー!」
「駄目だ」
即答。するとオーザインの頬がぷうと膨れた。
「どうして?」
エリアスは困ったような、ジトッとしたような顔になった。
「……恥ずかしい」
「そうなのかー」
そう言うと、今度は座っているエリアスの脚を上り始めた。
大剣がこれでもかというくらい邪魔している。
「ん…?」
そして彼のふとももを制圧する。キャッキャッキャとオーザインは嬉しそうに
笑い声を上げた。
「ごめんなさい。その子、あたしもどう扱っていいのか
いまいちわかっていなくて…」
ロンドが謝る。エリアスは首を振ると
「ここにいてもあまり困らないからいい」
と気を使ってか、言った。それからなにも言わず、自分の視野内に入る
大剣を傾けて、ロンドと目が合うようにする。
「好きー」
しかし、ふとももの上で方向転換したちびっ子はエリアスに抱きつく。
そんなことをされたことがないエリアスは、困ったように眉をひそめた。
「ほら…」
ロンドはため息をついた。
「………」
エリアスはしばし沈黙した。が、ふと顔を上げて、言った。
「話すことが多すぎて、なにか肝心なことを言いそびれているような気がする。
なんだろう」
「貴方…自分は剣だって言ったわね。人間に生まれ変わっていたんじゃないの、
デスティニー様の『感情』、いえ『心』って言ったほうがよさそうな、それは」
エリアスは首をかしげた。そして、再び沈黙する。
沈黙をやめ、エリアスはまたボソボソと話し始めたのは
1分くらい経ってからであろうか。
「このあたりは話すと脱線するだけだから簡潔に言う。
俺は邪心だ。人間に生まれ変わった、邪心なんだ」
ロンドの目が点になる。
「じゃあ、もしかして、フェイテル様の配下?」
「配下という言葉が適切かはわからんが、フェイテルに使われる立場なのは
確かだな」
エリアスは静かに言った。
「複雑な立場なのね。あたしはただ、デスティニー様にこの世界に呼ばれて、
他の二人と連絡をとるように言われただけなのに」

フェイテルが自由に呼べる邪心はもともと3人。
シャル、カルニア、エリアス。
最近フォーゼが加わったが、基本的には3人が直接彼女を守る
使命を持っているのである。
それと同じように、デスティニーが自由に呼べる邪心も3人。
そのひとりが、今、エリアスの前にいるロンドという少女のようだ。

「そうか…いよいよ…本当に…」
エリアスは視線を落とした。すると見事にオーザインと目が合う。
「どうしてそんなに悲しそうな顔をするの?」
ぺたぺたと手を伸ばし、エリアスの頬を触る。彼なりに慰めているのだろう。
エリアスはそんなちびっ子を撫でた。今までしたこともないしぐさが
自然に出てきたことにエリアスは驚く。
「?」
驚いた顔を目撃したオーザインは首をかしげた。
エリアスはオーザインを抱えると、下に下ろし、立ち上がった。
「では、ロンド。ここに来たのは女王と会うためだろう? 
案内するからついて来い」
「え? ええ…」
ロンドは面食らう。なぜそこまでわかったのだろうか、と。
しかしエリアスの難しい立場はなんとなくだが理解できた。
彼についていくことに反対する理由など無い。
続いて立ち上がると、オーザインを捕まえて、手を繋いだ。

「では行こう。冷酷と秩序の邪心にして、この国の女王、メリアルトの元へ」

····· 久々の容量オーバー

音を立てて城が崩れていく
自分を維持していた存在が消え、自分も同時に消えることを覚悟していた
しかし、そうはならなかった
なぜなら、その存在の上位の存在が、
オレたちに直接裁きを下すためにオレを維持したと言う
今回の一件は世界のためにやったと見せかけて、
ただ単に混乱を見て楽しみたかったのだと言った
ふざけるな
オレたちは貴様の玩具じゃねぇ

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遺跡外である。
カルニアはいつものように、生産の技術を買ってくれる人を探しに出かけた。
シャルは買出し担当だが、今回は荷物が多いので、それを減らしに行っている。
フェイテルはひとりでぽつんとしていた。

そこに忍び寄る影。
フェイテルは下ろしていた腕を持ち上げ、水晶を抱えなおした。
「なにをするつもりかしら? ――トパーズ・ラシダス」
ぴたり、と影の進行が止まる。
「ちっ。やっぱり気がついてやがったか。億の時が流れたんだ、
ちっぽけな人間のことなんて忘れてくれていてよかったんだがなぁ」
そういって、気配を消すのをやめ、乱暴にザッザッザッと彼は歩いてきた。
ピンクの髪をさらりと流した髪型の男――ガンマだ。
「いつから気がついていた?」
どかっとフェイテルの横に座り、手に持っていたナイフで自分の指をツンツンと
いじりながら彼は問う。
「そうね」
フェイテルはいつもどおりの笑顔。
「あなたが邪霊にもかかわらず、私に呼び出されたいと言い出した頃から、
なにかあるわと思っていたわ」
「はーん」
生返事。今度はナイフをくるくると回している。
「あまりに昔のことだったから、思い出すのに苦労したわ。
オルドビス君、だったかしら。あの子の家にあなたがいるとき、
仲良くしている生き物を見ても、すぐに、私からのプレゼントを
激しく憎悪していた人間がいたことを思い出せなかったもの」

フェイテルからのプレゼント。
世界に住むあらゆる者の願いを叶える存在。
ただし、その存在が生きるためには、人々の苦しみが必要だった、哀れな存在。

「そのまま忘れてくれていていいのによぉ。なにも知らないまま、
くたばってくれたって、オレサマは一向に構わねぇんだから」

そして世界は、願いを叶える存在の奪い合いに発展、混乱に陥り、
それは、最終的に破壊された。
その後、現れた願いを叶える存在の「創造主」。
それが、フェイテルだった。

「お前にとっちゃ、オレサマなんてちっぽけな存在だろ? 
わざわざ覚えてくれていてありがとよ、フルネームだなんてご丁寧に、まあ」
次に彼の口から出たのは皮肉。
フェイテルはさらに瞳をきつく閉じ微笑むと、水晶を撫でた。
「貴方の宿命、見せてもらったわ。罪を重ね、その罰として魂が消えることは
許されず、そして、また罪を重ね続ける…」
その言葉にガンマは、なるほどなぁ、と言う。
「この島では、お前の能力、ほぼ無意味になっていると知ったから、
利用されることでお前の傍に接近しようとしていたが…
もともとお前の管理下なら宿命はちゃんと見えるのか」
ナイフが宙を舞った。ぽい、ぽいと何度か投げると、
ガンマはそれをキャッチして息を吐き出した。
「つーことは、アレか? 『あの世界』の存在である以上、オレサマは
『お前に勝つことができない宿命』の下にいる、というのも変わりねぇのか」
フェイテルは下を向いているガンマの視野内に顔を入れた。
笑顔のままである。
「そのとおりよ。
本当はね、私に従いたいと思っている邪心なんていないの。
シャルは縛られていることを極端に嫌っている。
カルニアは自分が頂点に立っていないと気がすまない子。
エリアスは私のことを潜在的に憎んでいる。
フォーゼだって、きっと」
「はーん」
ガンマはまた生返事をした。
「意外だぜ。お前からそんなネガティブな考えが出てくるなんてな。
見た感じ、あいつら楽しそうに敵と遊んでるじゃねぇか」
「邪心のお腹の中なんてそんなものよ。
ただ私が怖くて表面上は付き合っているだけ」
ガンマは手に持つナイフの量を増やしていた。
「そんならよ、やめちまえよ、宿命の司なんて。他の司がいなくなっても
世界は回り続けてる。だったらお前がやめたところでなんの問題も無くね?」
フェイテルは目を伏せた。
「それは嫌よ。司をやめるということは、死ぬということですもの」
「はん。結局死ぬのが怖いのか」
言うがいなや、ガンマは大量のナイフをフェイテルに投げつける。
避けることができないフェイテルの頬を、体を、ナイフが通過する。
そして、数本、彼女の体に突き刺さった。
「っ!?」
フェイテルは痛みを感じない。しかし自分の体にナイフが刺さっている様子に
驚きを隠さなかった。
「下克上だ。お前の司としての決まりごとが優先されるか、
それともこの島での無力になった決まりごとが優先されるか、試してやるよ」
まだ手に持っていたナイフをぺろりとなめると、ガンマは跳ぶ。
「やめなさい、ガンマ!!」
そのとき、たまたま帰ってきたカルニアの悲鳴にも似た叫びが聞こえた。
刹那、ガンマの体は大量の光の槍に貫かれていた。
「こ、れ、は…」
槍の勢いに押され、ガンマは遠くへ飛んでいく。
カルニアがそれを追い、ガンマの元へ駆け寄った。
「緊急事態です。アレを使っても文句は言わないでくださいよ」
そう言いながら、カルニアは光の槍を引き抜こうとする。
「…くっ……」
「おい、お、お前…」
ジュワっという音がした。よく見なくても、光の槍を持つカルニアの手が
少しづつ消えていっている。ガンマはその事実に狼狽した。
「……なんで、オレのために。お前、自分が第一なんだろ? 
オレたちのことなんて緊急用食料としか思ってねーくせに」
「五月蝿い、ですね。あなたは、私の、息子、なんですよ」
息も絶え絶えにカルニアは言う。その言葉にガンマは絶句した。
(マジかよ…)
それをにこにこと見守るフェイテル。
「そうよ。カルニアは本当は優しいのだから。いい子」
カランカラン…
音を立てて、フェイテルに刺さっていたナイフが地に落ちる。
確かに刺さっていたはずなのに、傷跡は全く無かった。
「こんなに力を入れているのに! どうして抜けないんでしょうか…! 
ごめんなさい、ガンマ。今の私は本来の姿に戻れるほどの魔力を
持っていないんです。だからこの姿のままなんとかするしか、ないのです…」
ガンマは目を閉じた。
徐々に自分の体から力が抜けていくのがわかる。
これで4度目か。そう考えた。
1回目は、村で殺されたとき。
2回目は、自分の命を支えていた存在が消えたとき。
3回目は、化け物と化して戦った結果、敗北したとき…
「もういいんだぜ」
初めて、カルニアに優しい声をかけた気がする。
その証拠にカルニアが息を呑む音が聞こえた。
「お前が消えたら、オレたちの世界の奴らが困るじゃねーか。
…ああ、あんな連中どうでもいいんだっけか? ひゃはははは」
普段どおりにしゃべったつもりだった。しかし、なにか冷たいものが顔に当たる。
「?」
ガンマはカルニアを見る。――カルニアは、泣いていた。
「なに泣いてるんだよ。散々オレサマをこき使っておいてよ」
ぐすっぐすっとしゃくりあげるカルニア。
「それとこれとでは話が違います。嫌です。私は、貴方を助けますよ」
そう言って、また槍を持つ手に力を入れたのだろう。
ジュワジュワと音を立てて、彼の手から煙が出る。
「優しいカルニア。おやめなさい。この槍は宿命の槍。私に反逆したものを貫く物。
抜くのは不可能よ」
「……」
カルニアは鞄から赤いポーションの入ったビンを取り出した。
「とりあえずこれを飲んでください。貴方がこれを嫌っているのは知っています。
でも、貴方を存命させるにはこれしかないんです」
ガンマはにやり、と笑った。
いつもと違うカルニアの姿が、面白く感じられたのだ。
そして、言う。
「飲まねぇよ。飲んだところで、槍が刺さったままでも平気になるくらいだろ? 
これはオレサマの勝手な行動の結果だ。自業自得なんだよ」
カルニアはぶんぶんと首を振る。
「でも、なにもしないまま、貴方を死なせるのは嫌です!」
「ハハハッ、だったらあの時のように、また作り直してくれよ。
そのほうがきっとカンタンだぜ?」
カルニアは涙を拭うこともせず、ガンマを見つめた。
「そのときには、貴方とは違うガンマができてしまうかもしれないんですよ」
「ハッ」
ガンマは短く笑った。
「そんときはそんとき。お前は知らないと思うけど、オレサマの魂は、お前より
ずーっと長生きなんだぜ? やっと眠りにつけて万々歳だ」
「そんな…」
ガンマはゆっくり手を伸ばして、光の槍からカルニアの手を振り払った。
「じゃあな。また縁があったら、また会おうぜ」
そう言うと、ガンマはゆっくり目を閉じる。
光の槍が光を増幅させ、ガンマの体を包み込んだ。
そして、彼が消えるのに、そんなに時間はかからなかった。

「……」
呆然とカルニアは立ち尽くしていた。
「私に逆らっても勝てない。その宿命を理解していたのに、
飛び掛ってくるなんて、愚かな子」
フェイテルが静かに言う。
「カルニア? あなたはどうするの?」
問われた男は目を閉じた。ここで攻撃したところで、なにも変わりはしないのだ。
「――私は貴方の配下です。貴方に従います」
静かに、平然と言ったつもりだった。
しかし、瞳から零れ落ちた涙は、偽りでもなんでもなかった。


····· あーあ…

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