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定期更新型ネットゲーム「Ikki Fantasy」「Sicx Lives」「Flase Island」と「Seven Devils」、「The Golden Lore」の記録です。

カテゴリー「定期日誌」の記事一覧
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フェイテルは機嫌が良かった。
クリスマスプレゼントの中身が気に入ったからである。
フェイテルは機嫌が良かった。
先日、紙一重で負けた鳩相手に今回は余裕で勝ったからである。

「カルニア」
ぽんっと強制的にカルニアが召喚される。
「おっとっと」
フライパンを持ったカルニアは、宙に浮いていたホットケーキを
それでなんとかキャッチした。
「フェイテル様ー。私の状態、わかっていらっしゃるのでしょう? 
そんなときに呼ばないでくださいよう!」
そんなことは関係ない。とすら言わないフェイテルは微笑みを浮かべて
カルニアの頭を撫でた。
「え…?」
予想外の行動に、カルニアは驚きを隠せなかった。
「貴方の魔法のおかげで勝てたようなものよ。ありがとう」
さらに予想外の言葉にカルニアは軽くパニックを起こす。
(フェイテル様が『ありがとう』?! 私なんかに?! 
そもそも司は『ありがとう』なんて言わない存在なのに! 
どうしちゃったんですかフェイテル様!? 
ああ、なにが起ころうとしているんでしょう。
槍が降るのでしょうか。臼が降るのでしょうか。とにかく緊急事態ですよ!)
一瞬でこういう言葉が駆け巡った。
しかしカルニアは運が悪かった。フェイテルがしっかり水晶玉を覗いている。
「あ」
「……」
フェイテルはにっこりと笑った。カルニアは後ずさりをする。
「そ、そもそもその水晶ずるいですよ! 
人の宿命を見ることができるだけのものじゃないんですか! 
邪心の心を読めちゃうなんて用途外のことじゃないですか! 
あ、ああ…おしおきはかんべんしてください!」
「そうね」
フェイテルは短く答える。笑顔は崩れない。
「この水晶は宿命を見るものよ。でも貴方たち邪心と私は契約をしている。
だから心の中をこれで見れるのよ。だから用途外ではないわ。
それにそんなに怯えないで。
貴方の考えたことより、貴方の活躍を私は大きく見たわ」
そう言ってすたすたとフェイテルは距離を縮めると、カルニアの頭を再び撫でた。
「プレゼントの配達もご苦労さま。ひとつは自分で中身がわからないまま
選んだけれど、いいものをもらえたと思っているわ。
もうひとつはまだ開けていないけれど、楽しみね」
「フェイテル様…」
じんわりと涙を浮かべるカルニア。
(え。私、どうして泣いているんでしょう…)
本人にすらわからない謎の涙が、地面に落ちた。
「あら、泣くほど感動したのかしら?」
フェイテルは言う。
自分でもわからない出来事なので、カルニアは、そう、かもしれません…と
答えることしかできなかった。

フェイテルはカルニアを撫で続けている。
「カルニア。貴方はあとどれくらい戦うつもりなの?」
カルニアから説明を受けたことを頭の隅に置いて、フェイテルは尋ねる。
「強化、というものを行うには私はあと3レベル分だけ戦えばいいです。
その後はエリアスと交代ですね」
魔術と剣術。
相反する二つの技。二つの邪心の関係とよくマッチしている。
技の威力を上げるには、ひたすら技を使うしかない。
しかし技を発動させるには特定の装備をしていなくてはいけないのだ。
「できれば…あと5上げれれば私も武器無しで戦闘に参加できるのですけどね」
カルニアはこう付け足した。
「そう…」
フェイテルはつぶやく。いつもの微笑みではなく、目を閉じて、
まるでなにかを考えているかのようだった。
「フェイテル様?」
カルニアがいつもと違うフェイテルの表情に問いかける。
「また…新たな邪心が生まれたわ」
「えっ」
突然の発言にカルニアが驚いて言う。
フェイテルは目を閉じたまま言葉をつむぎ続ける。
「素質は持っていた子なの。ただ、邪心と呼ぶには力が小さすぎたのよ。
その子がついに力を手にいれたみたい。カルニア。命令よ。
その子を合同宿舎と貴方たちが呼んでいるところに連れてきなさい」
フェイテルの言うことはカルニアからすると無茶苦茶である。
「突然そんな…彼にも事情があるかもしれませんし、話し合ってみないことには。
それに、そもそも彼がどこにいるのかわかりませんよ私には」
彼、とカルニアが断定しているのは、フェイテルの使役できる邪心、邪霊の性質に
関係している。
邪心や邪霊は性別をほぼ持っていない。しかし、自我が強くなるにつれ、
どちらかの性別に傾くのだ。
邪心となると、もともと光の部分が性別を持っていることが多い。
そして、フェイテルが管理する世界の邪心は男性なのだ。
何故そう決まっているのかとカルニアは問いかけたことがある。
それも宿命よ、とフェイテルは笑った。
「話には続きがあるわ」
ゆっくり、フェイテルは言葉を紡ぐ。
「あちらの世界に、4つ王国があるわよね。その中の、森の王国を訪ねなさい。
あそこの王として、彼は君臨しているわ」
撫でられているにもかかわらず、カルニアは顔を上げた。
「王様ですか! そんな方を連れ出すわけにはいかないですよ。エリアスだって
合同宿舎には長く留まれずに自分の世界にたびたび戻っているんですよ」
そうすると、フェイテルはにっこりと微笑んだ。
「貴方が昔そうしたように、影武者を準備できるわ、彼は。
そして彼も邪心になったのだから理解したはず。
私に使われる宿命になったのだ、と」
(なんかすごく迷惑ですよね…)
カルニアは相手に心を読まれる危険があるにもかかわらず、
つい本音を考えてしまった。
「貴方が嫌というならば、シャルにやらせるわ」
フェイテルはなにがなんでも彼を連れて来たいらしい。
「…シャルが真面目にやれば、問題なく事柄は進むでしょう。
ですが私が最初に聞いたお仕事です。私にもフェイテル様に使えるものとしての
プロ意識というものがあります。だからやりたいという気持ちもあるのですよ。
少し、時間をいただけますか?」
フェイテルは空を見上げた。微笑んだままだが。
「少しなら待ちましょう」

「熟練度よりも~♪ 生産CPのほうが~♪ 足りない! 足りない!」
カルニアが頭を悩ませているころ、シャルは暢気に歌っていた。

「とりあえずお会いしてみます。ご本人でないとわからないことでしょうし、
邪心に成り立てなら、わからないこともたくさんあるでしょうから。
なので合同宿舎に戻していただけますか?」
「わかったわ」
「あ、それと」
カルニアはフライパンの上のホットケーキをフェイテルに差し出した。
「草ばかりだと大変ですものね。こっそり食べてしまっても
きっと誰にも怒られませんよ」
「冷めているわね」
「こ、これからあっためるんですよぅ~」
カルニアはわざとらしく笑うと、フライパンを火にかけた。

-----------
「寒い」
ある一室で一人の男が呟いた。
すぐ傍に控えていた赤髪の少年がちょこんと立ち上がり、
炎の呪文を唱えようとする。
「いや、そういう寒さではないんだ」
銀髪、そして黒い獣の耳をした男はそう言うと、眉をしかめ部屋の外を見た。
「私の身に変化が起こったのは知っているだろう、チモン。
――なにか良くないものが、私のところへやってくる。そんな予感がするんだ」
「ビスマス様…」
心配そうな声を上げる少年。
「力を得ることによって縛られる。それでも構わないのかと尋ねてきた男の
言うとおりだったらしい。私は…この国を助けてやれないかもしれん」
そう言って、森の国の王は、空を仰いだ。

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····· フェイテルの口調とか

「フェイテルサマ! フェイテルサマ!」
ドンドンドンと合同宿舎のテレビを叩くシャル。
合同宿舎ではお正月が行われていた。
テーブルの真ん中にはお重が置かれており、まわりにはご馳走が並んでいる。
というのも、宿舎の主、オルドビスが御節を好まないため、
カルニアが彼も満足するように気を使ってご馳走を作ったのである。

『でも~、お正月気分は味わってくださいよぅ~。ちょっとでいいですからぁ~!
お重の中身も悪くないですよぅ~』
とカルニアが言って、雑煮を彼に手渡すと、即座にオルドビスは
茶碗をひっくり返して、横でスタンバイしていたカルニアのペットの
がおの口の中に放り込んだ。
『がおがお~♪ ……… げー!』
『きゃー! がお、大丈夫ですか! のどにお餅が詰まったんですね!
オルドビスさん! やめてください!』
『なんだよー。お餅はボクの好物なのにぃー。どうせならボクにちょうだい!』
『雑煮はいらん』
先刻、こんなくだらない光景が繰り広げられていた。

それも落ち着いて、フェイテルに召喚される邪心3人は手に正月セットを持って
スタンバイしていた。
フェイテルにもお正月を紹介したいとカルニアが言い、
しかし宿舎にあの女を呼ぶなとオルドビスに言われたので、
彼らがまとめて召喚されようとお正月道具を手にしているのである。
「なあに、シャル」
フェイテルからの応答があった。
「あのね、今、新年なんだ。新年ってわかる? 年が変わったんだよ!」
「人間が数える暦に興味は無いわ」
なんのことかわかってるじゃんか…とシャルは思う。
でもそんな文句を言っても不毛なので、シャルは話を続ける。
「新年には特別なご馳走を食べるんだ。あと遊ぶんだ! こういう服も着るんだ!
フェイテルサマにもそれを体験してもらおうと思って、ボクたち、道具を持って
スタンバイしてるんだよ。だからみんなまとめて呼んでもらえないかなぁ?」
テレビに映るフェイテルはいつものように微笑みを浮かべている。
全然答えの予想ができない…とシャルは思った。
「いいわよ」
やや沈黙があってから、彼女は答えた。
「私は見ているから、貴方たち、好きにやりなさい」
「え。そうじゃなくて」
シャルの反論も途中のまま、彼らは転送されていった。
「やれやれ。あんな奴になんで好き好んで会いに行くんだろうな」
残されたオルドビスはそう言って、ご馳走の残りのグラタンにフォークを伸ばした。

「じゃーん!」
シャルは和服と呼ばれる種類のものを着込んでいた。カルニアはいつもと
ほぼ変わらないスーツ姿。エリアスはシャルに巻き込まれて和服である。
「どう? どう? フェイテルサマ♪ 似合うー?」
ぴらぴらと服を風になびかせてくるくる回る。踊る。
それをフェイテルはやはり微笑みで見ているだけだ。
その間にカルニアはせっせと御節のセッティングをしていた。
「カルニア…俺もなにか手伝おうか」
「お心遣いありがとうございます。でも結構です。きっとなにかが壊れます」
エリアスは破壊の邪心。それを抜きにしても超がつくほどの不器用なのでカルニアは
きっぱり断った。やることが無くなったエリアスは持ってきた荷物をいじっている。
「なんだこれは…」
黒い玉に鮮やかな羽がついているものを見つけた。
それをいじっていると、羽がぽろりと取れた。
「………」
「ほら、こーわーすー。仕事を増やさないでくださいな」
カルニアが手にとってちょちょいとやると、あっという間にそれは元通りになった。
「…すまん」
「いいんですよ。暇になると呪い巻き散らかす人よりは幾分もマシですから」
もちろん、シャルのことである。そのシャルはフェイテルに散々和服を見せると、
エリアスを呼んだ。
「ほらほらー。二人並んでポーズ! ね? カッコイイでしょ?」
「ぽーず…」
二人で謎のポージングをしているのをよそに、カルニアはさっさとテーブルと
イスまで用意して、お重と雑煮鍋を置いた。
「フェイテルサマも着てみない? 和服! きっと似合うよー」
そうシャルが言うと、ぽんと更衣室が現れた。さらに衣装のクローゼットまで。
しかしフェイテルはにこにこしているだけである。
シャルもにこにこしている。
しばらくそれが続くと。
「とりゃっ」
シャルはフェイテルをこともあろうに持ち上げて更衣室に放り込み、
クローゼットから赤の着物を取ると、自分も更衣室に飛び込んだ。
「ちょ…」
カルニアが絶句する。
エリアスも呆然とその様子を見ている。
更衣室の布がもこもこと動いている……。

「さあできた! 出てきて、フェイテルサマ!」
そう言いながらシャルが更衣室から出てきた。
すこしの間のあと、かつん、かつん、と音を立ててフェイテルが出てきた。
「おおー」
「…これは……」
赤の着物に身を包み、頭のヴェールは取られていて、梅の花飾りが付けられている。
そしてフェイテルは微笑みを深くした。
「ギャン!」
シャルが空中に浮かんで、猛スピードで落ちた。
「いたたたたた…」
「ありがとう、シャル。人間はこんな格好をして年の区切りを祝うのね」
なんでお礼言うのに攻撃するのさー! とシャルはぷうとふくれた。それを見て、
カルニアがポンと手を打つ。
「そうでした。お餅を焼きましょう!」
「カルぅ~? キミ、なにからお餅を連想した?」
カルニアはにっこり笑ったが、実のところちょっと口が引きつっている。
「いやだなぁ。シャルのほっぺから連想するなんて失礼なこと、
するわけないじゃないですかぁ~」
「したんだね! 呪ってやる、呪ってやるー!!」
バタバタとシャルはカルニアを追いかけ始めた。それを完全に無視してエリアスは
フェイテルのところへ歩み寄る。
「その靴は特殊だ。歩くのが難しい。こけないように気をつけろ」
エリアスも似たような靴を履いている。だからこそ気を使ったのだが…
「あなたが私を心配するなんてね。明日の天気はなにかしら。
この世界はシャルが天を支配していないから、わかりづらいのよね…」
と心無い言葉が返ってきた。
「…もういい」
「…私を憎んでいると言いながら、本当は心配しているのかしら?
その可能性はあるわね。たった3人しか残っていないのだから。
あの子が捨てた感情を受け取った貴方がこんなことを言うのなら」
フェイテルの言葉が中断した。
エリアスが漆黒の刃の剣を抜いて彼女に突きつけたのである。
「忘れるな。俺もあの方も貴様を許してはいない。いつかこの手で」
容赦ない殺気。
遺跡の中で、人の少ないところだったから良かったものの、
草原の草があっという間に消えうせた。
それに対してもフェイテルは微笑むだけである。
「はーい、終わり終わり! もう、キミはー。気持ちは知ってるけど、
一般人を巻き込むところでやっちゃダメ!」
シャルが漆黒の刃を抱きかかえるかのように上から覆いかぶさった。
「おまえっ」
エリアスは慌てて剣の力を止める。おかげでシャル本体はもちろん、
シャルの着ている和服も傷がつかずに済んだ。
「あら…ずいぶんコントロールできるようになっているのね。
てっきりシャルがまっぷたつになる覚悟で止めに来てくれたのだと思ったわ」
「覚悟だヨ!」
平然と言うフェイテルに対し、シャルは抗議を行う。
「でも貴方も、私のこと、嫌いじゃなかったの?」
「キライだよ。だってボクの自由を奪うんだもん。だけどそれはそれ。これはこれ。
フェイテルサマがいなくなったら困ることもいろいろあるんだよ!」
シャルはそう言ってパンパンと手を叩いた。
(…これが頂点に立つ邪心故の行動なのかしら)
フェイテルはそう思いながら、シャルとエリアスを見比べる。
「さあ、お餅が焼けました。ご馳走にしましょう? ね?」
カルニアもテーブルの横で3人を誘う。
「フェイテル様、これが御節というものです。あまり食べ物は口になされたことは
無いと思いますが、一般的に食べられているものとはだいぶ違った味がしますよ。
それからこちらがお雑煮です。餅という喉に詰まりやすいものが入っているので、
よく噛んで食べてくださいね?」
カルニアはにこにこ笑う。
(さ、2人とも笑って。笑わないと食い殺しますよ)
そしてそっとシャルとエリアスにささやくのだ。
(そしたら呪い返す)
(やられる前に殺る)
2人はそう答えたが、正月を楽しむために来たのだ。
これ以上争っていても仕方がないだろう。
そんなわけで、シャルは笑顔で、エリアスも普段どおりの(といっても仏頂面だが)
顔でテーブルの席についた。
そしてホカホカと湯気の立つ雑煮がそれぞれに配られるのだった。

食事が終われば、遊びである。
先ほどエリアスが破壊した黒い玉に羽のついたものは、
羽根つきという遊びに使うものだった。
「じゃあ、ボクとカルが見本を見せるから、フェイテルサマ、
後でボクと遊ぼうね!」
「私は見ているだけでいいのよ」
フェイテルはまたまたにっこり笑うが、シャルはそれを許すつもりはない。
「またまたぁ~。約束だよ! 一緒にやろうね!」
一方的に約束を取り付けると、カルニアと共に羽つきをはじめた。
かつん。かつん。
羽子板に羽玉が当たってラリーになっている。
エリアスはそれを見ながら、自分だったら板か玉を叩き壊すのだろうなと思って
内心しゅんとした。
「……エリー。ボクと羽根つきしよっか?」
「おや。ターゲットが変わりましたね。でしたら、フェイテル様。
私とやりましょうか!」
「しかし俺は」
「ダイジョウブダイジョウブ! もし壊しても、カルがなんとかするから!」
シャルはエリアスをバシバシ叩くと羽根つきをはじめた。
結果:羽子板破損4枚、玉破損11個。

「次は凧揚げだぞー!」
シャルは風を操ってスルスルと揚げていく。
「いや、それじゃ面白くないでしょう! いかに自然に風を捕まえて揚げるかに
面白みがあるのであって…」
「これがボクの自然だよ?」
カルニアのクレームの意味がわからない、といった感じのシャル。
カルニアは額に手をやってやれやれ…としている。
「これなら壊れそうにないな…」
エリアスも凧揚げに参加。凧を置いて、猛ダッシュしている。
ずるずる引きずられていた凧も、やがて風に乗り浮かんだ。
「おお! これですよこれ!」
カルニアは珍しくエリアスの行動がお気に召したようだ。
下のほうがかなりボロボロになっているのはご愛嬌。
そしてその様子をフェイテルはやっぱり微笑んで見守っているのだった。

····· 今日は…

フェイテルは めのまえが まっくらになった…

-------------
これは困ったわね。
紙一重で2回負けて、外へ放り出されてしまったわ。
強化習得を狙っているから、戦闘に勝てないのは厳しいわ。
負けても手に入るといえばそうだけど、モノが手に入らないのが致命的ね。

周りを見渡せば、みんなの装備更新がはじまっているわね。
食物を合成してできたものを使った装備更新が。
けれど倒れてばかりの私、お金、無いのよね。
そろそろ外でお仕事しようかしら?
護衛さんをお願いしようかしら?
でも今回で最初のお仕事スキルが手に入るから、
それが育つまで遺跡の中で粘ろうかしらね。
このスキルを伸ばすなら、強化が早く手に入ったとしても伸ばすポイントが
足りないもの。
ふふっ、成長の仕方には慣れてきたみたい。あとは勝利あるのみね。
今回は遺跡の中には長くいても3回。とりあえずあそこの魔方陣は欲しいわ。
3回行動できれば余裕でたどり着けるのに、それに苦戦するって、困るわね。
あらいやだ。私としたことが意地を張っているみたいだわ。
だけど、私はあの子とは違って感情がある。だからいいのよね? 
意地を張ったりするのも、悪くない。そう思うの。
この島に来てからよ。そんな人間くさいことを肯定するなんて。
本当に不思議なところね、ここは。

-------------
…昔話でも、しましょうか。

むかし、むかし色々な強大な力を持つ存在が住む城があったの。
存在…というより概念に近いわね。彼らは司(つかさ)、と呼ばれているわ。
そして彼らは…そうね、例えば太陽の司だったならば、太陽が無事1日世界を
照らすように自分の力を駆使するの。管理範囲は私たちの世界集団20個全て。
そんな者たちが集まっている城があったのよ。
そこには門番が2人いたわ。司たちに接触するものが無いよう門を守るのが
使命だった。
でも門番の1人は気がついてしまった。
自分にも力があり、それを使えば、どの司にも勝ててしまうって。
正確には負けることがないと。
だから試してみたくなった、自分の力で司たちを支配できてしまうかもしれない。
その可能性を。
もう1人の門番はその企みに気がついて止めようと説得したわ。
でも、止められなかった。
彼は悩んで、仲の良かった司に相談したの。そうしたらば、聞いた司たちは
企みを止めようと彼に協力した。
それが、司たちの終焉の大戦(おおいくさ)のはじまり。
残ったのは、門番と門番と戦に関与できなかった死の司だけ。

止めようとした門番は後悔したみたいなの。
自分が相談してしまったばかりに、皆が死んでしまったのだと。
気遣ってくれたことに喜び、
企みを止められないんだという弱音を話してしまったのだと。
感情があったから弱音を吐いてしまったのだ。そしてその結果、戦が起きた。
自分に感情さえなければ。
そう考えて、彼は感情を捨てたわ。

私はそれは間違っていると思うのよ。
だってね、彼が相談しなくても、その門番は行動を起こしたわ。
そして結果は同じになったはずよ。
だって
それが
宿命なんですもの。

····· 今日の出来事!

[星降る夜に]

「星が~降りしきrグハァ!」
シャルがご機嫌で歌いだすと、エリアスの剣の鞘が彼の口の中に突っ込まれた。
「それはアウトだ」
エリアスがきっぱりと言う。
口をもがもがさせていたシャルは鞘をなんとかどけると、
「じゃあ。ボクが~降りしきるペンtがはぁ!」
カルニアのおたまが今度は口に入っている。
「それは怖いし、結局アウトなのには変わりありません! なんか古いですし!」
かぽ。
あっさりとおたまを外すと、シャルはにこりと笑った。
「いやぁ。時々歌いたくなるんだよね、この歌。好きなのさ~♪ 
さて、それじゃあボクはこの世界に雪を降らせてくるよ」
そう言って、彼は合同宿舎を出て行く。
「やれやれ…今日はフェイテル様も一人にしてくれというし…
静かになりそうですね」
カルニアはため息をついた。しかし、じとーっという視線を感じ、
エリアスの前からそそくさと彼は逃げ出した。

---------------
フェイテルは一人、遺跡内にいた。
ひとり、横になっていた。
(ああ、私、負けたのよね…)
今は邪心を呼び出す力も無い。それほど疲れきっていた。
体を動かす気にもならず、そのままの体勢でいる。

シャンシャンシャン…
なにか音が聞こえてくる。

フェイテルは考えていた。
どうして負けたのかと。
能力的には互角の相手だった。カルニアはよくやってくれたし、
シャルも呼び出すよう手配をしていた。
そのシャルもよく戦った。
なのに何故。
1度倒した。しかし起き上がってきた。
2度倒した。それでも起き上がってきた。
こちらも1度は立ち上がることができたが…
その違いが納得いかない。
(守護者…それに対する想いが力を与えるというけれど…)
そんな者に敬意をはらう気など毛頭ない。なぜなら自分は。
(本当…どうして私自身でここに来たのかしら…)
自分の気まぐれでこのざまである。ここまで来ると、もう笑うしかない。

遠くで音楽が流れ始めた。
気がつけば、辺りは暗くなっており、美しい星が空で瞬いていた。
地平線のほうに目をやれば、ぽつりぽつりと小さな明かりが見えた。

(なにをしているのかしら)
水晶を取り出し、覗き込んでみる。
(クリス、マス…?)
水晶に写しだされたのは、
今日がクリスマスというイベントの日だということだった。
フェイテルは一般的な行事に関しては興味がないため、知識も無い。
そういえば、元の世界の冬はシャルが2日間だけ吹雪を和らげる日が
あった気がする。
人間のイベントのためにご苦労様なこと、と思った記憶がかすかに残っていた。
しかし自分には関係の無いこと。

また空に目をやる。星が綺麗だった。
「こんなことを思うなんてね…」
星をゆっくり見ることもはじめてだった。
なにかを綺麗と思うのも、はじめてだった。

ほう、と息をはいてみる。
白くなったそれは、きらきらと光を帯びていた。
(相当、寒いのね…)
自分に感覚はついていない。それが危ないんですよ、こういう場所に出てくるには!
と、カルニアが言っていた気がする。
仕方が無いだろう。元々自分は世界に降り立つ存在ではないのだ。
そもそも、「存在」ですらないのかもしれない。「概念」なのだ。
しかし弟は自分の使命を放り出して、旅をした。その原因が自分なのは
横に置いておいて、かなり無茶なことをしたわねと笑った記憶がある。
フェイテルがなにかやりそうだ、と判断すると弟は動き出す。
しかしフェイテルにはそんな気は全く無いので、弟の取り越し苦労なのだ。
そこがまた可笑しく、愛おしい。
でも。自分も一度旅をしてみたかったのね、きっと。
そんな我侭を自分が思ったことに対し、笑いが漏れた。

雪が降ってきた。
それを深々と浴びながら、フェイテルはまた水晶を覗き込む。
そこには楽しそうに笑う人々の笑顔が浮かんでいた。
楽しそうに会話する姿。
食事で大わらわになっている者。
プレゼント交換をしている者たち。
それを見守る人物もいる。
それらを見たフェイテルの心に、なにか冷たいものが突き刺さった。
(……私は)

たくさんの仲間たちの笑顔を奪った


島の人々の笑顔を見ながら、はじめて、自分の罪を感じ取ったのだった。
そんなフェイテルにも、人々にも、平等に雪は降りしきる…
そんな静かな、夜。

「メリークリスマス!」
声がかけられた。
フェイテルが上を見上げると、カルニアがいるではないか。
ご丁寧にやたらと厚着なサンタの格好をしてそりに乗っている。
トナカイがそりを引いている。
「なにをやっているの?」
フェイテルが問うと、カルニアはにっこり笑って、
「プレゼントの交換会ですよ~、どうぞ」
フェイテルの元に二つ、小包が落ちてきた。なんとかそれを空中でキャッチする。
「中身は私も知りません。それでは、私は他にも行くところがありますので。
良いお年を~」
カルニアサンタは行ってしまった。

フェイテルは自分に届けられた二つの荷物を見る。
その中身は――

····· これはひどい

「カルニア」
返事は無い。
「カルニア」
やっぱり返事は無い。
「カルニア」
…あ、地面からごめんなさいって看板が出てきた。

ここは合同宿舎内。
「ふーん、カルが呼ばれても出て行かないなんて珍しい」
シャルはそう言って大好物の青汁を飲み干した。
「だだだだだって…派手に魔方陣の位置を読み間違えて、
道案内を失敗しちゃったんですよぅ。絶対怒られますぅ…」
カルニアはぶるぶると震えながら、キッチンの影に隠れている。

「…カルニア」
ガシャーン、と音がした。
一人呟くフェイテルの横で、カルニアがはじめて作ったウッドシールドが
ばらばらに粉砕されてしまっていた。

キッチンの影から、遺跡内のその映像を見ていたカルニアは余計怯える。
「こ、今度は私がバラバラになる番なんですね…」
「バラバラになっても死なないじゃん。むしろ増えるじゃん」
「じゃあ私、どうなっちゃうんでしょう…」
シャルのボケ(いや事実なのだが)を聞いても普通に応対するカルニアは
心の底から怖がっているようであった。
「外に出る提案をしたのも、魔方陣の見間違いだったんですよ…
合わせる顔がないというかなんというか…」
「当たって砕けろ」
エリアスが淡々と言う。
「あ、エリアスが難しい言葉使ってるよ! 今日は珍しいことばっかだねぇ」
「…」
エリアスはぷいとそっぽを向いた。
「……あの女は嫌いだ……」
その姿にシャルはとある知り合いを重ねた。彼の全てを奪った女。
それがフェイテルだったな、と。そしてエリアスは彼の半身のようなもの。
だから嫌いという感覚があるのだろう。
しかしぶんぶんと首を振って、気持ちを切り替える。
そういうネガティブっぽい話題を考えるのをシャルは好まないのだ。
自分がネガティブの魂でできているから、余計に。
そして道化を演ずる。それは今も昔も変わらない。
そう、いろいろあった楽しいあの日々のときでさえもそうだった。
「あーはっはっはっは! そうだねエリー。
ボクもフェイテルサマは好きじゃないよ。ボクたちを好きに扱うんだもんね! 
自由を愛するこのボクを使うなんて! ぷんすかぷん!」
「昨日は呼ばれないのが不満だっておっしゃっていたくせに…」
シャルの高笑い(呪いの状態異常付き)をなんとか防いだカルニアが
自分の状況を忘れて突っ込む。
「そうだったっけ? そんなの忘れた忘れた! 
だからカルも失敗を忘れてフェイテルサマのところに行った方がいいんじゃない?」
「切り替えが早いですね…」
カルニアは呆れたようにつぶやくと、遺跡の様子を再び見る。
フェイテルはカルニアを呼ぶのをやめ、自らが破壊した盾を見ている。
なんだか哀愁が漂っているな、と思ったカルニアは立ち上がった。
「わかりました。今度呼ばれたら行ってきます」
「…カルニア」
そのとき、小さく彼を呼ぶ声が聞こえた。
それに応じてカルニアは一瞬で姿を消した。

「フェイテル様、申し訳ありませんでした!」
すごい勢いで頭を下げるカルニア。
ガンッ。
自分で起こした衝撃で前方にひっくりかえってしまう彼。
するとフェイテルのくすくす笑う声が聞こえる。
「怒ってなんていないわ。間違いは誰にだってありますもの。
それに私は、探索を急いではいないの。戦って、戦闘経験を積むのが目的。
そしていつか難しい仕事を承るのが目標なのよ? 
だから先走って防具ではなく付加を選んでしまったときにも怒ってないでしょう?」
涙目でカルニアがフェイテルを見上げる。
「はい…あのときも申し訳ありませんでした。島の経験があったにもかかわらず、
不甲斐ないです」
「同じ失敗はしないで頂戴ね。今度やったら――
ウッドシールドと同じ道を歩むことになるから気をつけて」
そう言って、フェイテルはにっこり笑った。
「ふ、粉砕ですか。バラバラですか。そんな痛いの嫌ですよう!」
「あら貴方、痛覚あったの? 自分をちぎって分身をぽこぽこ作るから
全然平気だと思っていたのに」
「それはそうなんですけど…」
カルニアは口ごもる。
自分でやるのと人にやられるのは違うのだ。
「そ、それはともかくですね! 次の行き先を決めましょう。
今回は簡単です。まっすぐ西へ!」
にっこりとフェイテルは笑って頷く。
「戦闘は…トカゲさんですか。果たしてどれだけの力があるのやら」
「貴方に任せるわ。シャルを呼ぶまでも無い相手だと思うもの」
「そうでしょうか…」
不安げに次の対戦相手を見る。戦った記憶が無い相手なのだ。
警戒はしておいたほうがいいだろう。
そう思ってカルニアは技リストを見直すのであった。
(こっそりシャルも呼んでしまいましょう。剣も使われたがっているでしょうし…
来るかどうかは今日のご機嫌次第ですね)
悪くは無かった、とカルニアは考える。
たぶん。
――シャルの機嫌を見るのは難しいのだ。彼は自分の感情を隠してしまう。
自分に対しての嘘は、自分は重症だと思うが、彼はもっと上を行くだろう。
誰かが嘘をつけば、偽りの邪霊が生まれる。それを見て判断するのだが、
その偽りの邪霊を吸収できてしまう相手だと嘘をついてもわからない。
つまり、自分とシャルが嘘をついても、邪霊で判断するのも無理だ
ということである。
「まあ、ビクビク怯えるのはやめましょう。当たって砕けろです!」
「砕けるのは私よ?」
フェイテルの声。それにビクっとなってカルニアは顔が引きつる。
その引きつった顔で彼女のほうを見て、あ、はははは…と笑った。
「すみませんでした!」
またすごい角度の謝罪の礼。
それが面白いのか、フェイテルはくすくす笑いながら言うのだ。
「ホント、どうして私はこの島に来たのかしら…私自身が傷つく必要は
全く無いのにね。貴方たちが来て、戦えばよかったのに。ふふっ」
「……」
カルニアは礼をしたまま、真顔になっていた。
(確かにそうですね…どうして全く動かないフェイテル様が動いたのでしょう。
私も噂でしか聞いたことの無い
あの事件のときしかフェイテル様は動かなかったそうですし。まさか)
なにか恐ろしいことの前触れのような気がしてカルニアは震えた。
「まだ怖がっているの? 大丈夫よ。
あまりにしつこいと、私、本当に怒ってしまうかもしれないわよ?」
フェイテルには運よく本心を覗かれなかったようだ。
カルニアの脳裏には彼女と似た少年が思い浮かんでいた。
フェイテルの企みを察知した、と言って先日まで戦っていた少年である。
予感は外れていて、なにも起こらなかったそうだが、彼の言っていた悪い予感が今、
成就しようとしているのではないか…
カルニアは目をつぶる。
いや、それは無い。この島に眠る強大な力を持つらしい宝玉に
フェイテルは全く興味を示していないからだ。
だから大丈夫。
カルニアはそう、自分に言い聞かせた。

····· 今日のランキング☆

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