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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

カテゴリー「定期日誌」の記事一覧
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■第一回 文章コミュイベント■
御題「木枯らし」 キーワード「底冷え」「夜」「サーフィン」
-------------
「ひーまー!」
突然シャルが言い出した。
今日はフェイテルが遺跡の外で休憩している日である。
場合によっては作成の依頼のために飛び回ることもあるが、
始めたばかりで(能力不足で)やることが無いのだ。
「カルニアはいいよね~。能力が期待できないアイテムで練習をしなさいって
お仕事もらえるんだもん。ボクは戦闘のときしかお声がかからないんだよ?」
暖炉の前で石英を加工していたカルニアは顔を上げて言った。
笑顔に見えるが、目が笑っていない。
「じゃあ、いつもみたいに無意味に踊っていたらいかがです? 
あるいはオルドビスさんで遊んでみるとか」
「今日のカルニアはきついな~。なに? なんか気分の悪いことでもあったの?」
シャルはテーブルに肘をつき、カルニアに絡む。
そのカルニアは今度は布団を取り出して、羽織った。そして作業を続けている。
「今日、ではなく、当分機嫌は悪いですよ? お忘れですか? 
私、冬はだいっ嫌いなんです。魔力が勝手に外に出て行ってしまいますから。
冷たい風が憎いです。特に今日は『底冷え』が酷くて、手が悴んで(かじかんで)
うまく作成ができないんですよ」
本来なら作成は遺跡外でやるべきことである。
それをフェイテルに無理を言って合同宿舎でやっているのであった。
「ふーん。合同宿舎でやるより、遺跡でやったほうが寒くないかもよ。
ホラ、この世界の冬将軍はキミの目の前にいるわけだしー」
シャルはもともとは天を司る竜だった。
そのため冬を呼ぶのも彼のお仕事に入っている。
「そういえばそうでしたね。なぜ今回は冬の仕事してないんですか?」
機嫌が悪かったカルニアがころっと表情を変える。
そこには善意も悪意もないようだ。
いつも通りならば、シャルは冬の間、合同宿舎にいない。
冬将軍を行うため空を駆け、吹雪を吹かせるのだ。
「んー? それはアレだよ。フェイテル様に呼ばれる可能性があるからさ。
クリスマスに雪を降らせるくらいにしようかなーって思ってるんだ。
あとはここにいる間に木枯らし吹かせるくらい?」
「そうですか。雪が降らないのはおかしいなと思っていましたが、しっかり『夜』は
木枯らし吹いてますしね。夜は呼ばれる確率も低いから働いているんですね」
適当に感想を言うとカルニアは自分の仕事に戻る。
それを見てシャルはまた不満げに、他の住民たちを見やった。
エリアスは剣を磨いている。先日つくってもらったもので、特別な力は無いが、
作ってもらったこと自体が嬉しかったらしく、ずっと手入れをしている。
フェイテルに言わせれば、もう少し待ってから作ってもらえばよかったですわ、
というブツなのだが。
ガンマはソファーに寝転んで鉱石の本をアイマスク代わりにして眠っているようだ。
オルドビスは…シャルと同じように暇そうにしていた。
彼は自分の力を誇示させるのが好きなのだが、人間相手には強すぎて、
しかし邪心相手には力不足。高位の邪霊と戦って勝てる、くらいの強さなのだが
そんなクラスはほぼいないため、よく欲求不満になっている。
その様子を見てシャルは考えた。
オルドビスに遊んでもらおうと。
しかし、簡単な誘いには彼は乗らない。
彼が面白そうと思わないと相手にしてくれないのだ。
「ふーむ…」
オルドビスは風属性だ。シャルも風属性である。
だったら、風を使ってなにかできないか、そうシャルは考えた。
「そうだ。ねえねえオルドビス! 木枯らしに乗って空を飛ばない?! 
普通に飛ぶのは飽きたでしょ? 
サーフボードが確か倉庫に入っていたから、木枯らしで『サーフィン』、しない?」
そこに突き刺さる冷たい視線。
「そんな恥ずかしいことができるか。お前じゃあるまいし」
しかしその答えにシャルは納得がいかない。
「えー! 楽しそうだよ! 波乗りならぬ風乗りだよ! 
ウインドサーフィンっていうのもあるらしいし! カッコイイと思うんだけどなー」
「お前の感性を疑う。…いつものことだが。
第一ウインドサーフィンはお前の言っているものとは明らかに違う」
オルドビスはズケズケとシャルを批判した。
しかしシャルはそれを無視することに決めた。
「よし、オルドビスがボードの前に乗って! 
それでボクは後ろからキミを支えてあげるよ。素晴らしい! 
スキンシップもできて一石二鳥じゃないか!」
こうなるとシャルは止まらない。彼の脳内ではその図が完成しており、
二人でサーフィンする姿を思ってうっとりとするのであった。

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····· 画像保管予定

「疲れたわ…」
そういうとフェイテルは砂地に腰を下ろした。
「カルニア」
「はいっ」
ぽんっと簡単に現れるカルニア。
「私、疲れたわ。休める場所を作りなさい」
それを聞いて固まるカルニア。
物を無から作り出すには相当の力が必要だからだ。
「魔力はあまっているからあげるわ。でも体がボロボロなの」
フェイテルは偽妖精との戦闘で、残り体力がわずかになっていた。
カルニアはその様子を見てため息ひとつ。
「そのお姿はあまりに哀れです。他の人が見れば、少女が一人で倒れそうに
なっているようにしか見えません。わかりました。寝床を用意します」
そう言うとカルニアは目を閉じた。
それに合わせてフェイテルがカルニアに力を渡す。
すると彼は一瞬で青年の姿になり、周りの砂を材料に寝床を構築した。
「ごゆっくり、お休みください」
青年の声でカルニアが言う。…がいなや、すぐに少年の姿に戻り倒れてしまった。
「……」
フェイテルはそれを見て、やけに大きく作られたベッドに彼を載せて
自分も隣に入りゆっくり休憩した。

その様子を合同宿舎のテレビから見ていたシャルは大喜びである。
「エリアスー、エリアスー、見て見て! 
フェイテル…様がカルニアと添い寝してるよ!」
ずずずずと音を立てて、大好物のラーメンをすすっていたエリアスは一度箸を置き、
言われるがままにテレビに視線をうつす。
「フェイテル氏、大丈夫なのか。カルニアはたとえ我らが上の存在であろうとも、
遠慮するような奴ではない」
氏、というのはエリアスの中での最上級の丁寧語である。
様という言葉も知ってはいるのだが、使おうとしないのだ。
「大丈夫なんじゃない? 二人とも満身創痍ってカンジみたいだしさ」
シャルは考える。自分たちの世界から出たフェイテルは、
自分より力がかなり下なのではないかと。
もともと「自由と混沌の邪心」アンジャスティスである彼は、
唯一自分を縛り付ける存在であるフェイテルのことを良く思っていない。
先日クヴィ氏がかけてくれた言葉を思い出す。
「クヴィイさんの手を煩わせなくても、ボクが下克上できるかもしれないねぇ…」
とは言うものの、実行する気は無いのだが。
さすがに本気で倒そうとしたら、自分の世界に戻られて返り討ちにあうのが
オチなのだから。
そんなことを思いながら、今は不自然に砂場にあるベッドで眠る二人に視線を戻す。
「見てる分には子供が二人ほのぼのと寝ているだけに見えるんだけどねぇ。
本性を知っていると恐ろしいよ、ホント」
ずずずずず。
エリアスがまたラーメンを食べ始めた。
「なんだい、そんなに二人に興味はないの?」
「無いね」
答えたのは別の声。合同宿舎の主、オルドビスが現れたのだ。
「あっ、おはよー! 今日もかわいいねぇ!」
シャルはぐりぐりとオルドビスを撫でた。
オルドビスは長身である。だがそれ以上にシャルが長身のため、
いつも捕まえては撫で撫で攻撃を仕掛けるのだ。
ちなみに男性なのだが、年下なので褒め言葉はかわいい、なのだ。
水色のやわらかい髪の彼は、頭をいじられて大層機嫌が悪いようだ。
いつものことなのだが。
「なぜお前はいつもそうなんだ。俺とお前は敵同士だというのに…」
「それを言ったら、この家に居候しているものの3分の2はオルドビスの敵だよ?」

オルドビスはホリレス族という種族であり、
その中でも一番位が高いファランディという存在である。
だが、邪心アンジャスティスには敵わない。
それをいいことにシャルは自分の兄弟と言える邪心や、
その部下たちを大量に彼の家に住まわせているのだ。

「いつか、斬る…」
ボソリとつぶやくオルドビス。
それさえもシャルフィルターを通すと、可愛く見えるらしい。
「ふふっ、元気でいいネ! カルニアは任務でここにいないから、
ボクが代わりに朝ごはんを作ろう」
そそくさと立ち上がるシャル。そして台所で鼻歌を歌いながら調理を始めた。

シャルが朝食を用意して、皆で食べだしたころ、
フェイテルとカルニアも目を覚ました。
「さて、これから会議をはじめるわ。今後の活動はどうするつもり?」
カルニアはフェイテルの体調を見ながら考え込んだ。
「外に出ましょう」
「え? まだ私は魔方陣を手に入れていないわ」
遺跡にもぐる前、カルニアは基本的に新たな魔方陣を見つけて踏むのが目的、
とフェイテルに教えていた。
しかし今回はまだそれを成していない。
「私たちが最初に決めた進行方向には隠し通路の連続があって
まだ魔方陣がある保障がありません。
ですから今回近い魔方陣方面に戻ってきたわけですが、
そこまでフェイテル様の体はおそらく持ちません」
「そういうものなの…」
経験者の言葉だからか、素直に聞くフェイテル。
「まあいいじゃないですか。素敵なアイテムを拾えたわけですし。
あれがあれば、当分先になりそうですけど、エリアスにいい剣を渡せますよ」
しっぽ。
隠し通路を探しながら行き着いた行き止まりに落ちていたものの話である。
「それに作戦の幅が広がりますよ~。今回、ここの中で技を習得しましたからね、
私のマジックミサイルごり押しじゃなくなる分、フェイテル様も楽になるはずです」
そう言って、フェイテルを納得させるカルニア。
「あまり滞在できませんからね。今度もぐるときは草むしりだけじゃなくて、
薬も探しておきましょう」
タダでもらう、ということはプライドが許さない、
とパンくずをもらわなかったフェイテル。
草むしりはプライドが許すのか? と疑問に思ったけれどそれを突っ込まなかった
カルニア。でもほとんどの草は無駄になってしまった。
それを教訓に、薬探しを提案したのだ。
今回のようにボロボロになったときにも対応しやすい。

「それにしても、防具スキル習得を後回しにしたのは痛かったですね…
きっと今度外に出るときは、私たちの目指している衣装、
取っている人がいると思います。ライバルが多くて困っちゃいますね~」
カルニアはのほほんと言う。

(今日はここまで)

····· チキレ敗北した分です

初めて練習試合をしたけれど、能力が足りないわね…
ふふ、私はカルニアを使って、職人になる予定だから、
どうしても戦闘力は落ちてしまうのよね。
それでどこまで戦えるか。それをみんなに考えてもらいたいわ。
…カルニア、聞こえているわよ。

(場所は変わって、3階建ての赤い屋根の家。
 シャル、カルニア、エリアス…それにその家の主人を含む多数のヒトが
 共同生活を送っている)
「うわぁ!まったく他力本願ですねぇ~が筒抜けでした!」
「キミはー…わかってやっているようにも見えるんだけど」
シャルが呆れるように言う。
「いやですねぇ~そんな恐れ多いこと、するわけないじゃないですかぁ~」
「よくわかった」
ぼそり、とエリアス。
エリアスにさえ看破され、ぐったりポーズをとるカルニア。
「うん、『じゃないですかぁ~』は嘘ついてるときの口癖だもんね」
「え、そうですか? そんなことないですよぅ。偽りを司るこの私に、
 嘘を簡単に見抜かれるような癖がついてしまうなんて、
 あるわけないじゃないですかぁ~」
「いい加減にしろ。うざい」
そこに現れたのは、この家の居候の一人。名をガンマという。
そしてカルニアの部下。カルニアの部下はヴァイザが生まれたときと、
氷から復活したときに作られている。
そして彼は後者である。
とはいえ、一度ヴァイザと戦った者たちの手によって倒され消えてしまったのだが。
しかしカルニアが邪心になったとき、
もう一度彼が作り直したので今もピンピンしている。
「失礼な人ですね。一応にも貴方は私の部下なんですよ!」
「オレサマは自由だ。そういう風に作ってくれたことには感謝してるぜ? 
 ただそれとこれは話が別だ。お前のその口調、なんとかならねぇの?」
「なりません! 私は人畜無害お子様エレア研究家兼魔術師なんですから。
 子供らしさを追求した結果を元に振舞っているだけです」
「はーん」
ふーんの代わりだろう。納得がいかないといった感じでガンマは声を出した。
眼が明らかに見下している。
「人畜無害お子様エレア研究家兼魔術師に遠慮する気はねえよ。でも安心しな。
 お前が本気モードになったなら、オレサマも部下として働いてやるぜ」
それだけ言うと、ガンマは腰につけたウエストポーチに鉱石を補充すると、
すたすたと家を出て行った。
「ああ、行っちゃったね」
シャルが言う。カルニアはふいとそっぽを向いて、
「いいんです。言うこと聞かない子は後でお仕置きです」
と言った。
「しかし…」
エリアスが口を開く。珍しいこともあるもんだねぇとシャルは感心して
次の言葉を待つ。
「お子様はいい。エレア研究家もいい。魔術師もそうだろう。
 だが、人畜無害とは言いがたい」
「あーはっはっはっはっは!」
シャルが笑った。その笑いには状態異常が付いてくる。
「ギャア、魔力が吸われてしまうじゃないですか!」
「頭が痛い…」
モロに被害を受ける2人。
「はっはっはー! そうだね、魔術師は無害とは言えないよね!
 エリアス賢い、いい子いい子!」
シャルは笑い続けたまま頭を抱えているエリアスをぐりぐりなでる。
「やめてくれ…」
抵抗する力を失ってもなんとかエリアスは自分の意思を口にした。
カルニアは…魔力切れで倒れている。
「助けてください、フェイテル様…先ほどの失言は取り消しますから…」
自分がどんなに惨めになっても生きる手段があるなら手段を選ばない
カルニアらしい命乞いである。

(場所はまた島内に戻る)
そう。
カルニア、いらっしゃい。
作戦会議を始めるわ。
今度の相手は偽妖精。勝てるかしら?
「助かりました…あの場から抜け出せて」
でもまだ魔力切れのようね。魔力を補充してあげるわ。
「ホントですか! さすがフェイテル様。自分に従うものにはお優しい!」
…なんだかその気が失せたわ。
「えぇ~、どうしてですか! 本当のことは禁句なんですかぁ~?」
…やっぱりおあずけにすることにするわ。
「そ、そんなぁ~」
悲しそうなカルニア。ころころ表情が変わって面白いわ。
大丈夫。作戦会議が終わったらちゃんとあげるわよ。
そう伝えるとぱあっと彼の表情が明るくなったわ。
本当にエリアスとは対極の存在ね。
さて、会議を始めましょうか。
「と言いましても、私は相手の力量を知らないんですよね。
 ですが偽妖精はマジックミサイルを撃ってきた記憶があります。
 それ以上のことはなんとも…」
体力はまだ全快に近いわ。魔力も今回底上げするし、耐え切れると思うわ。
ただ、なかなかカルニアを呼び出せないのがつらいところよね。
「その辺りは運ですからねぇ…」
バツの悪そうな顔でカルニアが言っているわ。あらあら。
責任を感じているのかしら。
「ここは、ちょっとシャルに踊っていただいたほうが安全かもしれません」
そうね。彼の踊りは攻めにも守りにも使えるわ。
今度外に戻ったら、多めに持ってくるようにしないと。
「それにしても偽妖精ですか…こんなに早く遭遇した記憶がないのですが。
私の思い過ごしだといいのですが、この調子で強化されていったら、
私とエリアスの訓練ができなくなってしまうかもしれませんね」
そうね。あなたが見つけてきた組合さんに協力をお願いすることになるでしょうね。
よく見つけてくれたわ。
さて…どうなるか、今日もがんばりましょう。

····· 文章について

ここに来て、初めての戦闘だったわ。
緑色の物体。これが草? そんな肉体を持っていたわ。
シャルは呆れ、カルニアは懐かしいと喜び、エリアスは…黙って剣を抜いたわ。

エリアスはそういう子。
いつも黙っているけれど、それは自分の感情を表現するのが苦手なだけなのよね。
それなりにいろいろ考えているみたいだけど、それを言葉にするのが苦手なの。
さすが私の弟に連なる者。
私の弟は、感情そのものを捨ててしまったんだけどね…
その原因はまだ語らないでおくわ。

エリアス。邪心としての名はシェイド。破壊と真実を司る者。
彼は破壊の邪霊として世界に存在していたわ。
それをある一族が、邪霊を封印するために人間に転生させたの。
転生した後はどこに行ったのか、その一族にもわからなかったわ。

彼は普通の人間として、ある夫婦の間に生まれたの。
性格は今のまんまね。
頭がいいとは言えないから、無口。
言いたいことを失敗して相手を傷つけるのが怖くて、無口。
でも戦闘になると魂が踊って好戦的な口調になるの。
そのことも彼を無口にさせる原因だったわ。自己嫌悪って奴で。
好戦的なことは悪いことではないと思うのだけど、ね。

そんな彼だけど、皆が平穏に暮らせるよう願っていたわ。
彼にできることは戦いだけだった。
なにかしようとすると壊す。不器用なんだ、と本人は思っていたのだけれど、
破壊の邪霊の生まれ変わりがなにかを作り出すなんて到底不可能ね。
だから自分の住んでいた村を守るために戦っていた。
そして、シェイドが復活するという噂を耳にして、
自分ができるのは戦いだけだからと村を飛び出した。
それから冒険者の資格を取って、戦いの日々を送っていたわ。

そんなある日のこと。
エリアスは一人の女性と出会うの。
名前はミクリー。シェイドを転生させた一族の一人だったわ。
彼女はシェイドが再び復活するという一族の言葉に従い、それを阻止すべく、
従者と二人で旅をしていたの。
たまたま出会ったときにシェイドを復活させようとする一派と遭遇し、
共に戦ったことで、エリアスは彼女たちと行動を共にすることになったわ。
ミクリーは戦闘を好まず、平和主義者で、
エリアスの好戦的なところが気に入らなかったみたい。
でも、普段はおとなしくて優しい子だったから悪者ではないのだろう、
と暖かく接していたの。
エリアスは知らない人と共に行動することに緊張をしていたから、
彼女に好感を持ってもしばらく打ち解けるには時間がかかったわ。
でもね、打ち解けるのには時間がかかったのに決別は一瞬だった。

シェイドを復活させようとしているシェイドの部下たちは
一行のことが目障りだったの。当然よね。
そこで、新たに邪霊を集めて子供を作り上げ、彼らと関わりを持たせたわ。
ミクリーはすっかりその子を気にいって可愛がっていた。
エリアスは前世の力の影響かしら、その子に警戒心を抱いた。
でもそれは口にしないで自分の中にそっとしまいこんでいたわ。
シェイドの部下たちは、その子供に指令を与えていた。
ミクリーが隙を見せたときに消せと。
そしてそれは実行された。いえ、されそうになった。
エリアスが阻止したの。そして本性を現した子供を倒そうとした。
けれどミクリーがそれを必死で止めるの。今まで仲良くやっていたのだから
この子もわかってくれる、と。
でもエリアスには『見えて』いた。今までのが嘘で、今の態度が本心なんだと。
だから子供に剣を向けるのをやめなかったわ。
そして――ついにエリアスはその子供を殺めた。
ミクリーは怒り狂ったわ。そしてエリアスに言った。
「なんでも破壊で解決しようとするなんて。そんな貴方はシェイドと変わらないわ」
エリアスは呆然としたわ。
自分の破壊衝動の酷さは自分でも重々承知していたからね。
そして、そのとおりだと思った彼は、ミクリーたちと別れた。
そのあと、シェイドがなにに転生しているか調べていた部下が
エリアスと接触するの。そしてエリアスは知ってしまった。
自分こそが、自分が倒そうとしていたシェイドだったのだと。
そして心の内で、シェイドに戻りミクリーに倒されようと決めたのよ。
馬鹿な子でしょう?
自分に暴言を吐いた相手のことは責めず、
わざと倒されようなんて普通は考えないわ。
生への執着が無かったのは…
今まで倒してきた者の数が多かったせいなのかもしれないわね。
シェイドに戻るために必要なことは簡単だった。
シェイドを復活させようとする部下たちを全員殺すこと。
そこまで調べていた部下は喜んで仲間たちも差し出し、自分をささげたわ。

そして、すべては終わったの。
世界にはこう記録されている。
『勇敢な少女の手により、シェイドは復活してまもなく倒された。
そして世界は平和になった』
簡単な言葉よね。

エリアスは後悔していないと自分で言っていたわ。
でも心の奥底では無念だったんでしょうね。
なぜなら彼は消えなかったから。
シェイドの力は失ったけれど、彼の愛剣に魂が憑いてしまったの。
そして彼の世界は破壊の邪霊を生み出す世界。
一度滅びても、破壊の邪霊はまた蘇る宿命なのよ。

その剣は長い時を経て、一人の少年の手に渡ったわ。
その少年もシェイドほどではないけれど強い力を持っていて、
町をひとつ破壊してしまっていたの。
それで自己嫌悪に陥っていたわ。
似ているでしょう?
邪霊に生まれた宿命を背負い、自分を投げ捨てた者と
力を暴発させ、自分を投げ捨てた者。
彼らは共鳴して、少年の体にエリアスの魂が移動してしまったの。
その上、他の世界に飛ばされたりしてね。
その世界では少年は自分の殻に閉じこもっていたから
エリアスが飛ばされた世界の崩壊を防ぐため走り回ったりしたわ。
そう。
シェイドに戻って滅ぼされたとはいえ、エリアスはエリアスのままだった。
つまり彼はシェイドに戻った地点で邪心になっていたと言っても
過言では無かったわ。
邪心に変わるまでの期間が一番短かった例ね。

ちょっと話がそれたわね。
少年が青年と呼んでいいくらいに育ったころ、ようやく彼は心を外に向け始めた。
そのことでエリアスの魂は眠ることが増えていた。
戦闘になると出てきてしまうんだけどね。
そしてある出来事を境に、エリアスはようやく剣に魂を戻すことができたの。
そして世界を支える精霊の一種として、
騒乱が起きていた世界を終わらせるのに協力したわ。
そして今も、世界を見守っているのよ。

そんな存在を呼んでも大丈夫か、ですって?
大丈夫よ。
見守っているだけじゃなくて、世界が破壊衝動に駆られるのを抑える
役割があるから、戦闘以外には呼ばないように気をつけているもの。

そんなわけだから、エリアスはあまり出てこないけど仲良くしてあげてね。

次の相手はムカデさん。
さて、みんなよろしくお願いね?
その先はどうやって進もうかしら。壁がたくさん…
わざと行き止まりに行くのも悪くないわね。

····· ミミズはなにもくれませんでした

カルニア。邪なるもののとしての名はヴァイザ。
それが、以前この島を旅した邪心…
いえ、まだ邪心と名乗る邪霊だったのよね。

過去、彼は人々を憎み、文明を破壊しては再建させ、
そして文明が栄えると再び滅びる寸前まで追い込む。
その様子を見て喜んでいたわ。
それをよく思わなかった弟が、私の支配域だというにもかかわらず介入し、
彼を氷漬けにしたの。
まあ、介入は許すわ。私は心が広いから。弟はかわいいし、ね?

それから氷漬けになっていた彼は、部下を使って自分の封じられている洞窟を
宝の洞窟と偽り、幻影の宝を準備して人間たちがやってくるのを待っていたわ。
そして、長い期間を経て人間たちはたどり着いたわ、彼の元へ。
だけど人間たちは誰が宝を持ち帰るかでもめ始めたの。
その間息を潜め、最後の一人が満身創痍になったときに、
それを襲ってちゃっかり宝を独り占めした男の子がいたの。
それが全てのはじまり。
彼を乗っ取り、少年の姿がいかに便利か、ヴァイザは実感したの。
新たに部下を二人作り上げると、彼は少年の姿のまま世界をめぐって
自分を完全に復活させる方法を探し始めたわ。
このとき生み出された部下たちは私と因縁があるんだけど…それはまた別のお話。

数百年後になるわ。
ヴァイザが復活することを過去の歴史から学んだ人々は、
その研究をする組織を作ったの。
そこにあっさり少年はもぐりこんだわ。
そして、長い間仕込んでいた下準備を何気なく研究者たちに刷り込んだの。
ヴァイザはエネルギーの直撃に弱いってね。
本当はヴァイザはエネルギーを吸収するの。
むしろ、吸収していないと体を維持できないくらいなのよ。
だからこそ、エネルギーを奪う氷漬けを弟はセレクトしたのだけど。
そして信憑性を高めるために、
部下たちは全員がエネルギーに弱いように作られていた。これが下準備。

それからエネルギーを直撃させる技や武器が開発されていったわ。
唯一自分を倒しかねない属性を持つ一族には、自分の影武者を送り込んで
一人は殺し、一人は影武者に乗っ取らせたの。
これで準備は万端。
あとは人間たちが全力でヴァイザの体をエネルギーで攻撃してめでたく復活よ。

だけどね。
用済みになった自分の弱点技を覚える少女を処分しようとしたところに
邪魔が入ったの。
邪魔をしたのは――アンジャスティスだったわ。
何を考えたか彼は少女の味方をしたの。
何故邪魔をしたのかは私は問い詰めたわ。
すると彼は答えたの。新たな邪心を作るためだ、ってね。

元々ヴァイザは一人の人間だったの。
名前は…ここでは重要なことじゃないわね。
強大な力を持つ魔術師の一族だったわ。エンティの力を借りる魔術を唱えるね。
エンティっていうのはそうね、宇宙ってみんなが呼ぶもののことよ。
そして力を持つ者として、代々国を治めていたわ。
けれど国民にはあまりよく思われてなかったみたい。

幼馴染の隣国の王女と結婚を約束していた仲だったのだけど、
国民が秘密裏に召喚した怪物に彼女が捕らわれてしまったの。
怪物は国に向かっている。
だから彼女は望んだわ。自分ごと怪物を滅ぼして欲しいと、駆けつけていた王に。
悩んだ末に王はそれを実行した。
でも悲しみに暮れている暇は無かったわ。
隣国の王女を殺すような王は必要ないと国民に迫られて、
自暴自棄になっていた彼はあっさり王位を降りたわ。
でも、一人になったときに聞いてしまったの。
怪物に王女を捕らえさせ、滅ぼさせる計画があったことを。
そして冷酷な王を倒す、という大義名分を作ったということを。
彼は絶望したわ。
ずっと王として人の上に立つことに責任を感じ、己の意思、欲望、
すべてを封じ込めていたというのもあって、なにかが切れてしまったの。
そのときに偽りの邪力と共にあった邪獣を自分に取り込んでしまい、
再び冷酷な王として人々の前に現れたの。
それからは面白かったわ。国民を思いやっていた王の姿は跡形も無く、
狂ったように人々を彼は殺していったわ。
いえ、狂っていたのね。
殺せば殺すほど憎悪は増し、邪悪な力は膨らんでいく。
その中で、彼は自分の分身ともいえる部下を二人生み出したの。
未だに彼は知らないわ。
その部下が、自分の膨らませた邪気に捕らわれた王女と忠実な側近だということに。
そのことを知った時のことを思うといつもゾクゾクするわね。
だから私は教えていないし、今後も教えるつもりはない。
――そして文明は滅びたわ。それからは最初言ったとおり。
何度も文明を作らせては滅ぼすことを繰り返すようになったの。

話を戻すわね。
アンジャスティスは元々国を純粋に思っていた人間の部分があるのならば、
ヴァイザを邪心にすることも可能だと言ったわ。
私にはそうは思えなかったけれど。
王として生まれたのは宿命。
力を疎まれて王の座を追われるのも、
事実を知り「それならば本当に冷酷な王になってあげます」と思ったのも運命。
そこまで落ちた者が、光の心を取り返すことが本当にできるの?
そう言ったらアンジャスティスは笑ったわ。
闇の心を持って生まれた自分さえ邪心になった。
運命なんて簡単に変わるモノだってね。
うまくいくかどうかはわからないけど、試してみたいんだ、と。

それから、アンジャスティスはヴァイザの弱点の技を、
生きながらえた少女に覚えさせる手伝いをしたわ。
弱点の技というのは、良心を刺激する精神攻撃魔法だったのよ。
そしてついにヴァイザを追い詰めたの。
追い詰めたことによって、
ヴァイザを構成していた邪獣と人の心が分離、暴走を始めたわ。
人を思いやっていた心をほんの少しだけ思い出したヴァイザは
自分を追い詰めた者たちを自分の領域から追い出し、
一人崩れていく領域と共に消えていったわ。
少なくとも、人間たちはそう思っていたようね。

でも実際はアンジャスティスが彼を救出していた。
後は彼の心が安定するまで邪霊として存在していればいいと言って彼を放置したわ。
そこでヴァイザはあちこちの世界を放浪したわ。
ほとんど力を失っていたから、力を取り戻したいと願いながら。
そのときの姿と名前があのカルニア。
この島に呼ばれたのも放浪の途中だったってわけ。
そして島で強いアイテムを手に入れたことで、本来の姿に戻ったの。
だけど彼はそこで島を去ったりしなかった。
まだまだここで力を蓄えられると言って残った。
でもどうかしらね、それは自分への言いわけだったのかもしれないわ。
彼は知らず知らずのうちに自分の世界が小さかったことに気がついていたんだわ。
例えばここで会った人間たちは憎悪の対象になっていなかった。
それはどうしてだろうと気がつくのにだいぶ時間を要したけれど。
そして結局彼は、少年魔術師として力を温存しながら
人々と接してみようと考えるようになったわ。

いつの間にか邪心を名乗るようになっていたけれど、
島に来たことによって邪心にいっそう近づいただけなのよ。
でも面白いわよね。
偽りの邪霊が偽りの島で光の魂を強くした、なんて。
それから彼はまた放浪を続けた。
そのたびに自分の無くした優しさとか思いやりという光の魂を取り戻し続けて、
ついに完全に邪心になったわ。

それから長い時間を経て、今に至るわけ。
招待状が今度はアンジャスティスに届いたのだけど、とても悔しそうにしていたわ。
それを私が取り上げて向かう、と言ったときの彼の顔ったらもう!
決して見せない狼狽っぷりだったわ。
でも私が時々召喚してあげるわと言ったら大喜びよ。

私がいくら世界を見守る力を持っているとしても、
それは私たちの世界集合体だけの話。
それ以外の世界集合体は見ることはほとんどできない。
だから私はこの島ではカルニアに頼りっきりになるわけね。
ここに着いてからは楽しそうに入島手続きをしたり、コミュニティを探し回ったり、
店に行ってみたりしていたわ。
そのはしゃぎっぷりは本当の子供のよう。
でも彼の考えを水晶から覗いてみれば、
やっぱり島にくる人々のデータを集めることができるというたくらみでいっぱい。
あらあら。カルニアはどこまで行ってもカルニアみたい。
でも――水晶で覗けない部分があるのよ。
なにをたくらんでいるのかしら?
気になるわ。

····· CPが足りませんでした

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